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職業教会

 クラスゲット、及びクラスチェンジは町にそれぞれある教会の中でも「職業教会」という場所で行われていて、初めて職業に付く人、もしくは職業を変更したい人が訪れる教会となっているそう。


 また職業の中にもクラスはあり、そのクラスによってもその人の強さをしているそうだ。 最近はクラス間に置ける差別はご法度とされていて、ルールを破ったものには禁錮刑と職業停止の言い伝えが来るとかなんとか。


 それを今回私に行うということで、夕食後に家族会議が行われていました。


「そう言うわけで、彼女を何かしらの職業に就かせるのは、悪くないと思うのだが、皆はどうかな?」


 ガネッシュさんがそう話を切り出して他の人に意見を聞いてみる。 最初に口を開いたのはマウスレッドさんでした。


「その事については、僕も懸念していました。 これは彼女の意志にも関わってくる問題でしたし、何よりも僕個人の理由で彼女を巻き込むわけにもいかなかった。 ですが、同じ意見があるのならば、僕は尊重したいと思っています。」


 マウスレッドさんがそう話を区切ると、ルビルタさんも言葉を紡いだ。


「私もあの馬鹿王子から逃れたんだから、今更もう一度イバラのような道に進ませるのは心苦しい気持ちだった。 けどやっぱり勿体ないもの。 私も賛成。」

「ふふっ。 みんな同じ気持ちだったようですよ。 私もお止めはしません。 全力で応援しますよ。」

「みんな、ありがとう。」


 家族会議はこれにて閉廷。 私は近いうちにその教会に・・・


「ただ、一番近いのがあの教会となると・・・」


 私が勝手に頭の中で話を進めていると、マウスレッドさんが話のへしを折った。 あれ? そう言う流れじゃなかった?


「・・・確かにあまり薦めに行きたくは無いかもな。」

「私もあそこの上部神官共は嫌いなのよねぇ。」


 皆さんが口々にネガティブな言葉を並べるので、私は気になって話を聞くことにしました。


「あの、その教会でなにがあるのですか?」

「特に教会自体にはなにもないのよ。 問題なのは」

「その教会の神官がねぇ。 どうも人を選ぶような感じなのよ。」

「あること無いことを言って、中々クラスゲットの儀をさせてくれないのよねぇ。」


 普通の教会をやる神官としてあり得ない所業にあると言うことだけは分かった。 分かったけれど・・・


「あの、皆さん、私・・・」

「どちらの意見を言おうとも、我々のやることは変わらないよ。」


 私がなにかを言う前に制したのはガネッシュさんだった。 変わらない。 つまり私の白魔導師へのクラスゲットの意思は変わらないという意味を示していた。


「仕方ないわよね。 あそこが一番近いわけだし。 あまりオススメはしたくないんだけど。」

「ルビルタ。 今回ばかりは文句も言っていられませんよ。 それに1人で行かせるわけではないのですから、大丈夫ですよ。」


 そうしてこれで本当に私は教会に行くこととなったのだった。


 次の日の朝に皆さんと共に教会に出掛ける準備をした後に、森を抜けて街へと出てきた。


「そういえば私って街並みを歩くのはこれで2回目になるんですよね。」


 そう私が話を切り出すとそこから火種になってくれたようで、会話が弾んでいく。


「確かに。 僕が連れ帰るためにここを通ったのが最初でしたね。 あのときは貴女をあの城から遠ざけたい一心でしたので、街並みをよく見せていませんでしたね。」

「といってもまだ3日目よ? 昨日は魔法のことで付きっきりだったし、最初は私達がいるから、街案内くらいは出来るわよ。」

「クラスゲットの後にでも散策しようか。 ほら、教会が見えてきたぞ。」


 ガネッシュさんの指差す方を見ると、確かに屋根に十字架が飾られており、誰が見ても教会だということがハッキリと分かるようになっていた。


「我々も教会自体に来るのは久方ぶりでな。 昔と変わっていない部分があるわけだ。 変わって貰っても困るがね。」


 そうして教会の扉を開こうと、ガネッシュさんがドアノブに手を掛ける前にドアが開かれて、中から教会の人であろう人物が覗いた。 よくアニメとかで見るシスターの格好はしていないし、神父の格好もしていない。 どういう立場の人なんだろう?


「やぁ、君は相変わらず生真面目だね。」

「それがこの教会では教えになっていますので。」


 声を聞くと若い男性の声だった。 仮面をしているからか顔は見えない。 だけどマウスレッドさんとのやり取りで、かなり好意的なのは分かった。 そしてその人は私達に一礼をして、そのまま待機していた。


「あの人とは知り合いなのですか?」

「まあ、知り合いと言うか、話すには少し複雑と言うか。」

「?」

「マウスレッドの昔馴染みっていうのは本当よ? 進む道が互い違いになっただけなのよ。 とは言え普通に考えれば適性なんだから喜ぶべきなんでしょうけどね。」


 なんだか複雑な事情がありそうだったので、私はこれ以上は聞かないことにした。 人のあれこれにズカズカと入る私じゃないから。


 そしてこの教会に入ってから見る一番大きい扉を開けば、正面に大きな聖母様のようなステンドグラスがはめ込まれている正しく聖堂と呼ぶに相応しい場所へとやってきた。


「私、教会なんて初めて入ります。 こんな風になってるんですねぇ。」

「神の信託を受けに来た者よ。 神に代わり、願いを聞き入れよう。」


 そうしてザ・シスターと言わんばかりの格好をしている人が、私達に声をかけてきた。 ステンドグラスから差し込む光は、正しく神の威光とも言わんばかりであった。


「おや、どなたが訪れたのかと思ったら。」

「どうもシスター。 その節はどうも。」

「いえいえ、こちらとしても優遇を聞かせて貰っておりますので。」


 ガネッシュさんとなにかをやり取りしている。 どうやらそれなりの仲のようだ。


「彼女は父さんと共に旅をしていたらしいのですが、職業を「聖職者」にしたいと言った上で、かなり苦労をしたそうです。 その手助けをしていたと聞いています。」

「私達のクラスゲットも、あの人にやってもらったから、かなり信頼できるわ。」


 マウスレッドさんとルビルタさんが言うのだから恐らくは間違いないのだろう。 知り合いだから、という贔屓目で見たくはないけれど、やはり分かっている人の方がやりやすいというものだろう。


「それで、改めてどのようなご用件で?」

「彼女にクラスゲットの儀式をやってもらいたい。 マウスレッドやルビルタがやった時のように。」

「なるほど。 「いつもの儀式」をご所望というわけですね。」

「いつもの儀式?」

「クラスゲットの儀式のことを基本的にはそういうのですよ。 不思議ではありません。」


 カレトさんから説明を受けて、よく分からないことをしないことだけは分かった。


「・・・おや? 彼女は・・・」

「ほう。 やはり気が付いたか。 元魔法使いなのだ。 分かって貰えると思っていたよ。」


 へぇ。 元々は魔法使いの人だったんだ。 でもどうして聖職者に・・・って私が考えることじゃないか。


「なるほど。 確かに彼女は早々にクラスゲットの儀式を行わなければなりませんね。 早速準備の方に・・・」

「別にそのようなことをせずともよいのではないですか。」


 シスターの声を遮るように入ってきたのは1人の神官。 でもやらなくていいとはどう言うことだろうか?


「お言葉ですが、彼女はクラスゲットの儀式を行わなければ、勿体ない程の能力を保持しています。」

「毎度言っているでしょう。 そのような証明が何処にあるのだと。 よもや彼女はなにがクラスゲットになるというのです?」

「彼女の魔力はとても強い。 しかも世にも珍しい、「白魔導師」の素質のある人材なのですよ?」

「それこそ正に証明になりませんね。 白魔導師はこの世界に3桁もいるか分からない稀有な存在。 あのものにそのような素質があるとは、私には到底見えませんね。」


 そう鼻で笑われる。 カチンとはくるがここで逆上することに意味はない。 私だって自信を持って「白魔導師」だと言えるわけでもない。


「ま、余程体つきに自信があれば話は別だったかもしれないが、見ている限りでは、それもやや怪しい限りだ。 そもそも手ほどきの仕方も知らんような田舎娘では、白魔導師などというのは恥ずかしいだろうよ。」


 私がムカつきと共に一言言ってやろうかと思った瞬間に教壇がすっ飛ばされて、近くのステンドグラスが叩き割れた。


「な、なにをするのですか!? ここは教会なのですよ!?」

「いいから神官らしくとっとと仕事をこなせってんだよ。 相も変わらず難癖つけてはやらせたがらないよなぁ?」


 怒っているのはルビルタさんだった。 確かに気の短い方だとは感じていたけれど、所お構い無しにやるとは思っても見なかった。


「神官。 今回は私達もいる。 これ以上彼女を侮辱するのは、止めて貰おうか。」


 その神官に向かって怒気のある言葉を放ったガネッシュさん。 その言葉に神官もなにも言わずに後ろに下がった。 私に対してはなんか憎たらしく睨み付けてきたけれど、ここまでみんなに守られている私にとっても、あまり怖さを感じなかった。


「お騒がせして申し訳ありませんでした。 ではこちらへ。」


 そうして私は先程の神官が行った扉とは逆の扉へと案内されるのだった。

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