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プロローグ





「それでぇ、前の旦那と来たら本当に酷くてさぁ! 結婚記念日とか私の誕生日にもやっすいレストランばっか連れて行くのよ。まじあり得なくない!? それで愛してるとかまじあり得ないんだけど!」


「ははは、そうなんだ」


つまらん日常。しょうもない人生。目の前で無価値な話を続けるマッチングアプリで知り合った三十路のバツイチ女の話を右から左に流しながらどうして俺の人生はこうなんだと腹が立つ。

俺は梶島王子かじしまぷりんす、今年で28の無職男だ。顔を身長もそこそこでふつーの一般人って感じの人間。数年前までサラリーマンやってたが意味わからん理由でリストラにあいコンビニバイトまで落ちた。バイトで金貯めてはマッチングアプリ、酒、競馬に注ぎ込んで貯金は常にすっからかん。もちろん借金もしたした。競馬もほとんど勝った試しがなく、女を作ってここから人生再スタートを切ろうと思っても釣れるのは癖が折れ曲がっているような奴らばかり。まぁ、あれだ、金も何もかも俺の手元には何も残らない。

今だってそうだ、先ほどトイレに行ってくると言って席をたった三十路が帰ってこない。飯だけ食ってとんずらこかれたのさ。


「クソババアが……」


軽くなった財布を握り締め、舌打ちつきながら店を出る。時刻は23時を指し、空にはうさぎの半身を写した月が光っていた。


「あの月が落ちてきて人類皆殺しにしてくれたら全員俺と同じゼロになるんだけどなぁ」


そんなことをぼやきながら鼻歌混じりに俺は歩いて帰路に着く。しばらく歩いているとこんな遅い時間帯になっても店の中を動き回って仕事をする若い学生の姿が見えた。あそこは俺が働いているコンビニの系列店だろう。

はぁー、いいね。若いって、可能性の塊じゃんか。未来あるって良いね。はぁー、いいな。


「憂さ晴らしにクレームでも入れに行こうかな」


そんなことを言いながら俺は漫画雑誌を立ち読みするべくコンビニへと足を運ぶ。入り口に立つと扉が開きまもなく張りのある若い男性の声で迎えられた。俺は声が聞こえてないような態度で本のエリアに行き、先週の気になる漫画のページを開いて素早く読み始める。長居しないのが立ち読みのポイントなのだ。


「え、、このキャラ死ぬんだ。意外」


ネタバレ考察が流れてくる前に読めて良かったと心底安堵する。

そっか、死ぬんだ。こんな最強キャラでも。まぁでも現実でだってどんな鍛え抜かれた肉体と強さを持っていても銃一発撃たれれば終わりだもんな。人間の死なんてそんなもんか。

つまんねー、人間って。来世はもっとアブノーマルなものに生まれ変わりたいもんだ。


俺も領域とか展開しちゃったりして__


そんなことを半笑いで思い漫画雑誌を閉じて前を向いた。途端、視界が激しい光に包まれ次の瞬間、ガラスの割れる音と共に激しい衝撃が俺の体を吹っ飛ばした。脳が揺れ、視界が壊れたテレビ画面のように小刻みに揺れる。


「事故だぁぁぁぁー!!」


音割れするような叫び声を上げる学生の声が微かに聞こえてきた。

そこでようやく自分が突っ込んできた車に轢かれたことを自覚する。どうりで身体中が麻痺したように動かないわけだ。次第に視界が霞んでいきはとんだ何も見えなくなる。そんな視界の中で、血だらけで今にも死にそうな男が車の従首席から落ちてきたのが一瞬見えた。小太りでいかにも人を馬鹿にしていそうな金持ちなおっさん。こんなやつが乗る車のせいで俺は死ぬのか? ふざけんなよ!死んでたまるか!せめて俺を轢いたことを心の底から悼んでくれる美女が良かったっっ!


「くっ、、クソ、ジジ…………」


絞り出した悪口を最後まで言うことなくあたたかい水に浸かりながら俺は意識を失った。



この日、俺の人生は一度壊れた。そしてここから人生逆転をかけたクエストが開始する。



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