表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/58

砂漠地帯の注意点

 ジャリ・・・ジャリ・・・


 海から森へと入り、敵からの襲撃に警戒を怠らないように歩みを進め、私達は砂漠地帯へと足を踏み入れた。

「砂漠なだけあって暑いですね。」

「上からの直射日光と砂からの熱気、そして熱を纏った風。 どれを取っても我々の行く手を阻む障害だ。」

「それに加えて夜は恐ろしく気温が落ちます。 寒暖差も今までとは段違いです。」


 ユウシさんとマノさんが説明に入る。 この暑さから急に寒くなると言われても、まだピンとは来ていない。 ただ分かるのはその寒暖差が季節の移り変わり特有のものの比ではないと言うことを身構えている程度。 まだ体感していないだけに未知の領域なのには変わり無い。


「うー・・せめて敵が出てきてくれるならありがたいんだけどなぁ・・・ 暑いだけで汗が出るのは勘弁して欲しいぜ・・・ あと殺風景過ぎて気が滅入りそうだしよ・・・」


 珍しく項垂れているのは後方を歩くサイカさんだ。 砂漠のど真ん中ということもあって、後方に見えていた森ですら今は見えなくなってしまう程に遠くになっていた。


「水・・・持ちますかね?」

「それよりも魔物からの襲撃が怖いな。 足が砂なのでワシも踏ん張りが出来んかもしれん。」


 アイルドさんは自分の足元を見てそう語るが、私が特に気になったのがその服装。 アイルドさんはこんな砂漠地帯に入ったにも関わらず、自分が身に纏っている鎧をどこも外していないのだ。 そして先頭を歩いているので、日射しももろに当たっている。 つまりアイルドさんは1人だけこの暑さ以上に自分の身体を焦がしている、ということになる。


「アイルドさん。 ツラくなったら言ってください。」

「そうだぜオッサン。 オッサンが倒れたら元も子もねぇっつーか、見てるこっちが心配になるんだからよ。」

「ありがとう。 だが何度も来ているこの砂漠では気にするほどでもない。 たが今回はホノカ殿もいるので、変に強がりもせんが。」


 それが既に強がりなのでは? と皆思ったけれど誰もなにも言わなかった。


 そうして一度休憩に入り、さすがに着たままでは休めないとアイルドさんは兜を脱ぐと、やはりというべきだろうか、顔が汗まみれになっていた。


「オッサン・・・ いくら仲間っつったってそれは許容出来ないぜ?」

「う、むぅ・・・」


 サイカさんのいう「それ」というのは臭いのこと。 妙齢男性の汗の臭いは強烈である。 しかし脱いでしまえば守りの要が無くなってしまう。 それは私達にとっての命取りになってしまう。


「アイルドさん。 汗や臭いを取り除くことは出来ませんが、暑さ自体をなんとかする魔法があるので、それをお使いになりますか?」

「そのような魔法があるのなら是非とも使って貰いたい。 仲間とはいえ忌避されるのは、この歳になると少し傷付くのでな。」


 あ、これは地味に心にきているような気がする。 年頃の娘を持って反抗期に入ったあの感じなのかな? でもアイルドさんって30代くらいの筈だから、娘だとしても私達くらいじゃ・・・ってそんなことは関係無いよね。


「「遮断するは身体の害となる熱 コルドアーマー」。」


 熱遮断魔法を鎧ではなくアイルドさん本人にかける。 そうする理由は鎧からの熱は遮断できても鎧内部の熱が遮断できずに、蒸し風呂状態が続けば変わりはないし、なにより鎧は熱を持ったままの方がなにかと役に立ちそうだと思ったので。


「これで防げるのか?」


 アイルドさんからは特に変化が無いように見えるけれど、私からはちゃんと薄い膜が張っているのが見える。 とにもかくにもこれでこの砂漠地帯を抜けるための準備が改めて出来たと言える。


「そろそろ出発しよう。 太陽が傾き始めた。 夜になる前になんとか進んでおきたい。」

 ユウシさんが号令すると私達はすぐに立ち上がってまた砂漠を横断することにしたのだった。

「アイルドさん、どうですか?」

「うむ。 砂の中に足が入らないだけでもかなり楽に歩ける。 ただ地面の感触が無いのがいささか不思議ではあるが。」


 今アイルドさんは私の魔法によって砂の上を歩いているように見える。 これは私の「アメーボ」と呼ばれる白魔法で、地面に直接触れること無く歩けるという魔法。 勿論この魔法にも欠点はあった。 それは「空中にいるため移動が出来ない」という点だった。


 それを改善するために考えたのは「最初から宙に浮く」ではなく、「移動する時だけ足場を作る」という発想へと変えた。 すると歩いたりする時に見えない足場が出来て、そのまま水の上を歩けるようになった。


 当然止まればその足場は消えてしまうので注意が必要だけど、体重に関係無く使えるので、今回のように砂で身動きが取れなくなるような場面には役に立ったというわけ。


「いいなぁ。 オレもああいう魔法ならかけてもらいたいんだよな。」

「それじゃあ戦闘の時にはサイカさんにかけることにします。 それまでは我慢してください。 どうぞお水です。」

「わりぃなホノカ。 まあ1人にしかかけられないんじゃ、文句も言えないよな。」


 サイカさんがその事について文句を言わないでくれているのはありがたいけれど、私個人としてはなるべく全員分に付与できるようにならなければと思っている。


「・・・! なにかが地中から来る! アイルドさん!」

「うむ。 ホノカ殿、魔法を解いては貰えないか?」

「分かりました!」


 そう言って私はアイルドさんに付けていた「アメーボ」の魔法を解いた。 そしめ私は後ろに待機する。 なにが来るか分からないので、まずはアイルドさんの盾で防いでからの攻撃態勢になる。


「・・・! 来た!」


 地中から飛び出したのは砂色の魚だった。 その魚はアイルドさんの構えている盾に激突するかのように空中から攻撃をして来た。


「「デザートフィッシュ」だ。 地中に潜られると厄介だ。 空中にいる間に仕留める!」

「っしゃ! ならオレが行くぜ!」


 そう言って飛び付いたのはサイカさん。 足場が砂だというのに、かなり勢い良く飛んでいった。 その時にデザートフィッシュは完全にお腹の方を向けているので反撃は困難。 そんながら空きのお腹にサイカさんは一発の拳を入れた。


 だけど拳を叩き込んだ場所が悪かったのか、すぐさまデザートフィッシュは逃げるような態勢に入る。


「っ! 待ちやがれ!」


 サイカさんは既に空中にいるためそのままでは自然落下してしまい、デザートフィッシュに追撃を入れられなくなってしまう。 だけどその為にこの魔法をサイカさんに付けるのだ。


「「見えざる足場が汝の支えとならん アメーボ」!」


 そして魔法が付与されたのを確認した上で、サイカさんに声をかける。


「サイカさん! 魔法を付与しました! これでアメーボは使える筈です!」

「サンキューホノカ!」


 そう言うとサイカさんは自分の身体を半回転させて足を空中に投げ出す。 こう言ったところはやろうと思っても出来ない曲芸だなと私は感心していた。


「逃がさない・・・ぜっと!」


 そしてまるで空を蹴ったかのように急加速して、デザートフィッシュに飛び込んで行く。 デザートフィッシュは逃げることに精一杯でサイカさんの姿は見えていない。


「「震盪降」!」


 サイカさんの拳は魔物もろとも近くの地面を揺らした。 それだけの威力の攻撃をまともに食らえば肉体はともかく、地面と拳との間に挟まれた内蔵などは無事ではすまないだろう。 案の定デザートフィッシュは潜るための機能が失われたのか、そのまま砂の上に転がっていた。


「ふぅ。 なんとか逃げられる前に倒せたぜ!」

「お疲れサイカ。 そして魔物もいいものを落としてくれたみたいだ。」

 ユウシさんが近付いて、デザートフィッシュが居た場所からなにかを取り出す。 それはこの砂漠には似つかわしくない、みずみずしい葉っぱだった。

「それは?」

「これは「水緑の葉」。 これから水を生成することが出来る、この砂漠では貴重な葉っぱだ。 さすがに無限とまではいかないにしても、水がなくなってもこれから水を作ればしばらくは水には困らないだろう。 もしものためのアイテムだ。 ホノカさんが大事に保管してくれないかい?」

「分かりました。 「ストレジ」。」


 そうして新たなアイテムを手に入れて、私達は日暮れと共に今日の進歩を終了するのだった。


「夜は夜で、寒さが答えますね。」

「下手に脱ごうものなら昼間の汗で熱を奪われる。 体温調整は怠らないようにしなければならない。」

「あ、でもここからの夜空は、とても綺麗ですよ。」


 マノさんの言うように上を見上げると、そこには今までに見たことがないくらいの満天の星空が広がっていた。


「綺麗・・・遮る光が無いだけでこんなにも鮮明に見えるんですね。」

「月や星は前の世界とほとんど変わらないだろうな。 さぁ、ここはワシに任せて、お前さん達は寝るといい。 夜は始まったばかりだからな。」

「じゃあ任せるぜオッサン。 おやすみ。」


 そう言ってサイカさんがテントの中に入っていったので、私達もテントの中で夜を過ごすことにした。 旅にも慣れたものでテントで寝ることも最初に比べればスムーズになったものだ。 旅はまだまだ長い。 歩を進めるのも大事だけれど、自分達の身体を守るのが資本であるため、こう言った休息は大事だと思いながら、私は眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ