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海辺の町の男達

「「我が放つ風は渦巻く波になる ウェブトール」!」

「「グギャァァァ!」」


 マノさんの風魔法で複数のエイのような魔物が倒されていく。 その様子はまるで大海原の怒りを表したかの様だった。


「まさか雷属性が効かない海の魔物がいるなんてな。 マノとホノカがいなかったら気が付けなかったぜ。」

「マノには物理的防御が高い相手の時にしか魔法を使わせていなかったからな。 魔力の温存をと考えていたが、それ自体が思い込みによるものだったと、ホノカさんに教えられたよ。」


 サイカさんとユウシさんが珍しくアイルドさんの後ろにいる。 本来前線である2人が何故後ろにいて、アイルドさんよりも前に杖を構えたマノさんと隣で白魔導書を開いている私がいるのか。


 それは私が昨晩海からの魔物に備えて、魔力の結界を貼っていた時の話に遡る。


「「脅威が現れた時に警告を鳴らせ アララート」。」


 キャンプをしている場所からそう遠く離れていない海岸沿いに私は白魔導書の中から魔法を唱える。 すると砂浜に魔方陣が展開されて、その後に砂に隠れるように魔方陣は消えていった。 これでテントに近付いてくる人影や夜で見えにくくなっている魔物の姿があれば、私の魔導書に警告としてアラームがなる仕組みになっている。


「よし。 これで浜辺からの侵入者は分かるようになるかな。 道側の方を警戒して貰えれば、今日は事足りるかも。」

「ホノカさん。 なにをなさっているのですか?」


 後ろから声をかけられたので振り返れば、そこにはマノさんが私の貼った魔方陣を見ていた。


「これ? これは相手が来た時に教えてくれる魔方陣を、この砂浜に入れたの。 誰かがこの浜辺よりも自分達のいるキャンプ場まで来ると音が鳴る仕組みなの。 鳴子と同じ要領ね。」

「凄いですね。 白魔法にも色々な呪文があるのですね。」

「白魔法って元々は補助魔法の方に近い役割が多いから、こういった「普段いつ使うの?」みたいな魔法があったりするんだよね。 あとは私が具現化院へと行った時に「これは白魔法じゃない?」って言う魔法をピックアップしてるからかも。」


 この魔導書にも多くの白魔法は書かれていたけれど、その場面に応じて使える魔法が多くはない。 自ら見つけに行くのも魔法使いの努めなのかも知れない。


「それにしてもホノカさんの魔法はとても洗練されているように見えます。 私ではそれまで出来るようになるのになかなかならなくて。 ちょっと羨ましいです。」

「洗練って・・・私この世界に来てから半年も経ってないよ?」


 それに羨ましいと言われるとちょっとむず痒くなってくるのもある。 私はそんな大それた人間じゃないし、こういった細々とした事じゃないと役に立たないのは自分が一番自覚している。 自分の思考ながら自虐的である。


「それに魔法は使えば使うほど、練度が上がるから、自然と強い魔法が撃てるようになるんだよ。 魔力だって使う方が体の循環が理解できる様になるって、マウスレッドさんも言ってたし。」

「そう・・・だったのですね・・・あの! それなら、ホノカさんに折り入ってお願いがあるのですが・・・」


 そしてそのお願いを受けて今の現状に至っている訳である。


「それにしても朝起きていきなりマノから「この道での戦闘は私に任せて貰えませんか」と言われた時は驚いた。 マノはこの旅で自分から意見を言うことは滅多に無かったから。」

「しかし使えば使うほど、という意見には自分も納得出来た。 手に馴染む物なら尚更な。」

「RPGとかでもレベルが上がれば魔法の威力も上がるもんな。 名前も変わるし。」


 みんなも思い当たる節はあったようで、すんなりと願いは受け入れられた。

 そう言った感じでしばらく進んでいると、道に屋台のような物が立ち並ぶようになってきていた。 どうやら港町に着いたようだ。


「いらっしゃい! 港町のシートン名物「カジキの油漬け」は如何かな? ・・・おや? 勇者様ではないですか? また来てくれたのですね!」


 近くの屋台から声が聞こえたのでそちらを見ると、褐色肌のやけに屈強な容姿の男性がお店をやっていた。 見ると様々な缶詰が店頭には並んでいた。


「この港町もお変わり無いようでなによりです。」

「言わないでくださいよ。 この町はこれが売りなんですから。 おおーいみんな! 勇者様達がまた来てくれたぞー!」


 そう大声をあげると、次々とお店のような建物の奥から人が出てきた。


「そいつは本当か!?」

「本当だ! 勇者様だ!」

「あれ? 知らない人もいる。」


 どうやら歓迎はされているようなので、少しだけ安心した。 でも何故私達が来るまで誰も姿を見せなかったのだろうか? 観光客がいないとは言え廃れている様子は無かったし。


「ささっ、ゆっくりしていってください。 辺鄙な場所ですが料理だけはおもてなし出来ますので。」


 民宿のような場所に案内された私達は女将さんのような方からそんな説明を受けてから、背負っていた荷物等を置くことにした。


「ユウシさん。 この港町、シートンと呼ばれていましたか。 前に来られた時もこのような雰囲気だったのですか?」


 あまりにも雰囲気がおかしいと感じた私は、ユウシさんに聞いてみることにした。 もちろんここの港町の人達にも理由はあるのは分かるけれど、それにしたって静か過ぎる気がしたのだ。


「そう言えばここにはかなり早い時間で来たようですね。 ホノカさん。 ここには港町ならではの風習、というよりは彼らの生命線を担っている人達がいるのですよ。」


 ユウシさんが答えてくれた言葉に私は一瞬疑問を持ったけれど、それはとてつもなく大きな音が鳴り響いて、全部の疑問がそちらに向いた。


「な、なんですか!? 何事ですか!?」

「お、帰ってきたんじゃないか?」


 私の疑問にサイカさんが反応した。 帰ってきた? 音を改めて聞いてみることにした。 この音って・・・汽笛?


 外を見てみると海から色んな船がこちらの方に向かってくる。 あれはもしかして漁船? でも確かに海から来るなら、朝早くに漁に出た人達が戻ってくるのは、こういった港町では当たり前なのだろう。


「あの、折角なので見に行きませんか? 私前の世界でもこう言ったのはテレビ以外で見たことないので。」

「そうだな。 ワシ達が来たことも知らせる為にも、顔を出しておこう。」

 そう言って皆さんも民宿を後に、その港へと歩いていく。 そこには先程の町並みとはうってかわって、人だかりが出来ていた。

「おおーい! みんなぁ! 今日も捕ってきたぞぉ!」


 一隻の船から顔を出した男性が高らかに声を挙げる。 その船には大漁と言える程の魚があった。 そして船が到着するなり、集まっていた人達は一斉に魚を運ぶ手伝いをしていた。


「今日も粋のいいのが捕れたもんだ! ハッハッハッ!」

「お疲れさんだよ。 ささっ、魚の事は任せなさいな。」

「今日も船の整備はバッチリだったな。 調子も悪くはなさそうだが、点検は任せておくれよ。」

「ありがとうよみんな。 魔物は来なかったようだしな。」

「俺達だってこの港町を守ってるんです! そう簡単にやられませんよ! ここは俺達の故郷ですから!」


 そんな町の人達のやり取りを見ている私達。 改めて見てみると、町の人達は体が丈夫そうというか、漁師さんや若い男性の人達はかなり筋肉質な人達が多かった。 魔物の話も出たので、もしかしたら魔物と戦うための肉体作りはしているのかもしれない。


「お? おおー勇者様。 この町に来てくれたのですね。」

「ええ。 またお願いできますかね?」

「あぁ。 ・・・すまないな俺達だって魔王に倒しに行けるだけの力があれば、少しでも役に立てれたのにな。」

「そんなことを言わないで下さい。 港町を守るのが皆さんの役割のように、魔王を倒すのは我々に任せてください。」


 何度も来ているのかもしれないのに、凄く丁寧に話していた。 この後の事はまた改めて聞いてみることにしようと、この町の人とユウシさん達の姿をみてそう思った。

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