第013話 魔人vs人間
「魔王様が亡くなって半年か……」
「魔王領の街が人間どもに奪われるのを見逃すなんて出来ないよな」
「まぁ、あの魔王様には仲良くしてもらってたしなあ……」
「城に偵察に向かわせたらスケルトンしかいないとは……」
このままでは我々も危ない。
人間はどこまで手を広げれば気が済むのだ?
「魔王様の復活が期待できない今、あの時の約束を守らねばならない」
「約束か……」
「我らの土地を人間から、まさしく壁となって守ったのだぞ。これで何もしなければ我らの矜持が保たれまい」
「獣人も、エルフも、天使も、悪魔も、そしてその他の種族や魔物もな……」
三十三代目、魔王アッシュ。
魔王にしては戦いを好まず、交渉を好み、人との対立を可能な限り避けた。
臆病者ともカゲでは言われていたが、その強さは本物だった。
だが、その魔王を倒した勇者達。
魔王を倒した目的が分からなければ、その必要性も分からない。
魔王といえば人間に恐れられる存在ではあるが、人間の中には神を語り、人々を神の言葉で操り、無法を企てる者もいる。
一体どっちが魔王らしいのか……。
人間が魔王を倒さなければならない理由は、平和を得る為だが、今までも平和だし、大きな戦争は発生していない。人間同士の争いは日常茶飯事だが、魔物が現れれば魔王の所為にし、死ねば魔王の呪いという。
確かにそういう時代もあった。
人間と魔人は争いを繰り返してきているのだ。
何度も…
何度も……
「お父様の記憶だとそうなるわ」
「半分くらい間違っていますけどね」
「そう…。そうね。戦いを始める理由なんて些細な事なのに、戦いを終える時は御大層な理由を求める。悲しい話だわ。お父様がどれだけ大変だったかも理解できるのに、私は我儘を言ってたコトもね……」
お嬢様は年齢にそぐわない記憶の所為で、大人の階段を三段飛びぐらいで成長してしまっている。理解出来るのも、その記憶の所為だ。まだまだ10歳の少女なのに。
ですが……勇者が魔王を倒す必要性は人間視点での事。
流石に理解が及ばないようです。
「それで、どんな感じ?」
「このままだと遭遇しますね」
「私達はどうしよう?」
知識は有っても明確な答えを求める計算式は解けないらしい。
無理もない。
脳が記憶を過剰摂取しているのだから、記憶の整理が終わらないのだ。
「鑑定……出来ました。味方です。トレインをご存知ですか?」
「ん~……多分私の記憶でも会った事は有るんだけど」
「3歳か4歳ぐらいでしたね」
「お父様の記憶だと、友好的な関係ね」
「目的は分かりませんが、かなりの人数を率いています」
「助けに来た可能性は?」
「私達を助けに来た可能性はゼロです。何しろ知らない筈ですから」
「じゃあ、何の為に?」
「可能性としましては…あ、戦闘が始まりました」
「人間の侵攻を防いでくれるという訳ね」
「ご明察です」
※あとがき
■:トレイン
魔人と人間のハーフで、魔王クラスに強い人物
魔王国と友好を結んでいる中立的存在
国は無く街の指導者を主張している
魔王とは友好条約を締結していて、三十一代目魔王の頃から続いている
彼らの住む街は人間も住んでいて、人間とも友好関係を結んでいる
ただし、約束を破れば容赦なく罰を与える
その約束は多岐に亘り、その一つに
「「魔王領への進行は見逃しても、魔王領の占領は認めない」」
と、ある。
■:アッシュ・ブイルダン
三十三代目の魔王
アイシャの父親
とてもやさしくて魔王らしくない




