第014話 圧倒
「何か来るぞ」
「何って、敵がいるはずないだろ」
「さっきから鑑定魔法が弾かれてたんだが、原因が分かったぞ」
「オィォィ、それを先に言えよ」
「スゲー数だ、俺達の3倍は軽く超えている…」
足音が地面を揺らすほどの大群ではなかったが、黒い影が見えるようになると、瓦礫の街の中から沢山の魔物が現れる。
その先頭には恐ろしいオーラを放った姿が見えた。
「お、おい……アイツ、トレインじゃないか?!」
冒険者達がその名前を聞いて震え上がる。
人間との友好関係も有り、名前は知れ渡っていて、末端の冒険者でも知らなければ恥ずかしいレベルである。
「なんでアイツがこんな所に?」
声の届く位置まで近寄って来ると、冒険者の殆どが荷物も持たずに逃げ出した。
堂々としたその姿は、魔王に並ぶ実力者と言われる所以である。
「ココは人間の領域ではないぞ、去らねば魔王との約束を果たす!」
威圧の混じる声に身体がビリビリと震える。
歯ぎしりをして睨み付けたが、戦って勝てる相手ではない。
人類最強と言われているSランクの末端、その実力は勇者に次ぐと自称している男だからこそ、相手の強さは理解できる。
「お前の周りのモノは殆ど逃げだしたぞ」
「なっ?!」
気が付けばパーティーメンバーもいない。
役に立つ立たないの問題ではなく、強い相手を見たら逃げ出すような奴にメンバーを名乗らせたくはない。
追放しよう。
そう考えたが、それは生き残った後の事である。
「俺達は依頼を受けて街を再建しに来ただけだ」
「嘘だな。人間が再建するのなら侵略と同じだ。ここは魔物の街なのだぞ」
「少なくとも俺はこんな所に住みたくはない」
こんな所になってしまったのは勇者達の所為であって、破壊の限りを尽くした諸悪の根源は不在だ。
「ならばさっさと失せろ」
高圧的に言われるとプライドが刺激される。素直に従いたくは無いが、既に味方は一人もいない。薄情とかいうレベルではなく、破壊された街にこんな大物が現れるとも思っていなかった認識の甘さも有る。
「そうだ、一つ訊いておくことが有る」
「なんだ?」
「誰も殺していないだろうな?」
「まだキャンプ地にする予定で始めたところだ。欲しいならくれてやる」
どうせ一人では持ち帰れない。
魔物はこちらに向かって来る事は無く、牽制するように睨み付けてくるだけだ。他は殆ど雑魚だが、どうあがいても勝てる気がしない奴が一人居るだけでせっかくの装備も無意味だ。
「では有難く使わせてもらおう。必要なら金を支払うが?」
金貨が三枚飛んできた。
取り零す事無く受け取ると、溜息を付いて背を向ける。
剣を交える前に、抜く事も無く、敗北を認めなければならないとは……。
歯ぎしりをしても、背を向けるのは敵意が無い証だ。
トレインはその男の背が行くのをただ見送り、姿が消えるまで睨み付けた。
「生き残りはいないか?」
「鑑定しているのですが、先ほどから弾かれていて……」
「それを先に言え!誰か隠れているぞ?!」
部下に命じて大捜索がはじまr―――らなかった。
「あ、こっちでーす」
子供を連れた骨と少女が現れたのだ。
※あとがき
■:コール・マーカー
レベル57の魔法剣士
凄腕の冒険者と言われていて、自称最強
実際にかなり強い
Sランク冒険者
人類最強クラスの中で底辺の部類
ギルドランク至上主義者




