トップの排除
そう、あたし達に名前はない。
あたしが物心ついたころからあたしは王女様と呼ばれ、両親はすでに2歳の頃に殺され、あたし達双子は自分がなんと呼ばれていたか、なんという名前なのかもわからない。
あたしはつまり、女王様が自分の名前だと思っていて、君は女王専属メイドが名前だと信じていた。
幼い頃は。
でもそれはやがて位の名前だと気付き、あたしは名無しの王女であることを知る。
きっとなんとか第○姓とかなずけられておしまいなのだろうけど、名無しの革命なんて、変な感じになりそう。
「呼びあう名前よ。王女もメイドもそれは与えられた位の名前であってあたし達自身を呼びあう名前ではないわ。平民たちはこうやって名前で呼びあって、生きているのよ。どんなに貧しくても仲良く・・・・・・ね。」
「仲良く・・・・・・できるならよろしいのですが、そろそろ規定の時間なので失礼いたします。」
「規定?」
「未来や過去で見ませんでしたか?大臣達は見張りをつけているのです。それがわたくし。ある一定の時間がすぎると交替するのです。それもすべては・・・・・・王女様、あなたを部屋から外に出さないため。ですが時間をこえていたら監視をつけても意味がありませんね、それも監視の位置までしっかりと知られているのでは。」
君はクスリと初めて笑顔を見せた。
どんなに位に縛り付けられた人形で感情が腐ってしまってもやはり人間なのだ。
意志があり、感情がある。だから笑った。
君が笑った。
「そう、やはり私を縛り付けるための生け贄・・・・・・ならここにいるのはまずいわね、また会いましょう。」
「はい、いつかまた。」
同じ城に住みながら一心同体である光と影はなかなか出会うすべを知らない。
あたしはふだん彼女がどこにいるのかさえ知らないのだ。
ただ、大臣達とよく一緒にいるということだけは知っていて、大臣達もそれであたし達二人を縛り上げている気でいる。
一人が世間知らず。
もう一人が大臣に逆らえない忠実なメイド。
それでもなお、あがき続けるしかできない今は、一人でも仲間を増やすべきだ。
それがたとえ、終焉の礎となるあたし達双子姉妹の片割れの君でも。
だが、まだこんな死さえ予測しないような時に言われても、混乱するだろうか?
死を宣告するのは酷だろうか?
いや、もうすぎた出来事とするべきだろう。
君の顔に驚きや戸惑いがあっても最終的には落ち着いている顔をしていた。
今のあたしはそれを信じよう。
そしてあたしは君と仲良くなり、賢い君は大臣を少しずつ変えていくことに成功した。
でも変えられない大臣トップ3は相変わらずその椅子に座り続け、大臣が大臣からお金を巻き上げはじめるという異様な光景が始まった。
いよいよ城はカラカラになっていく。
いや、正式にはまだなってはいない。
これからなるのだ。
貴族、王族税制度は決められたばかり。
なんとかしなければ。
どうにかしてトップ3に居座る大臣をどかしたい。
それも私だとばれることなく。
このままでは・・・・・・城内からも不満が出て私は確実に血に染まるだろう。
ああ、でもどうして崩壊するとわかるところまで来ているものをさらに窮地に落とすのだろう。
やはり人間は欲望には勝てない・・・・・・ということだろうか。
二人でできるギリギリのところまではした。
あとはあたしが王女として法律を正さなければならない。
でもそんなことすればあたしは確実に毒殺、あるいは寝首をかくなどの闇に葬られるだろう。
次期女王は君、すると革命の生け贄は君となり、あたし達は確実に死ぬ定めとなるだろう。
ああ、ああ、本当にどうしたらいいのだろう。
未来にいこう。
ヒントをもらおう。
そしてあたしは未来へ飛んだ。
するとさっそく大臣があたしに飲ませるための毒薬を用意しているところだった。
ああ、もう仕方ない。
堂々と二人で組んでいることを証明しよう。
そうすれば大臣達も王位制度は変えたくないだろうからあたしも君も殺せなくなるだろう。
味も匂いもない毒薬をおそらくこれがいつの話かと言うことだ。
未来の何年後?何日?
わあ、あと3日後、あたしは毒薬を口にするの?
とにかく毒薬は姉にとってきてもらってトップ3の大臣達に証拠を見せ付ける。
そうすればトップ3以外変わった今の城内なら大臣達は確実に流れる。
そのままいいほうにことが流れれば未来は変わる。
城内強化を計り、アルコール中毒になってしまった兵はクビ。
いや、もうすでに排除されているかな、新しい大臣達の手によって。
新たな兵を雇い、大臣が使ってしまった大金は・・・・・・そうだ、どうしよう?
このままでは納税を下げても平民達の暮らしが楽になるわけでもない。
それどころか平民も城内も苦しくなるだろう。
その先に待つ未来は?
どうなってしまうだろう。
やってみるしかない。トップ3排除さえできればあとはなんとかなるだろう。
戻ると時間が過ぎる。今ごろ毒薬が発注され、そろそろ城内に到着する頃だろう。
「リア、こちらに来てくれるかしら?」
リアとは姉の名。結局名前などよくわからずにあたしが最初に言ったリリアからとったらしい。
「はい。」
「大臣達を流しましょう、あたし達が手を組めば無敵よ!」
そして当日、作戦は実行されあたしのゴネで無理矢理大臣達を呼んだパティー式お食事会が始まった。
正直、お腹は減っている。おやつに毒薬が入れられたとリア伝いに聞いてから何も口にしていないし、喉だってカラカラだ。
どれも信用してはならない。
特にこの王座の近くの飲み物やフルーツは。
他のモノは多分平気なのだろうけどそろそろ早めに種明かししようかしら?
パンパンと手をたたくと賑わっていた会場が静まり返り、皆あたしを見た。
「急なパティーにお集まりいただいて、うれしいかぎりだわ。今夜は少し、色々な事情があってね、皆さん、あたしの近くで君臨する大臣はご存じ?」
法律を都合良く書き替えた大臣達はもう他の大臣達や召使たちと接触することはなくなっていた。
だから大臣達も新しく変わっている人たちや何も知らない国のために働く大臣をトップ3はどちらもお互いのことを知らない。
避けたのだ。トップ3自らが、他と接触することを。
「今日はそのトップ3の大臣を紹介したいと思います。さあ、こちらへ。」
次回、最終話です。