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魔物のオンパレード

 男女を返した後、コラロはこのまま集落の子供として改めて歓迎された。 コラロも最初こそ困惑していたものの、あの2人に付いていくよりはこちらの方が良いと判断したようで、なんとか受け入れた。


 その後私達は「記憶の雫」と「場所戻りの芳香」を使うために渇れることの無い水源に案内されて、「記憶の雫」を一滴垂らす。 そして芳香の蓋の部分に「2」という数字が付いた。 これでこの集落にもすぐに来れるようになった。


 そして下準備を済ませて旅立つ時に、改めて集落の人達が私達の旅立ちを見送るために外に出てきた。 そこにはボロボロだった頃とは違い、服も髪も綺麗になっているコラロの姿もあった。


「行っちゃうの?」


 コラロは寂しそうに私達を見ていた。 本当なら私達をここに留めておきたいのだろう。 だけど集落の人達から話を聞いていると思うので、「嫌だ」とも言えなかったのだろう。 そんなコラロに私は近寄った。


「大丈夫。 また来るから。 今度はこの世界に平和が訪れた時か、それとも用事でここに来るか。 とにかく必ず来るって約束してあげる。 だから泣かないで。」


 その言葉にコラロも納得したようで、涙ぐみそうな顔から私達を見送るための顔になった。


 そして集落を後にして、私達は山のある北へと歩を進めることにしたのだった。


「コラロ君、集落の人達と上手くやっていけるでしょうか?」


 集落から離れてしばらく歩いた所で、マノさんが不安げに振り返りながらそう言った。 確かに不馴れな環境にこれから順応しなければいけないと考えると、私も不安が拭えないわけではない。 そんなことを思っていると、アイルドさんから肩を叩かれた。


「心配せずとも、あの少年はやっていける。 我々と再び会う約束をしたのだ。 彼なりに頑張ることだろう。 我々は我々に託された使命を全うすればいい。」


 アイルドさんの言葉でマノさんも安心したのか、すぐに前を向くようになった。 私が入っていない間でも、こうやって互いに支えあっていたんだろうなぁ。 私の知らない彼らの想いが、私にも分かるようになった。


「今回山に登るにあたって確認しておきたいことがある。」


 今日のキャンプ地にてユウシさんが話を始める。


「これから我々はこの山を越えることになるわけだが、当然ながら舗装はされていないから獣道を通ることになる。 そして魔物もいる。 更にこの山で休憩をすることはほとんど出来ないと考えて貰いたい。」

「一気に山頂付近まで登るのですか?」

「いや、この山はそこまで高くはないので最短ルートで登れば山頂にはすぐに着くことだろう。 問題なのは魔物達の方だ。 ここの魔物は土属性が多いのか火を恐れない魔物が多い。 だから夜間での焚き火での魔物を遠ざける方法は通用しないんだ。」


 魔王城に近付くに連れて魔物も強くなっているのは分かっていたけれど、実際にそう言った場面に出くわす事になるとは思いもよらなかった。


「それに天候にも注意しなければならない。 今の時期は雪はないにしろ、雨風の場合は無理に歩を進めることは出来ない。 かえって我々が危険に晒される羽目になる。 横穴の把握と天候にも気を遣っていかなければな。」


 アイルドさんもそう語る。 山で最も恐ろしいのはそう言った急な天候変化なのだとか。


「とにかく確実に越えるためにも、早く進むよりも安全に進むことを第一に考えよう。 魔王城まではまだまだ遠いし、山登りでは体力の消耗が一番の敵だと俺は思う。」

「それにはオレは賛成だ。 戦う前から満身創痍なんて真っ平だぜ。」

「では決まりだな。 この辺りは魔物もいないようだ。 焚き火だけ残して全員で眠っても問題はなさそうだな。」

「ワシは念のため起きているぞ。 闇夜から襲ってくるのは魔物だけとは限らんからな。」


 そうしてアイルドさんだけを外に残して、私達はテントで眠りについたのだった。


「まさか山に登る前からお出ましとはね。」


 翌朝に私達が山へと踏み入れようとした際に、目の前で敵が文字通り立ち塞がった。 岩石の魔物で丸い岩が動いている感じだった。


「粉砕してやるぜ! 「岩砕拳」!」


 勢いよく飛び出したサイカさんが、技名と共に魔物に飛び込んだ。 魔物も応戦しようと岩で出来た手を伸ばすけれど、サイカさんの拳の前に粉砕されていった。


「おおー! あの人から貰ったブレスレットのお陰で、一撃であの魔物を倒せたぜ! 今までは一発で致命傷が限界だったからなぁ。」


 サイカさんは喜びを感じているようだ。 というかそれでも致命傷って・・・ サイカさんは元々そう言ったバトルスタイルだから岩石とかには滅法強いだろう。


「そのまま頼むサイカ。 俺の剣では切ることは出来ても分解することは出来ないからな。」

「よっしゃ! オレが全部やってやるぜ!」


 そうして岩石のような魔物は、サイカさんの素早さに全く追い付くことが出来ずに、サイカさんに粉砕されていった。


「ふぅ・・・あー、いい汗かいたぜ。」


 サイカさんは清々しい程に体を動かして、まさにやり遂げたと言った具合になっていた。


「・・・む。 今回倒した魔物だが、どうやら鉱物を落としたようだ。 見てくれ。 これは価値のありそうなものだろう。 持っておこう。」


 アイルドさんから渡された鉱石を入れて、私達は山を登ることにした。


「この山って遠目から見たら、下半分は森で上半分は岩肌が見えている状態でしたね。」

「元々は上の方まで木々が覆っていたらしいのだが、度重なる雨天により土砂崩れと化して、岩肌が出てしまったようだ。」


 獣道を行くのと岩肌をスレスレで行くのとどっちの方が険しいんだろう? 山を登ったことがない私には分からない。 そんなことを考えていたら、アイルドさんが歩みを止めた。


「どうしました? 敵ですか?」

「うむ。 だが敵はまだこちらに気が付いていない。」

「どこにいます?」

「あそこだ。」


 そう言って指差す方を見ると、確かに魔物がいた。 なにかの大きな果実のような魔物が集まっていた。 トマトみたいに見えるかな。


「こちらに気が付いていないのならば、このまま気配を消して通り抜けることも出来るが?」

「通り道にいるとなれば、見つかる可能性大だろう。」

「じゃあ倒すか? 2、3体なら奇襲は出来るぜ?」

「残った魔物がどう動くか分からないですね。 それに他の魔物も近くにいるかも。」


 私達が色々と話し合っていると、不意にマノさんが手を小さく挙げていた。


「あの・・・私の魔法なら、もしかしたら気付かれずに攻撃が出来ませんか? 遠距離からなら安全に攻撃は出来ます。」

「確かにそうだが・・・もし仮に敵に見つかってしまった場合、対応が遅れるかもしれないぞ。」

「あ、それなら私の魔法でカバーします。 そう言った類いの魔法も心得ていますので、マノさんの意見を聞いてあげられませんか?」


 私もマノさんに肩入れをする。 元々後衛職で今の現状でほとんど出番の無い私達にとっても色々と戦闘経験は積んでおかなければならないと、今後不安になってしまう。 そう言った意味合いでも今回はマノさんと共同戦線をしておきたいのだ。


「いいんじゃねぇか? たまには花持たせてやるのもよ。」


 声を出したのはサイカさん。 その言葉にユウシさんもアイルドさんも互いを見た後に頷いた。


「分かった。 もし外したとしても我々がすぐに飛び出せるようにしよう。」

「2人とも、敵が近付いてきた時にはすぐに逃げれるようにするんだ。」

「はい。」

「分かりました。」


 そうして私とマノさんで敵が見えるか見えないかの位置についた。 ここからなら攻撃が届くということで、そのまま木の影に隠れる。


「炎魔法ではこの辺り一帯まで燃えてしまいますので、土属性の魔法で押し潰す方法で行きます。 多少グロテスクにはなりますが。」

「マノさんがそれでいいならいいですよ。 それなら私も・・・」


 私は白魔導書を開いて、使用する魔法のページまで本をめくって、そしてマノさんに向かって唱える。


「「汝の気配は風となりて スターロ」。」


 そう唱えると目の前にいるはずのマノさんが、まるでいないかのように気配を無くした。


「マノさん。」


 私は一声かけてマノさんは理解したように杖を掲げる。


「「降り注ぐは大地からの一歩 アースタップ」!」


 マノさんが呪文を唱えた。 すると敵の頭上に影が出来上がったと思ったら、その場所に「バンッ!」という音と共に降り注いだ土の塊が叩かれて、その後に崩れていった。 その場所には魔物が落としたであろう破片のみが残っていた。


「これで、終わり、ですね。」

「よし。 これで魔物もいなくなって通れるようになったぞ。」

「流石マノ殿だ。 あれだけいた魔物を一撃で仕留めたぞ。」

「勇者一行のパーティーになれるくらいだ! これくらいは出来ないとな!」

「皆さん、ありがとうございます。 ホノカさんも。」

「私はなにもしてないわ。 マノさんの力を最大限に発揮しただけだから。」


 この謙遜はあながち間違ってないと思う。 今回の功績はマノさんの魔法なのだから。


 そして魔物がいなくなったので改めて山に向かって歩くことにしたのだった。

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