合流する道
「ったく、これで何度目だってんだよ! いい加減しつこいぜ!」
「もしかしたら魔物にも仲間や縄張り意識があるのかもしれないな。 とはいえ相手は一応魔物だ。 油断はするなよ。」
「オーライ! ここまで来てガーゴイルになんてやられてたまるかってんだ!」
目の前で空を飛んでいる、剣を持って鳥と人が合体したかのような姿をした魔物、ガーゴイルとの戦闘に私達はなっていた。 この山に入ってからと言うもの、空からの空襲は大体この魔物が多かった。 私達が下山していることもお構い無しに戦いを挑んでくる。
しかし何度も戦った相手なだけに戦い方も対処法も大体掴めてきた。 例えば先頭の1体か突撃を仕掛けてきた。
「剣も構えず突っ込んでくるか! タイミングが分かれば・・・はぁ!」
サイカさんが突っ込んできた所に拳を合わせる。 だけどそれは左に縦に回転して避けられてしまう。 そして再度突っ込んできた所で、今度はサイカさんの蹴りが魔物の顔に当たった。
「フェイントも折り込み済みだっての!」
この辺りも私が後方からよく見ていたので、情報として教えてある。 そして1体目が倒されたことで、戦い方を変えてガーゴイル達が私達に向かってくる。
「そのまま突進しまいと剣を構える。 それもホノカ殿がしっかりと見ている。 そして」
今度はアイルドさんが前に出て飛んでくる2体のガーゴイル達と相対する。 「ドン」と盾を構えていると、ガーゴイル達の剣先が盾に当たる。 だけどそれは盾を貫通することなく、逆に剣が折れていった。
「お前達はその突進力上に止まることが出来ない。 更に剣が折れたということは」
「「はぁ!」」
サイカさんとユウシさんがそのガーゴイル達に攻撃を加えて消滅させる。 そう、ガーゴイル達は剣を失えばただ飛んでいるだけの魔物となる。 返す術がなくなるのだ。
そして最後の1体になったわけだけど、あのガーゴイルはなかなか仕掛けて来ない。
「仲間がやられているのを見て、こちらの様子を伺い始めたか。 しかしそれも今となれば無意味なこと。」
「「降り注ぐ雷は鋭角な矢とならん サンダロー」!」
マノさんは他の3人が攻撃をしている間に魔力を溜めていて、それを空から降らせていた。 しかしマノさん曰く、呪文を唱える事は出来ても放った魔法が不安定で、味方の方にも攻撃が来る魔法も今はあるそうなのだとか。 恐らくは慣れや魔力の調整の問題だと私は言った。
そして今放った魔法がその不安定な魔法で、私達の方にも向けられているが
「「魔力の災いから一帯を守りたまえ マジバリア」。」
私が魔法による攻撃から守る魔法を唱えると、見えない何かによって雷は私達の所にまで届く前に消えていく。
そしてガーゴイルはと言えば最初こそ避けてはいたものの、一度羽に当たってしまえば、あとはバランスを崩してやられるのを待つのみであった。
そしてガーゴイルがやられたのを改めて確認してから、私はマジバリアを解除した。
「よし! ガーゴイルの群れを倒したぞ!」
「それにしても敵の事が分かるってだけで、こんなにも戦いが楽になるなんてな。」
「情報戦というのはそう言ったものだ。 敵を知ることは、どんな戦略よりも勝る。 これもホノカ殿が事細かに敵の情報を仕入れているから出来ることだ。」
「皆さんに守られていなければここまでの事は出来ませんよ。」
自分達で自分達を鼓舞し合うのも最近では慣れてきた。 こうして互いに自信をつけて貰うことが、一番戦闘面においては大事なのだとはアイルドさんの弁である。
「この山とも、お別れですね。」
「苦難が多かったが、それでも山を越えることが出来た。 次に目指す街はここから道に合流してからまっすぐ進むことになる。 今までの山道と違い、ここは舗装が成されている。 道はかなり楽に進むことが出来るだろう。」
悪路でもそれを進むのは旅の醍醐味と言える。 そこに文句はなかった。
「ここも森が鬱蒼としていますね。」
「あの山は昔の地震で出来た隆起物だと地元の人は言っているらしい。 元々この辺りも平坦ではあったものとも言っていた。」
確かに山や谷と言うものはよく地殻変動によって作られるとは地理の勉強で聞いたことがある。 だけどあそこまで大きな山となれば、相当大きいか長い年月を掛けなければ作られないような気がする。 この世界にも自然災害は必ずある。 魔王などは関係無いところで色々と変わってるんだと思うと、この世界も地球とほとんど変わらないなと、安心感を覚えた。
そして久しぶりに森の中を進んでいくと、どこか嗅いだことのある香りが鼻をくすぐった。
「この香りは・・・」
「お、ホノカも分かるか? この潮の香りが分かる人か?」
そう、私の鼻に伝わってきたのはこの世界に来てからまだ一度も見ることがなかった海の潮の匂いだった。 具現化院へと行く時に飛んでいるけれどそれらしきものが一切見えなかった。
これだけ鬱蒼とした森の中ですら感じるこの潮の香り。 間違いなく海が近い事を表していた。
「道の合流先も海辺に近いから、山とは別の意味で見晴らしがいいと思いますよ。」
ユウシさんもこう言っているので、海が見えるのは間違いないだろう。
「みんな。 森を抜けるぞ。」
そうして森を抜けた先には・・・
あまりにも広大なはずなのに懐かしさに満ち溢れた海辺の姿があった。
「ふぁぁ・・・!」
「懐かしく感じるかい? 俺達もこの景色を見た時は、昔を思い出したものだよ。 まあ海は全部同じだから、懐かしいとかではないような気がするけれどもね。」
それでも今まで見てきた海よりも感動や優雅さの方が勝っているのかも知れない。 なんと言ってもこの世界の海の透明度は、前の世界でも数ある場所しか無かったのに、今すぐにでもキャンバスに描きたいとすら思えるほどだった。
「そう言えば次の目的地の事を私、なにも聞いていなかったような気がします。」
考えてみればどんな場所なのかを一切分かっていなかった。 海辺ってことは港町とかかな?
「次は港町で想像通りの場所になるとは思う。 しかしここからは彼らの力も借りなければ行けない場面にもなる。」
力を借りる? どういうことだろうか? そう思っているとマノさんが地図を広げてくれる。
「これから私達が向かうのはこの港町です。 そしてここを見てください。 隣の大陸へと行くために陸路を行くにはこのように大回りしなければならないのと、大回りをする場合に立ち寄れる村などはひとつもありません。 つまり補充が極めて困難になってしまうのです。」
「でもそうなってくるとこの幅でも海路を通ることになるけど?」
「だからその港町で行くだけの船を借りるんだ。」
私の疑問にサイカさんが答える。 力を借りるとはそう言うことかと私も納得した。
「我々も何度か立ち寄って借りているので今回も貸してくれることだろう。 借りると言っても使い捨てではあるけれど。」
「使い捨て?」
船で使い捨てとはどう言うことだろうと疑問に思ったその時、海の方から大きな波の立つ音が聞こえてきた。
「な、なに!?」
そう思った瞬間になにかが飛んできたけれど、ユウシさんがそれを剣で弾く。 地面に落ちたものは三叉槍と呼ばれる槍に似た物だった。
「これはシーマンの槍か。 気をつけてホノカさん。 これを投げてきたと言うことは、魔物が海から来ると言うことだ!」
そうして「バシャッ」と海から現れたのは半裸の男。 ただし普通と違うのはその男の耳はヒレのような物があり、体が青いのだ。 これが恐らくシーマンと呼ばれる由縁だろう。
「大丈夫。 シーマンは投げた槍を回収しようと陸へと上がってくる。 そこそこ強いけど、俺達なら余裕で勝てる。」
そうして出てきたシーマンと対峙することになった。 とはいえ先程ユウシさんが言った通り、格闘術や水鉄砲など水陸両用のような戦い方はしてきたものの、1体だけだったと言う事もあってか、あっさりと倒してしまった。
「コイツは槍を使われると少々厄介だが、こうして投げてきた槍を回収できないように立ち回れば、ワシの盾と人海戦術で戦える。 向こうも数を揃えられると、さすがに難しいがな。」
アイルドさんがこの決着の結末を簡単に話すと、シーマンからの戦利品のようなものを回収していた。 抜け目無いと言っていいのだろうか?
「さてと、港町まであと何回か戦闘をすることになるだろうけど、気張っていこうか。」
ユウシさんはそう言ってスタスタと歩いていく。 多分今までもそうやってきたんだろうなぁと思いつつ、その後ろを着いていくのだった。




