次なる場所は集落
前回はユウシのちょっとした成長を遂げるお話でした。
視点はホノカに戻ります。
「やぁ!」
ユウシさんが残った最後の魔物も倒して、今回の戦闘は終わった。 ユウシさんと話した夜から数日経って、ユウシさんの剣の切れ味が上がったように見えた。 勿論常日頃から手入れをしているのは知っているけれど、それ以上に攻撃する時の気迫に勢いが付いたように、素人目だけれど見えた。
「よし! このまま次の街に行くぞ!」
そんなやる気に満ち溢れているように、ユウシさんは先頭のアイルドさんと共に前を歩いていった。
「ありゃなにか見つけたな? へへっ。 うちのリーダーがやる気になると、こっちも頑張れるってもんだぜ。 な、マノ。」
「はい。 ユウシさんが落ち込んでしまうと、私達も心配になってしまいますから。」
サイカさんもマノさんも、ユウシさんについてはどこか思うところがあったようだけれど、それが無くなったのは素直に嬉しいこと。 士気の向上は全体に及ぼすのだと、改めて知ったのだった。
そんなこんなで歩くこと数時間。 相変わらずの気温変化に苛まれつつも、なんとか次の街、というよりも今回は集落のような場所が見えてきた。
「前の街に比べて随分と建物の構造が低いような・・・」
「これだけ気温の変化が激しい場所だから、高層建造物を建てても人が住みにくいのだろう。 温度が下がれば空の温度も下がる。 空の方が温度は低くなるしな。 それにあれだけ高低差のある場所でもある。 下手に高層建造物を建てると大惨事になりかねんのだろう。」
アイルドさんの説明を受けて、確かにここから見える高さにあるということは、それだけ地表から流行れていることも考えられるのか。 家を1つ建てるだけでも大変なんだなと、こう言った建物を建てた知らない人に感謝していた。
「ようこそいらっしゃいました。 旅のお方・・・いや、勇者様御一行様。 このような荒れ果てた集落にまでお越しいただけるとは。 なにもない場所ではありますが、どうぞゆっくりしていってください。」
招かれるように集落の中へと案内された私達は集落の雰囲気を目で感じていた。
「なんと言うか、皆さん似たような格好をしていますね。」
通りかかる人々は皆、コートのような物を羽織っていた。 でもその下に着ているのは薄手のシャツなどが見受けられた。
「ここの気候は来るまでに体感されたでしょう。 この気候についてこれるものはおりませんゆえ、みな対策を行っている。 暑くなれば脱ぎ、寒くなれば着る。 それだけの事をしているだけです。」
そう案内を続ける人は喋った。 気候が変動しやすいこの場所ならではの、最も原始的な凌ぎ方だ。 それをみんな受け入れているだけなのだ。 なんら不思議なことでもなかった。
「とりあえず次の方針についてプランを出しておきたいと思う。」
宿屋に案内された後に併設している食事処にて、ユウシさんからテーブルに地図を広げられる。
「これ、この世界の地図ですか?」
「そうか。 ホノカさんはこちらの世界地図は初めて見ることになるのかな? そのマウスレッド殿が話していた具現化院という場所には地図は置いてなかったのですか?」
「いえ、置いてあったとは思いますが、何分自分の魔法の事を集中していて、地図を見るよりも魔法の練習をしていました。」
「なるほど、それなら仕方無いですね。」
ユウシさんは私の言葉に納得してくれた。 述べたことは全て事実で、具現化院ということもあってこの世界の地図を見ること位は容易だった。 けれどそれ以上に私は白魔法を覚えたかったのだ。 いつかあの街から出ることはほとんど考えていなかった事もあるけれど。
「マノが頑張ってくれているお陰で、我々は順調に魔王城へと歩みを進めている。 と言ってもまだ2つ目の集合地ではあるが。 そしてこれからについてなのだが、まずはホノカさんに知らせておきたい事実がある。」
知らせておきたい事実? そう言われながらユウシさんは地図を指差した。
「この地図は色がついていないが絵を描いているホノカさんなら大陸と海の区別はつきますね?」
「ええ。 でもこの地図って・・・」
「そう。 この世界はかなり陸続きになっているため、一見は旅をしやすく見える。 当然山や谷は存在するし、今回の場所のように気候も変化する。 そして我々の目指している魔王城のある場所は・・・」
地図上を指でなぞっていき、そして止まったところは地図の左端の島だった。
「ここは元々は無人島だったらしいのだけれど、魔王が降臨してからは、この島自体が魔王城になっている。 そしてこの魔王城への入り口は、この一本道のみ。 空や海からの侵入は、魔物がのさばっているため入れないからだ。」
「そしてそんな魔物達も、ここまで来ればかなり強くなっている、と。」
RPGにおいては当然の話をしているにすぎない。 だけどそんな魔物達が現実として襲ってくると考えると、太刀打ちどころかすぐにやられてしまうだろう。
「その話を踏まえた上で、我々には現時点で2つの道しるべがある。」
ユウシさんはそう言って今度は指を右側に移動させた。
「今我々がいるのがここ。 「オダサ」の集落。 そこから北へ向かう登山ルートと、南に行く港街ルートがあるのだが。」
「我々は何度か旅をしたので、どちらにも行ったことがある。 では何故2つのルートがあることを説明するのか。 1つは魔王城への到着日時の変化にある。」
「到着日時の変化。」
ユウシさんの進行ルートの説明を聞いた後に、アイルドさんから補足の説明を受ける。 時間がかかればそれだけ平和が訪れるのが遅くなる。 勇者一行としてはなるべく早く討伐をして欲しいところだろう。 あの王子達がどう思っているのかは不明だけれど。
「地図では分かりにくいのですが、港街を抜ける方が、魔王城へは早く着くことが出来ます。 しかしこちらの道は天候が変わりやすいんです。」
「で、こっちの登山ルートは、道自体は険しいが、それを除けば魔物も今のレベルなら倒せる奴らばかりだ。 天候が味方すれば山は案外すぐに越えられる。」
マノさんとサイカさんがそれぞれの道の説明をしてくれる。 どちらの道も優劣が激しいような場所で、楽な旅路では無いだろうとは思っている。
「しかし、だ。 ここからの次の目的地はここになる。」
アイルドさんが指で示したのは、南の道の延長線上だった。
「え? これって・・・」
「そうだ。 目的地は一緒なのだ。 だから回り道をしても近道をしても同じ所に辿り着く。 そしてここからが2つ目の理由になる。」
そう言ってみんなが私の方を見る。
「この道筋を決めるのはホノカ殿に決めて欲しいのだ。」
「わ、私が、ですか?」
「どっちもオレ達は行ってるからな。 行きたい方に行かせようって話だよ。 そう難しく考える必要は無いぜ。 さっきの説明でどっちに行きたいか決めればいいんだよ。」
サイカさんはそう言ってくる。 責任がほとんど無いのは気が楽なのだが果たしてどちらが次の旅に役に立つか・・・
「まあそう急かさなくてもいいじゃないか。 どっちみちこの集落で一時的に過ごすのだから、出る前までに決めて貰えばいい。 そうじゃないか?」
ユウシさんのまとめでその話し合いは終息を迎えた。 私が優柔不断なのか、ユウシさんがみんなをまとめるのが上手いのか。 とにかくその場は終わり、私は少しだけ集落を歩くことにした。
前のコーナルの街よりは小さめの場所ではあるけれど、場所や高低差の都合か、家はそれなりに多く見える。 とはいえなにもないわけではないだろうと思いつつ、私は水辺も探していた。 これだけの気候だったとしても、水源とかはどこかにあるはずだ。
そう思っていた矢先に、ここの集落の人達が集まっているのが見えた。 何事だろうと、私もその場によってみることにした。




