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第44話:秘密の暴露

「貴様ら、何者だ」


 ようやく立ち上がったクインとゾーイに、サイラスが(うな)るように尋ねる。


「いや、名乗らなくていい。マリサを(さら)おうとしたな。殺してやる」


 サイラスが剣を握る手にぐっと力を込める。


「ま、待ってくれ! 誤解だ!」


 クインが慌てて手を上げる。

 隣にいるゾーイの眉がしかめられた。


「……? おまえ、ゼルニアの黒騎士か!?」

「なぜ知っている」


 サイラスの頬がぴくりと引きつる。


「俺はルーベント王国の騎士だ。戦場でおまえを見たことがある」


 ゾーイの言葉に、クインが驚愕の眼差(まなざ)しをマリサに向ける。


「なぜ敵国の黒騎士と一緒に……?」


 マリサはびくっとした。

 クインの顔色が変わる。


「やはり、敵国と通じていたのか? 噂は本当だったのか!?」

「違います!」


 マリサは思わず声を上げた。

 確かに誤解されてもおかしくない状況だ。


 追放された聖女が最果ての町で敵国の騎士と仲睦(なかむつ)まじくしているのだ。

 サイラスが困惑したようにマリサを見る。


「どういうことだ、マリサ」

「私――」

「気安く触るな! その方は、我がルーベント王国の聖女、マリサ・レーデンランド様だ!」


 クインの声がダンジョンに響いた。


「は……?」


 サイラスが愕然とする。


「マリサ……本当か?」

「ごめんなさい、ずっと言えなかったんです……」


 マリサは震える手を合わせた。


「なぜ……聖女がサニーサイドなんかに?」

「追放されて……」

「追放!? 聖女が?」


 そのとき、サイラスがハッとしたように目を見開いた。


「もしや、あの噂の悪女の……」

「はい、私です。でも、誤解なんです!」


 マリサは声を振る絞るように叫んだ。


(ダメだわ。何を言っても言い訳にしか聞こえない)

(だって、ずっと秘密にしていたのだから!)


 焦るばかりで、うまく言葉を口にできない。


(ああ、どう言ったらわかってもらえるの!)


 クインが混乱を収めるように、前に進み出た。


「とにかく、マリサ様には国に戻っていただく! ロイド様がお待ちです」

「ロイドとは王太子のロイド王子か?」


 サイラスの問いにゾーイがうなずく。


「そうだ! マリサ様はロイド様と婚約してらしたのだ!」


 どんどん明かされる驚愕の事実に、サイラスが呆然としている。


「私、帰りたくありません!」


 マリサはきっぱり言い切った。


「サイラスさん、黙っていてすいませんでした……。お願いですから、私の話を聞いてください!」


 マリサは必死でサイラスを見上げた。

 サイラスが口を開きかけたとき、広場の方から声がかかった。


「サイラス!! 来たぞ!!」


 人々の悲鳴も聞こえる。

 とんでもないことが起こっているようだ。


 サイラスがマリサの肩に手を置く。


「マリサ……聖女というのは本当か?」

「は、はい!」


 マリサがうなずくと、サイラスがきゅっと口を引き締めた。


「来てくれ!」

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