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何から何まで

 休息を終えた私達は、今の現状を軽く確認する事にした。 とは言え知らないのは私だけなので、簡潔に説明が入るくらいだろう。


「ここからは魔物も強くなっていきます。 それに夜の焚き火で襲ってこないということも少なくなります。 この辺りだけでも夜行性の魔物が増えてきますから。」

「つまり夜の見張りもかなり警戒をしなければならないという事ですか。」

「それだけならまだ良いのですが、次の安全な街まではかなり距離があるんです。」


 マノさんは地図を取り出して、今いる場所であろう所に指を指しました。


「私達はこの海岸へと上陸しました。 そして次の安全な街と言うのがここになります。」


 マノさんがぐいーっと指をなぞっていった場所が安全な街。 その間には砂漠から始まり、沼地、森、川と続いてようやくたどり着ける場所だった。


「ここ以上には最短距離はありません。 そしてここを抜けるだけでも最低1ヶ月は掛かります。 魔物との遭遇や天候などを考えると、最も長くなるかと・・・」


 つまりそれだけ険しい道のりだということを示唆でも隠喩でもなく、本気で言っている。 正しく山あり谷ありと言う具合だった。


「こればかりは嘆いてもいられない。 険しい道のりは魔王討伐には付き物だ。 それにここの魔物達に遅れを取るわけにはいかない。 魔王はもっと凶悪な力を持っている。 こんなところで負けていられないのだ。」


 ユウシさんは意気込んでいた。 魔王との戦いにどれくらい敗北を繰り返したのか私には想像も付かない。 だからこそ立ち止まる所はもうこんなところではないと言う現れなのかもしれない。


「というかオレ達はもう先に進むしかないっしょ。 毎度見てるけど、船はあんなんになっちまったし。」


 サイカさんが浜辺の方を指差すと、既に残骸と化した船が横たわっていた。 魔物達が壊したものだろう。 確かにあれでは航海など出来はしない。


「あ、でも次の街で水辺の場所を確保できれば戻ることは出来ますので、それだけはまだ安心と言えませんか?」


 そう言って私は「ストレジ」から「場所戻りの芳香」の先端を出す。 今までは進むことしか出来なかっただろうユウシさん達。 だけど今はこれがあるため、戻ろうと思えば戻れる。 だけどまだこちら側で「記憶の雫」を落としていないので、今戻ってもまた航海を行わなければならなくなるため今はお預けだ。


「確かにそれは今回の旅の利点だ。 一度困難に立ち止まっても体勢を立て直すことが出来る。 だけどそれがいつまでも出来るとは思わない。 俺はそのつもりで進んでいく。 ・・・そろそろ進むとしよう。 ここもいつまでも安全とは限らないからな。」


 ユウシさんはすぐに立ち上がり、スタスタと歩みを始めた。 先程まで疲れていたとは思えない程に足が速い。 やる気が違うんだろうなぁと、私は遠い存在のように思った。


「この調子でいけば明日の夕方頃には砂漠の入り口に到着するだろう。 しかし今日はもうすぐ日が暮れる。 昼間の消耗もあるからこの辺りで休息を取ろう。」


 ユウシさんがそう言うとみんなはせかせかと動いて、野宿の準備をする、のだけれど、今回は今までとは違うことに気がついた。


「あれ? テントがまだ張れてないですよ?」

「ああ。 ホノカ殿は初めてだったので忘れていた。 この大陸以降はワシ達はシラフと焚き火のみで夜を明かすことにしているのだよ。」

「え?」

「テントの中で寝てて、魔物に襲われたらどうしようも無いって前にあったからさ。 すぐに立ち上がれるようにしたんだよ。 見張り番や焚き火があっても、オレ達が起きてなかったら意味ないしな。」


 アイルドさんの説明にサイカさんが補足を入れる。 何かの訓練のようにも聞こえるけれど、言っていることは間違いではない。 自己防衛はとにかく必要なのだ。


「こうして焚き火をするのも、砂漠へ入ってしまえば多くは出来なくなりますね。」

「なるべくなら砂漠の真ん中で寝ることはしたくはないけれど、それで遅れを取るのはもっとまずい。 明日でなんとしてでも砂漠を乗り越える備えをしなければ。」


 支給確保も楽では無くなってきている。 魔王城まではまだまだ長い道のりではあるものの、どのくらい進んだのかは未だに分からない。 今は一歩でも多く進むことが大事なようだ。


「私はこの辺りに結界を張りますね。 それで少しは分かりやすくなるかと思います。」

「世話になるホノカ殿。 対処が早ければ準備もしやすい。」

「それに今後は暗闇からも魔物は襲ってくる。 油断は出来ないだろう。」


 そう言われながらも私は「アララート」の魔法を周囲に張る。 これで私達以外の何者かが入ってきても、すぐに知らせてくれる。 警告をするだけで攻撃は行えないけれど、迎え撃つための準備は出来るので、文句は言われる事はない。


 そしていつも通りに見張りの人が一人起きていて後の皆が寝静まる頃。 穏やかに時間が過ぎると思われていた静寂は突如として破られる。 頭の中に警告アラームが鳴り響き、シュラフを着たまんまに起き上がる。


「ユウシさん!」

「ああ。 敵襲のようだ。 皆、武器を構えるんだ。」


 先程まで寝ていたとは言え頭は妙に冴えていた。 だからこそシュラフを脱ぎ捨ててからの戦闘態勢も早かった。


「ホノカさん。 結界の範囲はどのくらいですか?」

「ここを中心に半径1キロです。 今は地上だけですがもっと回数を重ねれば球体上に結界を張れるようになるはずです。」

「はへー そんなことまで出来るようになるんだな。」

「お喋りはそこまでだ。 気配が濃くなってきている。 だが向こうも一気には襲ってこないようだ。 こちらの様子を伺っているのだろう。」


 アイルドさんが警告をするが、このままでは囲まれている私達の方が圧倒的に不利になっている。 この暗闇ではこちらの灯りが唯一の目印になっている。


「アイルドさん。 敵の数は分かるか?」

「すまない。 位置だけはある程度把握できるが、数までは分からぬ。」


 サイカさんの問いにアイルドさんは申し訳なさそうに答える。 気配が分かるだけでも大したものだと思うのだけれど、本人はそうは思ってないようだった。


 しかし闇からの奇襲はこちらにとっても良い状態で無いのは確か。 せめて敵がなんなのかだけでも把握しないと。


「・・・アイルドさん。 気配が強いのはどの方角ですか?」

「焚き火から2時の方角だ。」

「マノさん。 その辺りに火球を飛ばせませんか?威力はそこまで大きくなくていいので。」

「えぇ? ・・・分かりました。 「燃える灯火よ球体となりて フレボール」。」


 マノさんは私の言うように火球を飛ばします。 「ドン」と言う音と共に敵の正体が見えた・・・と思えばそのまま暗い森の中へと帰っていきました。


「なるほど。 奴らは「シャドーモンキー」と言って、まるで影のように闇夜から現れて襲う魔物です。 それが出来なかったのは我々にはこの焚き火があるから。 多分誰かが様子を見に来た時に襲うつもりだったのでしょう。」


 ユウシさんが魔物の説明をしてくれる。 影から現れる魔物か。 それは確かに厄介かも。


「でもそれって昼間は動かないって事ですよね? 魔物にも夜行性とかあるんだ。」

「そうだな。 とりあえず危険は去ったって事で、オレは寝ていいか?」

「まだ油断は出来ないが、全員で起きている理由も無かろう。 ワシが引き続き見張っている。 もう一度眠りにつくがよい。」


 そうして私は破られてしまったアララートを周囲に張り直してから、シュラフを着直して再度眠りにつこうとする。


 今までの旅は街中以外でも夜はテントの中で眠りにつく事が出来た。 だけど夜行性であり、焚き火にも恐れない魔物が今後は増えていくことは今回の事でハッキリと分かった。 私達はこの先強くならなければならない。 それは例え魔物でなくても倒さなければならないと言うケジメだと言うことを、この時の私はまだ知るよしもなかった。

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