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サリー・クーパーは13歳  作者: 澳 加純 


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推しはクリスタ!

このお話は『テスとクリスタ 第一話あたしの秘密とアナタの事情』の番外編ですが、本編を未読でも(たぶん)お楽しみいただけるようになっています。


タイトルどおり主人公はテスでもクリスタでもなく、サリー・クーパーという13歳の女の子。ランウェイモデルになりたいという夢に向かってがんばるお話です。

ただクリスタが出てくる都合上、舞台は少し先の未来。木星付近に広がる新興住宅地と化したアステロイドベルトにある人工惑星。本編とすり合わせるため、時折りSFチックな小道具等が出てきたりします。が、ストーリーには超常能力等は全く出てきませんので、ヒューマンドラマとしてお楽しみください。


 サリー・クーパーは13歳。アステロイドベルトにある人口開発惑星レチェルの首都バクラヴァの12区在住で、同区の中学校(ミドルスクール)の生徒だ。

 そんな彼女の夢はモデルになること、だった。


 すでに身長が170センチあり、友人たちと並ぶと頭ひとつ大きい。しかもまだまだ成長過程で、測定の度に伸びている。顔の造形はお世辞にも美人と呼ばれる部類には入らなかったが、整っていないところに愛嬌があって、個性的な魅力があると言えばそうとも言えた。

 鼻が少し垂れているのだって、エラが張っているのだって、遺伝だから仕方ない。口角の下がった大きな口だって、薄すぎる唇だって、頬の筋肉を上げて笑顔を作ればちょっとくらいは可愛く見せられる。せめて顔中に拡がるそばかすが消えれば、もう少しマシになるだろう――と自分に言い聞かせている。

 要は、憧れのクリスタのように、魅力的になればいいのだ。


 スーパーモデルの、クリスタ。


「ねえロブ、知っている? クリスタとあたしって、5歳しか歳の差がないのよ。でも彼女は誰もが憧れるトップモデルなのよ!」 


 サリーは2歳違いの兄に、クリスタの素晴らしさを伝導しようと目を輝かせて語る。だが当の兄は、手の届かない偶像であるクリスタよりも、隣に越してきた同級生の女の子に心を奪われていた。だから妹の言葉には適当にうなずいて、ご機嫌を損ねない程度の同意しか示してくれない。


「人気デザイナーのロマン・ナダルって、知っているでしょ? 彼のミューズとして、創作活動に多大な影響を与えているんですって。でね、ナダルのブランドを象徴するモデルになりつつあるのよ。『descalzo(デスカルソ)』って命名された新しいラインは、彼女をイメージして世界観を創られたんだよぉ」


 サリーは、我が事のようにスーパーモデルの偉業を話す。それから最新のファッションに身を包んだクリスタの3D動画を見せて興味を引こうとするのだが、ロブに鼻であしらわれた。


「はぁ、なんだよ『descalzo(はだし)』って。ちゃんとサンダル履いてんじゃん」

「そういう事じゃないのー! ブランドのラインの名前なんだってば。ロブってば、最近はシンシアに夢中で、妹のあたしの話は聞いてくれないんだ」


 ちなみにシンシアとは、隣に越してきた一家の娘で、ロブの初恋の相手の名前である。サリーがクリスタのファンだと知って、彼女が載っているグラビアファッション誌を譲ってくれた優しい少女だ。そのシンシアの名前を聞いただけで真っ赤になるくらい純真なロブだから、サリーも妹として兄の恋が成就すればいいとは思っていた。

 だが自分のあこがれの人を鼻であしらわれるのは、非常に面白くないのである。


「よくそんなこと知ってんな」

「――ってファッションサイトのインタビュー記事に載っていた」


 クリスタ関連の話題に関しては、TVから雑誌、USNSS(アサンス)(宙間交流通信サービスサイト)に24-7 Tube(オンライン動画共有プラットフォーム)までチェックを欠かさないサリーだ。先日も24-7 Tubeのファッション専門チャンネルで、クリスタの特集番組があるからと、母親の小言を舌戦の末に撃退しTVの前を占領することに成功していた。

 高価なブランドの服を手に入れることはできないけれど、その分彼女のことならばなんでも知りたかったし観ていたかった。


「クリエイターの創作力を突き動かすことができるなんて、なんてドキドキすることだろう。デザイナーのミューズになるって、どんな気分だと思う? きっとワクワクすることに違いないわよね」

「だろ~ね」


 自分もそんな風になりたい、サリーはそう思っていた。





 彼女がモデルになりたいと思った理由のひとつは、間違いなくその身長の高さにある。クーパー家はみな高身長で、3人兄妹の末っ子で一番年若いサリーは、家族の中では一番小さい。

 けれど幼稚園でも小学校エレメンタリースクールでも、そして中学校(ミドルスクール)でも、彼女のあだ名は「のっぽ」だった。家族内では一番チビでも、同学年の女友達たちと並ぶと頭ひとつ分身長が高いのだ。


 身体的特徴をからかいの対象(ネタ)に使うのは学校で禁止されているが、それは表向きのことで、監視の目が緩んだところでは「のっぽのサリー」は心無い中傷の的になった。ただ目立つという理由で。

 クラス移動をしようとキャンパスを歩いていたら、後ろからやって来た男子生徒に心無い言葉を投げ掛けられた。


「おい、のっぽのサリー。邪魔だ、どけよ」

「相変わらずでけぇなぁ、そのうち天井に頭が着くんじゃねえの」

「天井はまだでも、ドアの上枠にはそろそろぶつかりそうじゃん!」


 そんなことないわよ――とサリーが薄い唇をゆがませると、


「ますますブサイクに見えるぞ、そのツラ!」

「おまえ、ただでさえ目立つんだから、出っ張ったエラとぶざまな鼻は引っ込めとけよな」

「ブサイクなんだからさぁ」


 などと追い打ちをかける。意地の悪い笑みを浮かべた彼らの方が、余程醜怪な表情をしているとは思ってもいないらしい。


 サリー・クーパーが高身長を自慢したことはない。むしろ大人しく目立たないようにと振る舞っていても、いじめっ子が見逃してくれないだけだ。なんだかんだと彼女が落ち込むような言葉を並べ、囃し立てては笑い者にしようとする。

 背の高いこと、容姿のこと。


(あたしは、なにも悪いことなんてしていないのに!)


 そんな雰囲気の中、ただひとりジェシー・キクチだけが彼女の身長のことをからかうことはなかった。


「え~、むしろ羨ましいよ。俺なんて、150センチないんだぜ。バスケットボールやったってバレーボールやったって、身長(タッパ)足りないってみんなに馬鹿にされる! 幼稚園児の頃からあだ名はずーっと『ちび』一択だからな。そんなに嫌なら、頼む! 身長分けてくれっ!」


 さすがにそれは物理的にできないだろうと断ったのだが、身長は高くても低くても悩みの種になるのだとサリーは知った。

 


【用語解説】

USNSS(宙間交流通信サービスサイト)・・・ユニバーサルソーシャルネットワーキングサービスサイトの頭字語。SNS。お喋り(ツイート)することによって、情報拡散。アサンスとも。

24-7 Tube・・・オンライン動画共有プラットフォーム。一般ユーザーがいつでも無料で利用できる動画共有サービス。You〇ube。


以上は「テスクリ」世界の設定です。


ミューズ・・・ギリシャ神話における文芸、音楽、芸術、学問などをつかさどる女神であるムーサから。芸術に関連する女神であることから、クリエイターの作品モデルやインスピレーションの源となる人物を指す。人を陶酔させる魅力を放つ女性たちの呼称。


おねがい <m(__)m> (実験中)

お読みいただきありがとうございます。もし「面白いな」もしくは「面白いかもしれない」と思ってくださった方、「感想は面倒くさいけど足跡を残したいな」と思われた方、


 ( •ॢ◡-ॢ)-♡


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テスとクリスタ ~あたしの秘密とアナタの事情
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