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私はまだまだ未熟です

今回はマノ視点になります

 ホノカさんがパーティーに入ってから、皆さんの魔物との戦闘が楽になったように見えます。


「「天地斬波剣」!」

「「物質の質量に更なる過重を ウエイティ」。」


 ユウシさんの上から剣を振り下ろす技に、剣に対して魔法を掛けることでその瞬間だけ過重が乗って、攻撃力が上がったり、


「キャキャー!」

「ぬ! 魔法攻撃か!」

「「障壁により魔法を防ぎたまえ マジックプロテクト」!」


 アイルドさんが防ぎきれない魔法攻撃にも、ホノカさんの魔法障壁が加わったことで防御力も上がった。


「ほっ、はっ! くそっ! 避けてばっかで攻撃が出来ねぇ!」

「サイカさん。「クイック」の魔法を掛けますので、急激な変化に気を付けてください。 「クイック」!」

「おっ? おおっ! 一気に速くなったぜ! これならやれるぞ! そらそら! オレはこっちだぜっと!」


 サイカさんが回避に専念している中で補助を加えて攻撃が出来るようにしたりと、攻撃に防御、オマケに速さまで完全に補助できるホノカさんは、正に適材適所のように輝いて見えた。


「凄いなぁ・・・」

「っ! しまった! マノ!」


 そんな風に考えていたせいか、ユウシさんの叫び声を聞くまで状況を読むことが出来なかった。 他の皆さんの間を潜り抜けて、私の方に魔物が来ていることに気が付かなかった。


「あっ・・・」

「「汝が見る姿は質量の幻影なり メーペー」!」


 魔物の攻撃が私に降りかかった・・・と思ったら隣で空振りをしていた。 その後すぐにサイカさんがその魔物に蹴りを加えて戦闘が終了した。


「ふぅ、危なかったぜ。 大丈夫か? マノ?」

「は、はい・・・すみません、ちょっと考え事をしていて・・・」

「今日はひっきりなしに戦闘が続いたから、疲労もあるかもしれないな。 だが休息先はもう少し歩いた場所だ。 申し訳ないがそこまで頑張って貰えるか?」

「・・・はい。」


 皆さんに迷惑になってしまったことを、私は深く反省した。 皆さんが戦っている中で、私だけなにも出来ずに、自分の命の危機にすら助けて貰った。 それが物凄く申し訳なく感じてしまった。


「・・・よし。 ここまで来れば大丈夫だろう。」

「かなり見晴らしがいいように見えますが・・・」

「その心配は無用だぜホノカ。 この場所を襲うにしても、敵は今来た森か向こう側に見える砂漠から来ることになるけど、森はオレ達が夜通し警戒するから攻めに来にくいし、砂漠は砂漠で丸見えだから奇襲には向いてない。 そもそも魔物だって人を襲う前に砂漠に耐えなきゃいけないからな。」


 そんな感じでホノカさんとの会話が続いている中でも、私はその中に入ることが出来なかった。


「どうしたマノ殿? そのように遠い場所にいて。」

「いえ、皆さんには迷惑を掛けてしまったなと思いまして。 私が余計なことを考えなければ、皆さんのお手を患わせずにすんだのに、と。」

「何故そのように思う必要がある? 我々は一蓮托生。 仲間の仲間への迷惑などあって無いようなもの。 マノ殿だって遠距離からの魔法攻撃の支援は助けられている。 つまるところ、気にしすぎというものだろう。 そろそろ夕食の準備に取りかかろう。」


 アイルドさんは優しい言葉を掛けてきてくれたけれど、それでも私の気分は落ち込んだままだった。


 早めの夕食を取った私達は何時ものように見張りの順番を確認して最初に見張りをするアイルドさんを残してシュラフで眠ることにした。 その時でも私の気が晴れることは無かった。


「マノ。 交代だぜ。」


 自分が寝ているシュラフを揺らされながら起きると、そこにはサイカさんがいた。 見張り番の交代と言っていたので、私はすぐにシュラフを脱いで周りを見渡せるように用意された椅子に座ります。 時刻は深夜の3時頃。 皆さんが戦闘で疲れている中で私だけが先に寝ていたので、最後の時間の見張りは私になっている。


 これに関しては私が弱いからとかではなく、起きてからすぐに戦闘態勢に入るまでに、ある程度の準備の時間がある。 魔導師には正しく呪文を唱えなければならないので、更にタイムラグが生じやすい事から、残りの朝までの時間の見張りを任されている。 それが私達の夜のルーティング。 それに文句は言わない。


「・・・はぁ。」


 それでも溜め息が出てしまう。 理由は分かっている。 私が一番戦闘の役に立っていないと言うことを。


 魔導師なのだから前線に出て戦いをする役職ではないとは分かっている。 だけれど皆さんの足を引っ張っている気がして仕方がないと感じてしまう。 ホノカさんが入ってから私も皆さんと連携が取れるように、一緒に戦う場面は多くなってきた。 それでもなかなか撃つ機会が少ない事には変わりなかった。


「・・・うーん・・・ん・・・」


 声がしたので後ろを見るとホノカさんのシュラフが起き上がっていた。


「あ、ホノカさん。 まだお時間ではないので、寝てても大丈夫ですよ。」

「・・・ああ、マノさん。 心配には及びませんよ。 やりたいこともあるので。」


 そう言ってホノカさんはシュラフから抜け出して、収納魔法から自分の椅子を取り出して座ると、今度はスケッチブックを用意してすぐに書き始めた。 多分今日戦った魔物の事を絵に写しているんだと思う。


「ホノカさんは凄いですね。 あれだけ凄い魔力をお持ちなのにまだまだ上を目指している感じがして。」

「そうでしょうか? 私はマノさんほど魔法を使った経験が無いので、もっと練習を重ねないといけないですよ。」


 その向上心はどこから溢れてくるのか。 私よりも年上の人らしい考えを持っていると、本当に思いました。


「それにマノさんだって、この世界に来てからすぐに魔導師としてパーティーに入れて貰えて、そっちの方が私は凄いことだと思いますよ?」

「そんなこと・・・魔法を使うなんて滅多なことですし、それに私が魔法を使う時って、どうしても皆さんが倒せない相手が出てきた時とか、援護が欲しい時とかばかりで・・・」

「それだけ皆さんがマノさんの事を信頼しているということではないでしょうか?」


 悲観的になっていたところにホノカさんはそんな風に言ってきた。


「そ、それは勘違いですよ! 皆さんが強いので、私の出番が無いだけですから!」

「でもマノさんだって、一つ一つが凄い魔法を使えるではないですか。 私では攻撃魔法は使えませんので。 一長一短ですよ。」


 私がどれだけ言おうとも、多分ホノカさんは私の事を誉めることを止めないような気がした。 だけれどそれが決して嫌なわけではない。 むしろそう言われる事が今までそんな風に誉められたことは無かっただけに困惑を極めているから。


「そう言った事って自分では案外分からないものらしいですよ? 私だって、この白魔法がこの世界では稀少な存在だなんて信じられませんでしたし、それがどれだけ凄いことなのか、自分では分からないんです。 なのでマノさんも自分に自信を持って頂ければと私は思います。」


 こうして話している間でもホノカさんはスケッチブックから手と目を離していなかった。


「自信」


 私という人間がその言葉を使うのは最も難しい事なのは私自身が一番分かっている。 


「ホノカさんは、どうして、そんなに自分に自信を持てるのですか?」


 だからこそこの言葉は聞きたかった事だったのだということを、質問した後に思った。


「私だって自信があるわけではないですよ? マノさんと同じ様に、不安だらけの毎日です。」

「でも」

「だから私は「私にしか出来ないこと」と思って皆さんのお役に立てれたら、それで私はいいのですよ。」


 私はホノカさんの言う通り、本当に勘違いをしていました。 皆さんが強いから私は役に立ててない。 皆さんが倒してしまうから、私の出番が無いと思っていた。


 だけれど皆さんは私のように魔法は使えない。 そして魔物の中には物理攻撃が通じにくい相手も当然いる。 その時ばかりは私にしか倒せない。 

 そう、どれだけ強くても自分達だけで倒せる相手じゃないと分かったなら、私に頼るのが筋。 つまりそれだけ私が重要だと言うことを、ホノカさんが教えてくれた。 そしてホノカさんは私よりも後ろで皆さんを見ている。 だからこそ自分の立ち位置は一番分かっているのだろう。


「あの、ホノカさん。 私も、皆さんのお役に立てれるように、なにか、アイデアを考えてはくれませんか?」

「それはいいですけど・・・私でいいんですか?」

「はい! むしろ同じ魔法を使える者同士で考えた方が、皆さんとは違う視点から出来ると思うんです。」

「なるほど。 それならまずは方針から考えていきましょうか。 魔法自体は遠距離からの攻撃が多いですから、それを利用したりとか・・・」


 そこから皆さんが起きるまで、ホノカさんと朝御飯を用意しつつ色々と話し合った。 その時間だけはなによりも心が晴れやかだった。


「くっ! こいつ、オレの攻撃が見えてるみたいに避けやがる!」


 サイカさんと戦っている猿のような魔物は、まるで武術の心得があるかのように、サイカさんの拳や蹴りを紙一重で避けている。


「前の時はこんなやついなかったんだがな。 時間が経って生態系に変化が訪れたのか?」

「ワシらも加担したいところだが・・・! 他の魔物から背を向けるわけには・・・!」


 ユウシさんもアイルドさんも目の前の魔物で手一杯の状態。 助けに行くことは難しいだろう。


「武術の基本は敵から目を離さないこと。 だからその隙を作ることが出来ればいいんだが・・・ 来るか!」


 猿の魔物はサイカさんが攻撃を止めた途端に反撃と言わんばかりに飛び掛かっていった。


「「空を飛ぶ姿は閃光の小刀になりて フラダガー」!」


 その飛び込んで行く所へと、私は光の小さな剣を魔物の前に飛ばす。 魔物はそれを避けるために一瞬仰け反った。 その隙をサイカさんは見逃さなかった。


 サイカさんはその仰け反った顔にそのまま蹴りを食らわせる。 その後は相手が反撃する前に倒していった。


「ふう。 助かったぜマノ。」

「お役に立てて良かったです。」

「それにしてもあそこに攻撃を仕掛けるとはなかなか考えたなマノ。 あの攻撃は当たっても当たらなくても面倒な攻撃だったと思うぜ。」

「ありがとうございます。」


 私はサイカさんとそんなやりとりをした。 頼られることがこんなにもそこらしく感じるのは、なんだかいい気分だと思った。


「マノ殿、随分と嬉しそうではないか。」

「ああ。 ホノカさんと話し合って、なにかを掴んだみたいだ。 俺達と同じで。」


 後ろからユウシさん達の声もしたけれど、優しい言葉を掛けてくれたようで、悪い気分にはならなかった。


「皆さん! 砂漠が見えてきましたよ!」


 ホノカさんが示した先に私達の行く先がある。 ホノカさんといるだけで不安が無くなるような気がしてきた。 やっぱり入ってくれて良かったなと、ホノカさんを見て本当に思った。

色々と書いていたらかなり長くなってしまいました。

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