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第27話:三人で眠る

 家に帰ても、エヴァはしょんぼりとうなだれいた。

 よほど恐ろしかったのだろう。


「自分がどれほど世間知らずかわかったか? 供の一人も連れず歩ける町じゃないんだ」


 エヴァがじっとサイラスを上目遣いに見つめる。

 その青い目はうるんでいた。


「怖かった。サイラス、今日は一緒に寝て」

「は? おまえ、人の話を――」

「一緒に寝て!」


 エヴァがさえぎるように言い放つ。がんとして引く気はなさそうだ。

 サイラスが渋い表情になった。


「……明日、絶対に帰るか?」

「帰る……」


 エヴァが素直にうなずく。

 さすがに男たちに襲われたことがこたえたらしい。

 マリサは他人事とは思えなかった。


(私だって、当初はサニーサイドの危険性を考慮していなかった。もし一人だったら……)


 マリサはサイラスをちらりと見た。


(私、ずっと彼に守られてきた……)


 サイラスは常にそばにいてくれた。

 一人きりになったときも、彼の存在がマリサを守ってくれた。


(エヴァさんが恋するのもわかるわ……)


 クールで大柄なサイラスは、一見とっつきにくく見える。

 だが、思いやりがあって面倒見がいい。

 だからこそ、町の人たちからも信頼されているのだろう。


(私、なんて不運なんだろうって思っていたけれど……)

(サイラスさんに会えて、すごい幸運なんだ……)


 エヴァにうながされ、サイラスが仕方なくソファをかついで、ベッドのそばに置く。


「まったく、十八歳になるっていうのに、おまえは一人じゃ眠れないとか……」

「そうじゃなくて! ベッドで一緒に寝てよ!」


 エヴァの大胆な提案にマリサはおろおろしたが、サイラスは素っ気なかった。


「断る。狭い」


 エヴァの渾身こんしんのアタックも、あっさりかわされた。

 エヴァが頬を膨らませてむくれている。


(でも、いいなあ)


 隣にサイラスがいれば、どんなに安心して眠れるだろう。


(私も隣に……って何を考えてるの!)

(絶対に緊張して、むしろ眠れないわ!)


 うっかり想像してしまい、マリサは慌てた。


「どうした、マリサ。顔が赤いぞ。熱でもあるのか?」

「なんでもないです! じゃあ、私はこれで……」


 自室に帰ろうとするマリサを、エヴァが止めた。


「待ってよ、マリサ」

「え?」

「マリサでいいわ。隣で寝てよ」

「ええ!?」


 エヴァがぷいっと顔をそむけてもじもじする。


「本当に怖かったの! 一人で寝るの嫌なの!」


 マリサは思わずふきだしそうになった。

 同い年だというのに、まるで妹のように感じる。


(だけど、それってサイラスさんと同じ部屋で寝るということで……)


 想像するだけでドキドキする。

 サイラスがふう、とため息をついた。


「マリサが困っているだろう。わがままを言うんじゃない」

「別にいいでしょ、マリサ!」


 強気な発言とは裏腹に、エヴァの表情からは不安が見え隠れする。

 はやり、かなり怖かったらしい。


「わかったわ」


 マリサが承諾すると、エヴァがホッとしたように表情を緩めた。


「すまないな、マリサ」

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