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優しさ

黙々とミルフィーユを口に運び、紅茶を口に流し込む。

「ごちそうさま、かたずけてちょうだい。」

すると一人のメイドがやってきてかずけはじめた。

「失礼します・・・・・・あの、ご気分でも優れないのでしょうか?」

「え?」

「すみません、わたくしの言うことではありませんね。」

「いいえ、気分は悪くないわ。けれどどうしてそんなことを聞くのかしら?」

じっとメイドの目を見た。

緑色の目に自分のまだ幼い雰囲気の顔が映し出されている。

「あ、あの・・・・・・いえ、王女様、今日はとてもむずかしそうな顔をしておやつを召し上がられていたので。」

緑色の瞳はあたしから目を逸らし、うつむいた。

「そうなの?以後気を付けるわね。ありがと。ああ、それとあなたもよく睡眠を取るようにね。目のしたにうっすらくまがあるわよ。」

「は・・・・・・ぅ、すみません!・・・・・・わたくしのようなものにありがたきお言葉です。」

メイドは相当動揺したらしく顔を赤らめてすぐに部屋から出ていってしまった。

あたし、そんなめずらしこと言ったっけ?

まあいいわ、姉に会いたい気分なの。

ああでも君のそばには常に大臣がいるかな。

眠たい・・・・・・時をこえるようになってからというものよく寝るようになっちゃってこんな調子で大丈夫なのだろうか。

あたしの終焉みらいは――…‥。

ふっと目が覚めると目の前にはあたしがもう一人・・・・・・?

じゃなくて!

「おめざめになられましたか。では失礼いたします。」

「まって!」

起き上がった瞬間に毛布が床に落ちた。

これをかけにきてくれてたんだ。

「なんでしょうか?」

「知ってるわよ、あたしも、平民生活がどんなに厳しい状況にあるか!そしてあたしたちはどれだけ大臣に利用されてるか!知ってるの。だからもう、さけなくていいのよ・・・・・・。」

「え?」

「ねえ、あなたは・・・・・・時をこえるなんてこと・・・・・・・ありえると思うかしら?」

「わたくしには判断いたしかねます。」

ああ、なんて堅物なの?

自分が人形だと知りつつも大臣に忠実を誓うの?

とてもとても、かたっくるしい言い方。

その仮面のしたは優しさで満ちているというのに、誰もそれには触れられない。

やっぱりあたし達は同じだね、暖かい手も届かずに椅子に座り続け、大臣のいいように扱われる人形。

「では、これからあたしが言うことをあなたは信じてくれるかしら?」

「王女様のお申しとあれば。」

そういいながらあたしに頭を下げる君は見ていてこちらまで辛くなってしまう。

姉という先に生まれた立場でありながらあたしに尽くす立場の運命。

この先に待つ終焉があたし達は絆で結ばれていたことを証明するけれどそれは時すでに遅しというもので、気付いたのが死の間際。

時代は進むものだというけれど、でも王国制度でうまくいっている国もあるわけで、すべてがすべて革命が起きてつぶれていくわけではないはず。

ここの腐り切った大臣達をどうやれば流せるのだろう。

自分が殺されないように動くというのは怖いものだ。

どうして・・・・・・世界は変わり行くのだろうか。

とにかくひとしきりの説明をした。

君は信じられなさそうに目を見開いていた。

当然・・・・・・だよね。

あたしなら信じない。

そんな世界は有り得ないと。

平民もあたしもなんら変わりなく、あるのは城や着るもの、口にするものの差だけだと思っていたのだから。

「疑うわけではありませんが、それはまことですか?ならばなぜ王女様のみがそんなつらい体験を・・・・・・。」

「わからない。でも無力さを知れってことならだいぶわかったし、昔より利口になったと思うわ。それに姉妹、いいえ双子にはたいていこんな身分差はありえないのよ。すべては大臣たちが仕込んだわな。思惑どおりに動かされてるのはあたし達と平民。さっき話したとおり怒れる平民たちはあたしの首を狙っているの。この話をすることで・・・・・・聞いているだけではあたしの自意識過剰だと思うかもしれないけれど・・・・・・あなたがあたしをかばって死んでしまう可能性が出てきてしまうの。いいえ、話さなくてもそうよ。可能性は元々あなたのなかに存在するものだから。あたしは死にたくないし、あなたも死にたくないといった。あたしもあなたと仲良く双子としてなんの差もなく生きてみたい。だから未来これから終焉シナリオを変えに行く旅をしているところよ。」

「そんな危険な!あなた様はこの国を納める王女様なのですよ!?怪我でもなされたらどうなさる気なのですか!?」

驚きの声をあげながら人の心配をする君はやはり優しいね・・・・・・としかいいようがない。

でもね、あたしは怪我ぐらいじゃびくともしない。

あたしはあたし達の未来を変えるために今を生きているから。

「し、あんまり大きな声を出さないで。大臣にばれてしまうかもしれない。そうすればあたしの数ある未来のうちの一つ、大臣に殺され、あなたが逆らえない王女としてあの座に君臨することになるわ。それが今、もしかしたら着実に進んでいる最中かもしれない。わかるわよね?」

「ええ、最近の王女様は物知りになり、扱いづらいとかもっぱらの大臣達のうわさですから。わたくしも何度かその噂を耳にいたしましたし。」

「普通に同じように話しましょう?あたしは・・・・・・そうね、リリア、あなたは何にしましょうか?」

「王女様、それは・・・・・・何の名前でしょうか?」

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