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母乳をあげないで

作者: ソイソース

先日、不愉快な幽霊に出会いました。

そのときの話をしようと思います。


<40代女性 主婦>


友人が亡くなりました。

彼女は高校のクラスメイトで、今でも年に一、二回は遊ぶくらいの長い付き合いでした。

葬儀の連絡は突然で、とても驚きましたが、何とか都合をつけて出席。


幽霊に出会ったのは、葬儀の夜、私が布団に入った時のことです。

疲れは溜まっていたのですが、なにぶんショックの大きい出来事でしたので、なかなか寝付くことが出来ませんでした。


30分ほど経った頃でしょうか。

足元に気配を感じました。

そうです。言うまでもなく彼女です。

長い付き合いですと、気配だけでもはっきりと分かるものです。

高鳴っていく鼓動を感じながら、私は目をひらいて彼女のほうを向きました。

以前と変わらぬ空気を纏った彼女は、優しい笑顔で私を見つめています。


あぁ、最後に会いにきてくれたんだね、なんてしみじみ浸りながら、少しでも近づきたいと思い、体を起こしました。

その瞬間。

彼女の顔の下。胸の辺りに目をやると、ギョッとするような光景が暗闇の中でもハッキリと見えてきました。


彼女、、赤子に母乳をあげてたんです。

子どもなんていないはずなのに。少し前に会った時も妊娠なんて話はまったく聞きませんでした。


幸せそうな笑顔で母乳を飲んでいる赤子を見ていると、掻きむしりたくなるような苛立ちが身体中を駆け巡りました。


お前は誰だよ。

それはお前のものじゃないだろ?


考えれば考えるほど、気持ち悪くて。遂には耐えきれなくなってしまい、布団に顔をグッと押しつけて

「死ね!!」

と、柄にもなく大きな声で叫んでしまいました。

真っ暗な部屋に私の罵声が響き渡ると、あっけなく彼女らの気配はスッと消え去り。あれほど胸を叩いていた心臓は一気におとなしくなって、私は気絶するように眠りに落ちました。


今でもあの赤子の気持ち悪い顔を思い出すと、新鮮に、不愉快な気持ちを思い出してしまいます。


どうして死んだ後も成長しようとしてるんでしょうかね。

歳食って死ぬわけでもないくせに。


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― 新着の感想 ―
得も言われぬ心地の悪さをじ〜んわり堪能しました 小の幸せ感が大の幸せ感を強制喚起させていそうでいやです 一方で、いささか激しすぎるかもしれない憤慨にもなんだか気圧されました 読後感が尾を引いています …
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