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流れ着いた少年

「うーん、困ったねぇ・・・ この集落にも医者はいるが、ここまで酷いというか、どこから手を付ければいいやら・・・」

「どうかなされたのですか?」


 先程呟いた人に、そう私は質問をした。


「おお、勇者一行の。 実はどこから来たのか、少年が倒れていましてね。 手を施したいのですが、何分衰弱しきっている部分があって、怪我を見るべきか、腹を満たしてやるべきか、寝かせてやるべきなのか。 とにかくすぐに手を加えてやらないと、このままでは・・・と言った状態で・・・」

「すみません、通していただけますか?」


 どんな状態か分からないにしろ、私は動いていた。 そしてその中心点に着くと、そこには衣服も体もボロボロになって、這いつくばるように体を動かしている少年の姿があった。


「う、うぅ・・・」


 少年がどこからやって来たのか、どこへ向かおうとしているのか、話を聞こうにもこれでは確かに聞くことすら出来ないだろう。


「まずは怪我の措置からよね。 今回は使用することをお許し下さい。」


 そう誰かに対する断りを言った後に、私は少年の体に触れる。 見るだけでもボロボロだったけれど、ここに来るまでに魔物に襲われたのか、かなり痛々しい傷もある。 体力も限界に近いことだろう。 とにかくまずは傷の治療が先だと思った。


「「深き傷への優しき癒し ヒルルール」。」


 今詠唱した治癒魔法は「ヒルール」の上位互換にあたる魔法。 でもこの魔法は今の旅ではまだ使わなくても大丈夫なのだけれど、今回のように傷の度合いが酷い場合に使うようにしている。


 私自身も無駄に魔法の無駄撃ちはしない。 私の中の勝手な解釈もあるけれど、怪我の状態や症状に合っていないものを処方したところで、使われた本人に効果が出ないか、使用者の魔法使いが疲れやすくなるだけ。 適切に魔法や処方を出来てこそ、本当の治療だと思う。


「う・・・う? あれ? 痛みが・・・」


 倒れていた少年は何が起こったのか分からないと言う状態になっているけれど、そんな状態で次に起きるのは


「ぎゅるるるるるる」


 その小さな体からどうやって出したのか、お腹の虫が盛大に鳴った。


「すみません、彼を食べ物のある店に連れていきたいのですが。」

「そうだな。 ついてきな。 いい飯屋を紹介しよう。」


 そう言って1人の男性の後ろを歩く。 少年も状況は読めていないものの、とりあえず私の後ろに来るのは分かった。


「なるほど。 そのようなことがあったのですね。」


 私一人で出ていったので、ユウシさん達には後からの説明になったけれど、完全に拒絶するようではなかったようなので良かったと、心から思った。 どのみち食事は取る予定だったので、一緒に集まって貰った。 助けた少年はというと、運ばれてきた料理に最初は驚きを隠せてはいなかったものの、物凄い勢いで食べていた。


「そんなに急いで食べなくても、私達は取りませんよ。」


 マノさんがその少年が食べているのを補助していた。 行儀が悪いと言うよりは、目の前の食べ物に夢中で自分が汚れていることに気がついていない様子だった。


「にしてもこいつ、どっから来たんだ? オレ達が来た道からでも、逆の道からでも身一つでこの場所に来るには相当無茶しないと行けないはずだが?」


 サイカさんがそう疑問に思うのも無理はない。 どちらの道でも子供一人で、しかも見る限り装備もなにもしていない状態なので、ここに来るまで死んでいない方が奇跡に近い。


「ふむ。 落ち着きを取り戻してから話を聞くとしよう。」


 アイルドさんの言葉に少年は反応したのか、体が少しだけ震えたように見えた。 もしかして怯えてる?


「ねえ君。 自分の名前は分かるかな?」


 もしかしたら記憶喪失があるかもしれないので、まずは自分の事を語って貰うところから始めてみよう。


「・・・名前は・・・コラロ・・・」

「コラロって言うのね。 どうしてここに来たのかな? なんでもいいの、教えてくれる?」

「・・・なにかから、逃げてた気がする。 でも、それがなんなのか、思い出せない。」

「そっか。 怖いものから逃げていたのかもね。 行く場所はある?」

「・・・無い。 どこに行くのか、分からない。」


 このコラロという少年、記憶が断片的で、尚且つ目的もハッキリとは思い出せていないようだ。 でもあれだけボロボロだったということは、逃げてきたのは魔物に襲われたからかもしれない。


「コラロ。 俺達がこの集落の人達に話を付けて、ここで暮らさせて貰えないか検討をつけてもらおう。」

「出来るのか? そんなこと?」

「それはやってみないと分からない。 だけど君のような子供を、危険に晒し続ける訳にも行かないだろう。 集落の人も分かってくれるはずだ。」


 ユウシさんの言う通り、集落の人達だって、コラロの姿は見たはずだ。 ならば多少たりともなにかをしてはくれるはずだ。


「それならオレが行ってくるぜ。 偉い奴じゃなくてもそれなりに集まるだろうしな。」


 そう言ってサイカさんがお店を出ていく。 多分コラロの反応からしてサイカさんは面倒が見れないと思ったのだろう。 自分に不向きなことはしないのが一番である。


「しかしここまで彼を追い詰めたのはなんなのだろうか? 我々にとってはこの辺り一帯の魔物はさほど強くはないと感じるが、丸腰の彼なら・・・」

「でも魔物も、ここまで弱っている彼を、そのままにしたとは思えない、です。 勿論魔物が人を食べたとは今は聞いていないですけれど。」


 ユウシさんの疑問とマノさんの疑問がせめぎ合う。 私としてはコラロの体力の消耗もそうだが、そもそもどこからやって来たのかが焦点になる気がする。 私達の方から来たとするならばどこかで会っているだろうし、逆から来るならばそれでもここまでボロボロなのはちょっと不憫だ。 色々と訳ありな部分が見え隠れしているなと思っていると


「おい! 来てくれ! そいつを寄越せって言ってくる奴らが現れた!」


 勢いよく戻ってきたサイカさんがそう言った。 そいつってコラロの事? 彼を連れてサイカさんが呼ばれた場所へと急ぐ。 そこにはここの集落の人達と、2人の男女がそこにはいた。 なにやら切羽詰まったような感じだった。


「あんたらの説明じゃ分からないんだよ。 ここにだって子供はいるんだ。 もっと具体的に言ってくれないと。」

「だからええっと・・・そう! 髪の毛が尖っているんだ。 あいつは髪を洗うのを嫌うから、ボサボサで大変なんだよ。」

「それと白っぽい服とズボンをしていたわ。」

「そうかい・・・さてねぇ。 そんな子供見たかなぁ?」


 男女の問い掛けに集落の人達はとぼけた様子を見せる。 男女の様子は焦っているようにも見えた。 コラロが帰ってこないことに焦っているのか、それとも・・・


「あ! あの子ですよ! やっぱりこの集落に流れ着いてたんだな!」


 男の方が私の後ろにいるコラロを見つけるとすぐに声を張り上げた。 普通ならここで感動の親子の再開、となるはずだが、コラロは私の服を掴んだままだ。 もしかして、帰りたくない? となるとこの子の置かれている状況が見えてきた。 私は彼を隠すように彼らの前に立った。


「ああ、すみません。 その子は私達がちゃんと見ますので・・・」

「貴方達、本当にこの子の親ですか?」


 私は目の前の男女にそう質問した。 すると2人はピクリと体が反応した後に、すぐに切り返しの言葉を出してきた。


「ええ、そうですよ。 面倒を見てもらって感謝しております。 ですので後は私達の方で面倒は見ますので・・・」

「・・・すみませんが、貴方達にこの子を返す訳にはいかない理由が出来まして。 親だどうのと言うのも大分怪しいですが、面倒を見ると言っている割には随分と()()()()()を為さっているようで。」


 私の言葉にみんなが驚きの目を向けてきた。


「ど、どういう事でしょうか? 乱暴な教育とは一体・・・」

「この子が怯えた時に違和感を感じたので、言ってみただけなのですが・・・その反応からして少なからず彼に教育とは欠けはなれたなにかをしているようですね?」

「ば、馬鹿言っちゃいけないさ。 それにそんなことを言われても、根拠が無いんじゃ冤罪と同じだぞ?」


 まぁこっちだって探偵みたいなことは出来ないし、私の勘違いと言うのもある。 だからこそ私はコラロに目を向けた。


「ねぇコラロ。 本当はコラロ自身が思い出して、声を出して欲しかったから使わなかったんだけど、あなたが構わないのなら、私に記憶を見せて貰える?」


 コラロに声をかけると、そのまま「コクリ」と頭を縦に振ってくれた。 それを見た私はコラロの頭に手を乗せる。


「「見えざる過去の記憶の再演 メモリバ」。」


 そう唱えると私の脳裏にコラロの記憶が映し出される。 そこで見えたのは男女による虐待される姿だった。 思った通りとも言えるけど、私だけ見てもしょうがないので、私はコラロに乗せている手とは逆の手で、別の呪文を唱える。


「「我が視野を投影せよ ミバー」。 「記憶を甦らせよ リプライン 」。」


 そして私の手のひらにコラロの光景を見させると、周りにいた人達(ユウシさん達も含めて)その男女に向かって、軽蔑の眼差しを出した。


「な、なんだよ・・・なんでこんなのが見せられてるんだよ!」

「少なくともお前達に人の心が無いことは分かった。」


 若い人がそう言うと、みんなで私の後ろにいるコラロを守るように立ち塞がった。


「どこの場所から来たかは知らないが、ここにあんたらの居場所はねぇ。 日が高い内に元居た場所に帰りな。 命は俺達は見逃してやるが、この子とはもう会えないと思え。」

「な、なんだってんだよ! くそ!」

「あんた、行こ。 無理して取り戻す必要がないならそれでいいじゃない。」


 そうして男女は居心地悪く、その場を去ったのだった。

こうやって虐待児童を助ける話を1話だけで終わらせてしまうのはどうかと思ったのですが、ストーリー的には繋ぎなのでそこまでの繋がりは無くてもいいというか・・・


トラブルシューティングも話し次第ですかね。

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