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第009話 想いと涙

 修行は終わった。

 正確にはその期間が終わっただけで、途中から大きな変化は感じられなかった。

 ただ、魔法の威力は上がり、コントロールはかなり巧くなっている。

 鑑定が使えるのは大きいですね。

 鑑定LV2なら、自分より下のレベルのモノでしたら鑑定可能ですし、結界の解除方法も調べられます。LV3なら、制限がなくなるんですけどね。


「おはようございます、食事の用意が出来ていますよ」

「ん、いまいく~」


 食糧庫の在庫が無くなるというよりも、保管できずに大半のモノがダメになってしまいました。特にナマモノは全滅です。

 何しろ食べる人がお嬢様しかいないので、仕方のない事でもあります。

 なので加工できるモノはしておきました。


「出来てる?」

「はい、保存食にしてありますので、3ヶ月は大丈夫です」


 私の方でも準備は用意しておきましたし、お嬢様に野原で星空を天井にして寝るなんてことはありません。お嬢様らしい野営をしていきましょう。


「城内の見廻りしてくるね」モグモグ

「まだ食事が…」

「歩きながら食べるわ」モグモグ


 硬いパンと水の入ったコップを持って廊下を歩く。

 誰も叱る者はいないので、だらしがなくなっているのかと思いましたが、お嬢様には別の理由があったようです。


「歩きながら食べるのって意外となんとかなるわね」

「急ぐ旅といえばそうなのですけど、焦る旅ではないのですよ」

「焦ってはいないわ。大丈夫。まだ冷静に怒りを燃やせるから」


 いい威圧具合です。

 これなら私が育てたと自慢出来ますね。

 頭蓋骨にひびが入りましたけどすぐ直るんで問題ないです。


「もう少し早く歩けそうね」


 飲み終えたコップをスケルトンに手渡し、城内を隅々まで歩き回る。

 普段は行かなかった地下牢にも足を運び、誰もいない詰所、見晴塔、城壁の上を一周。中庭の通路から大広間を通り抜けて、両親の墓まで。


「お父様、お母様……」


 墓に抱き付き、想いをのせて、涙を残していく。


「明日、旅立ちます」





 翌日の早朝。

 魔界の天気はすこぶる良く、魔界にも太陽は昇る。

 特に別世界ではなく、大陸が違うだけなので、人間の住む土地は隣なのだ。だから境界線が出来て、領土争いが起きて、戦争が悲劇を呼び、悲劇が次の悲劇を招く。

 その結果が今の私だ。


「では、あなた達に城の管理は任せます。食堂に回復ポイントを設置しておきましたので、1日に1度は必ず食堂で回復してください。良いですね?」

「了解です、隊長!」

「じゃあ、行ってくるわね」

「行ってらっしゃいませ、お嬢様!」


 スケルトンが手を振っている。

 振り過ぎて手が飛んでいる者もいるけど、今は先生が魔法で直していた。


「隊長もお気をつけて!」


 先生が心配そうにしていたけど、最初の街に繋がる森の中に入ると、姿が見えなくなった。街まではちょっと遠く、徒歩だと3日かかる。

 普段なら街から荷物を運ぶ馬車が通るが、今は全く通らない。


「半年何も通ってないから、街道も草だらけね」

「通りがかりにゾンビがいればいいんですけど」


 契約して街道の保全をさせるには死んでいる者が便利だ。

 何しろ給料が要らないからというが、最初にある程度の魔力を与えないと動かないので、それだけが面倒との事。壊れても直せないからだ。


「居ませんね……」

「あそこのところ、焼け焦げた跡が有るわ。地面もえぐれてるし」

「勇者達が戦った跡でしょうね」


 あいつらどこまで壊してるんだか。

 歩くのに苦労はしないが、草が多い。


「少し刈りますか……ウォーターカツター!」


 魔法の刃を進行方向の街道に、地を這うように放つ。

 スパッと綺麗にきれた。

 マリア先生の魔法の威力はそれほど高くないけど、コントロールは熟練のレベルを超えているように見える。

 扱いが上手いだけで上位魔法を下位魔法で相殺するのは流石としか言えない。


「お嬢様もやりますか?」

「そうね、練習するわ……ウィンドカッター!」


 魔法の刃を放つと、地面をえぐってしまい、周囲の木も伐ってしまう。


「上手くいかないわねぇ……」

「水魔法の方が調整しやすいんですよ」

「やっぱり、流石先生ね」

「お嬢様もすぐに出来るようになりますよ」


 こうして、誰にも会う事無く、二人の旅は順調に続き、最初の街が見える丘の上までやって来た。

 だが、その光景は驚くものであったのだった。





※あとがき


アイシャお嬢様が10歳に成りました…

…忘れてたなんて言えません

数日前は覚えていたんですけどね

えぇ……

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