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変わらない

知らなかった。

こんなに楽しいことってあったのね。

しかも、今まで何もない極貧の平民生活だと思っていた中にあるなんて。

あたしは遊び相手も大人だったから、つまらなかった。

規制をされるばかり。

毎日が窮屈で、そのうち大人と接することさえ嫌になった。

放り出したい勉強もみっちり毎日やらされて。

なのに教えてもらうことは国語、異国語、社交辞令のしかた。

肝心な国のことや歴史は何一つ教えてもらえなかった。

そのうち勉強の大半が勉強と名付けたダンスや歌だけになった。

それからすべてを投げ出した。

ただ座ってボーッとするばかり。

たまにおやつが運ばれて、ご飯がきたら少しかじる程度。

楽しいことなんて何一つなかった。

こんなに笑ったのはいつのことだろう・・・・・・?

きっと本当に小さい頃のことぐらいかな。

しばらくしたらあたしはひねくれてしまったから。

君はあたしより笑えない人生を強いられてきたんだろうね。

もちろん愛想笑いはしても・・・・・・メイド・・・・・・最高位・・・・・・か。

「あっはは!なにやってるのよ!子供を逆に泣かせちゃダメじゃない!はぁ・・・・・・もうだめ・・・・・・あたしくたくただわ。」

「大丈夫?」

「ええ、休めばどうってことないわよ。」

ああ、でもやっぱり王族と平民の体力はこんなにも違うものなのね。

あたしは本当に歩き回ってくたくたなのにラドーマはちっともなんだもの。

こんなに細いくせに。

ラドーマの手を取り、骨みたいな腕を眺める。

「ちょ!?リリア?」

「え?」

「き、汚いよ。平民と王族は触れてるものが違うから。」

「そう・・・・・・言われたの?王宮の誰かに?なんて失礼なやつ!確かにお皿洗いとか洗濯とかはしてるかもしれないけど、汚いなんて!」

この手が汚いなら汚い手でお皿を触るのもどうだろうということになるではないか。

「ち、違うから!僕は・・・その。」

顔を赤らめて反らすラドーマを見てやっと気が付いた。

「ああ、ごめん。照れてたのね?」

「・・・・・・ごめん・・・・・・思い上がりなのはわかってるけど僕、異性とこんなに仲良くなったのは初めてだから。」

「あたしもよ。」

そう、周りが大人だったからね。

「え?」

「あたしもはじめて。同年齢くらいの異性と笑ったのも、それは異性でなくても初めてだけど、何もかもが初めてよ。」

城は窮屈で兄弟や姉妹があんなに仲がいいものだということも、あたしは何一つ知らなかった。

あざのことも、両親のことも、君のことまでも。

その後、ほどなくして彼とあたしの二人だけでは押さえ切れぬ平民達の怒りが爆発をし、革命を起こした。

革命、双子、かかげられた首はどちらのものかわからなかったけどかかげられた首を見ながらラドーマはあたしそっくりだと驚いていた。

ああやはり変えられないのね。

もちろんあきらめないわ、まだ探すわよ。

だけど、疲れたの、休ませてくれる?

かまわないわよね。

あたしは下手に動けないの。

自分の終焉を早めないために。

ああ、だけど疲れたわ。

だから帰るの。

あたしがあたし自身の時を刻める場所へ。

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