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第25話:飛び出したエヴァ

「あいつ……っ!」


 サイラスが立ち上がる。同時に一階のドアが開く音がした。


「夜の町に一人で!」


 エヴァは衝動的に飛び出したので、荷物は全部残っている。


「すまない。今から探しにいくから、先に休んでてくれ」

「いえ、私も探します!」


 エヴァはサニーサイドに来たばかりの自分そっくりだ。

 周囲から浮いている、世間知らずのお嬢様。

 そんな子が夜の町にひとりでいれば、どんな目に遭うかわからない。


「いや、危ないから――」

「大丈夫です! もう街の地理も覚えたし、大通り沿いを探すだけですから!」


 冒険者ギルドのおかげで治安がそれなりに保たれているサニーサイドだが、ならず者たちは少なからず住んでいる。

 一目のない裏通りなどにたむろしていることが多く、絶対に近づかないようサイラスにきつく言われている。


「一人より、二人の方が早く見つかります!」


 立ち上がったマリサに、サイラスがふっと肩の力を抜いた。


「すまないな、マリサ。巻き込んでしまって」

「いえ! 運命共同体じゃないですか!」


 マリサの言葉に、サイラスが大きく目を見開き、かすかに微笑んだ。


「そうだな……。だが、本当に大通りだけにしてくれ。まだ店も開いているし、通りも明るいから大丈夫だと思うが……」

「はい! 気をつけるので平気です!」


 これでももう、一ヶ月以上、サニーサイドで暮らしているのだ。

 大通り沿いの店は一通り顔を出しているし、顔見知りも増えてきた。

 何かあったら、冒険者ギルドの建物の駆け込めばいい。

 ふたりは家を出て、大通りへと向かった。


「俺は裏通りから探す!」

「はい!」


 マリサは大通りを早足で歩いた。

 いかにもお嬢様然としたエヴァはサニーサイドでは目立つはずだ。

 だが、必死で目をらしても、エヴァの姿を見つけられない。


(どこに行ったんだろう……)


 家を飛び出したとしても、おそらく一時的な感情の昂ぶりのせいだ。

 そんなに遠くには行っていないだろうし、ましてや人の少ない郊外に足を向けたりしないだろう。


(きっと町の中心のどこかにいるはず……)


 もしや店の中かも、とちらちらと中を覗いてみるが見つからない。


(エヴァさん……)


 サニーサイドに来たばかりで、土地勘も知り合いもいない彼女が一人で出歩くなど危険このうえない。

 サニーサイドにはマリサのように身寄りもなく祖国に帰れない人も混ざっている。


 そういう人間を狙って人さらいのようなことをする人間もいるという話だ。

 サイラスが警戒して、マリサが町に慣れるまで一人にしなかったのはそのせいもあるだろう。


(エヴァさんは若くて綺麗な女の子……危険だわ)


 そのとき、小さい悲鳴が耳に届いた。

 マリサはハッとして、路地に入っていった。


「エヴァさん!」


 路地の奥に見覚えのある水色のワンピースが見えた。

 エヴァが体格のいい男二人に囲まれている。


「離してよ!」


 エヴァが腕をつかまれているのを見て、マリサは思わず叫んでいた。


「やめてください!」

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