第012話 襲撃者
「勇者なんて恐ろしいだけの存在だよな……」
「しかし、こんな町で金目の物を探すのか?」
「ボロボロじゃないの、生きてる奴なんているのかしら?」
「いないからこんなにたくさん来たんだろ?」
彼等の後ろには100人近い冒険者がいて、キャンプ地を形成している。壊れた家を更に壊し、木材を集めて薪にする。レンガも拾い集めて組み直せば頑丈な家が出来る。
「魔石が転がってるな、小さいけど」
「魔物も逃げ出す破壊力だぞ。初心者が来れるような場所じゃない」
「おい、鑑定持ちはいるか?」
「さっきから鑑定ってるわ。生命反応は無いわね」
「よし、じゃあ予定通りに整地するぞ」
他の冒険者達が集まって壊れた瓦礫を魔法で吹飛ばし、空き地を作っている。
騒音と埃が周囲に広がる。
「ここに監視塔を作れば魔王の牽制になるって言うが、誰がこんな所に住む予定なんだ?」
「さあね。少なくとも私は嫌だわ」
響き渡る音を耳にして、男の子が怯える。
こんな音は私も嫌だ。
「逃げるのは簡単なんですけど、このままだと町が人間達のモノになっちゃいますね」
「邪魔ぐらいする?」
「スケルトンを動かして脅かすぐらいは出来ますが、そうすると私達の場所もバレてしまうので……」
「鑑定される心配は?」
「鑑定されてます。さっきからずっと防御してますが、そろそろ違和感を覚える頃じゃないかと」
先生は既に魔法で戦っていた事に気が付かなかった自分が恥ずかしい。
こんな所で失敗しているようでは勇者に復讐するなんて遠い未来になってしまう。
うぐぐ……。
「じゃあいっそのこと、やっちゃう?」
先生が考え込んだ。
男の子はどうして良いか分からず、先生と私の間を行ったり来たりし始めた。
ぽふっ。
私に抱き着いた。
弟ってかわいいなー……。
「相手の最高レベルが57の魔法剣士のようです。勝てない相手ではありませんね」
私のレベル5なんですけど。
「レベルは職業の熟練度みたいなものなので、もちろん高い方が良いですけど、低くても問題ありません。教えましたよね?」
先生の視線が怖い。
目は無いけど。
弟も怖がってるじゃないの。
弟じゃないけど。
今度は視線が多方面に向いているような動きをする。
「ヨシ、鑑定競争に勝ちしました。総数121人、レベル50以上は5人。残りは寄せ集めなので、タイマンならこの子でも勝てますよ」
「え?」
この子ってそんなに強いの?!
「え、僕、戦った事無いけど……」
「6歳ですが、剣術の才能が有りますね。固有の能力に威力3倍が有るので、同格相手ならまず負けません。ただ、戦闘経験が無いのなら駄目ですね……」
技術力は数値化されておらず、熟練度も気休め程度にしかならないのは、先生との勉強で教わっている。どんなに力が有っても土木工事でしか役に立たない大男みたいなものだとも言っていたのを無駄に思い出した。
「………!」
眉間にしわが寄るように見えた。
眉間はあるかもしれないけど骨しかないのでイメージだ。
「先生……?」
「敵か味方かは分かりませんが、別方向から大軍がこちらに向かってきます」
「た、大軍って?」
「魔物を含む魔人の集団です。鑑定可能な範囲より外なので……」
「魔人なら人間の敵よね?」
「分かりません。中立の立場も存在しますので……」
お父様の記憶にも有った。
敵対せず、争いを好まないが、魔王クラスに匹敵する強さを持つ魔人も存在する集団。強いのに戦わないが、戦わないのに強い。
お父様とは友好的だったようね。
「鑑定範囲外なのに分かるものなの?」
「これは鑑定じゃなく、魔女の能力です。危険察知と魔力探知が有りますので、街の中に居ても町の外の危険度が判定できます」
「なんて便利な能力なの……」
「直接戦闘では役に立ちませんので、こんな時ぐらいしか役に立ちませんけどね」
「十分じゃないの」
怯える男の子を抱きかかえ、隠せない不安は先生の判断を待つしかない。
まだまだ、こんなんじゃ、勇者になんかね……。
※あとがき
特殊技能 威力3倍
単純に破壊力が3倍になる恐ろしい能力
装備クラッシャーとの異名もある




