表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/58

剣の勇者の戦い方

今回は視点を変えて、剣使いの勇者「ユウシ」の視点をお送りします

 今日の旅も終わりを向かえようとしていた時に、人形の魔物が俺達の道を塞いだ。 しかもそれなりの数を相手にすることになる。


「マノ! ホノカさん! 支援をお願いする!」

「「分かりました!」」

「サイカ! 右側は任せたぞ!」

「OKだぜ!」

「魔法使いの2人はワシに任せて、敵に集中するんだ!」


 そうして人形の魔物との複数体戦闘が始まる。 魔物達もこちらに向かって走ってくるが、数は多くても動きは単調。 難しく考える必要が無くて結構かな。


「やぁ!」


 人形の魔物に向かって最初の一筋。 肩から腰に向かって斬り捨てたが、魔物だからか人形だからか体液が流れずそのまま消失していく。 しかし数が多いため休んでもいられない。 マノの魔法攻撃も最初の頃に比べれば随分と強くなった。 だが数が数なために連発しなければならなくなる。 魔力が尽きる前に方を着けなければならない。


「一気に行きます! 「我が炎は飛躍する刃になりて、道を塞ぐ敵を灰と化せ ブレードファイア」!」


 そう唱えたマノの前に炎が、大きな真空刃のように飛んでいった。 アイルドさんは詠唱ギリギリまでマノの前にいることで敵に悟らせないようにした。 そしてアイルドさんが避けた次の瞬間に人形の魔物が一斉に焼け始めた。


「よっしゃ! これで全滅だ!」

「・・・いや、まだだ!」


 俺は空を見上げた。 そこには前の同胞がやられていくのを見て、こちらに攻撃として飛び込んでくるのが見えた。

 俺は下から上に剣を振るが、魔物の方が攻撃が速い。


「くっ・・・このままでは俺の方がやられる・・・!」

「「動力に加速を クイック」!」


 ホノカさんが何かを唱えた後に、気が付けば敵を斬り倒していた。 最悪刺し違えてでも、と思っていたのに、何故か俺が敵を倒すことが出来た。


「お疲れだなユウシ。 もう少し歩いてキャンプを建てよう。 急ぐことにしよう。」

「あ、あぁ・・・」


 アイルドさんの言葉に歩みを進める。 が、自分の心は落ち着かなかった。


「今日はユウシが最初だったな。 時間になったら見張り番を代わるのを忘れないようにな。 時々夢中になって時間を忘れるからな。」

「・・・あぁ。」


 アイルドさんの注意も右から左へ抜けるように聞いてから、自分の今までで最高の業物を持って、火の元から少し離れたところで素振りを繰り返す。


「ふっ! はぁ!」


 俺は前の世界では剣道部だった。 剣の重みや自分の身を守るものが剣道とは全く違うが、面、胴、小手と、剣道の基本の型を派生させて、更に攻撃を重くする。


「はっ!」


 面から一気に剣を振り下ろす。 これが俺にとっての一番の攻撃。 剣に何の特徴も付与しない重たい一撃だ。


 だが今回はそんな自分の剣はまだまだ未熟。 ホノカさんの支援魔法が無ければ、やられずとも数日は傷を抱えながらの旅となっていた。 感謝の反面自分の力量の限界を感じたのかもしれない。


「・・・これではまだまだだ。 魔王を倒すには、これを越えるような一撃を繰り出せるようにならなければいけない。 魔法に頼らない、属性に頼らない、この剣の切れ味1つで圧倒的な力を出せる程に。」


 そのためにこの世界で最初の敗北を向かえた後からこうして鍛練を続けている。 みんなには内緒に敢えてしていない。 何故ならみんなもみんなで修行は常にし続けているから。 それはホノカさんも同じこと。


「・・・っ! 「雷刃落とし」!」


 そう叫ぶと剣は突然雷を纏って光を出す。 そしてその刃を振り下ろすと、雷鳴と共に強烈な一撃が辺りに響いた。


 俺もこの世界に召喚されて最初こそファンタジーな世界だったし、なにより勇者になれたことを心から喜んだ。 そして旅に出てこう言ったRPGの勇者がやっていた攻撃を色々と試したものだ。 だがそんな傲慢さもあって、最初の敗北を知った時の愚者の自分が見えて身の程を弁えた。 自分にはこう言った属性攻撃も出来る。 場面に応じて使いこなすことも今では容易い。 だが、これは自分の実力ではないことも知ってしまった。


「・・・付与された力は、時に己の無力さを実感させられるな。」


 自虐的にそう呟いた時、何かの気配を察知した。 敵かと身を構えるが後ろはテントと焚き火があがっているだけだし、その気配に殺気は感じない。 振り向いて確認すると、テントからホノカさんが出てきたのが見えた。


「どうされましたホノカさん? まだ見張りの時間では無いですよ? それとも大きな音で起こしてしまいましたか?」

「ああ、いえ、そう言うわけでは・・・ただ普通に寝付けないだけでして。」


 ホノカさんは照れ臭そうにそう話した。 だけど俺にはそうは見えなかった。 今回の戦闘ではホノカさんの助力も微量だがあった。 しかしそんなホノカさんは体調どころか表情すら崩していない。 それにただ寝付けないだけど起きてくるような人ではないはずだと、この旅の中で知ったことだ。 そこで俺は聞いてみることにした。


「そうだったのですか。 そう言えば白魔法の中には相手を眠らせる魔法があるとか無いとか。 それを自分にお使いにならないので?」

「確かにあるにはあるんですよ。 逆に目を覚ます魔法もあるのですが・・・ 私はあまり使わないですね。」

「どうして?」


「そういった精神干渉系の魔法は、掛けた人物の身体に影響が出るんです。 特に脳はデリケートですから、多用すれば元には戻れないかもしれません。 中毒以上に危険な状態になりやすいんです。 だから多用はしません。 皆さんにも余程の事が無い限りは使いませんので。」


 自分は大いに間違っていた。 彼女は「ただ」白魔法を使うのではない。 使用用途を弁えて使っていたのだ。 実際に彼女が使ってくれた加速魔法だって、剣を振る一瞬しか使われなかった。 もっと早くから使えば戦闘を速く終わらせられたのに、だ。


 そんな邪にも近い考えが浮かんだ俺はその想いを叩き割ろうと再度手に持っている業物を無我夢中に近い気持ちで振った。 これ以上言ってしまえば、ホノカさんなりの気遣いややり方を否定しそうだったから。


「ユウシさんって、剣はどのくらい修行されていたのですか?」

「実際の剣を振ったのはこの世界に来てからですが、俺は元々は剣道部だったので、ある程度は出来るんですよ。 実物の重さに最初は苦労しましたがね。」

「その、実際の剣を振ったのは、何時になるんですか?」

「・・・自分なりの感覚ではかれこれ7年は経ってると思ってます。」


 正確な年月が分からないが、そのくらいになるのではないかと思う。 それが分かる理由は、この世界に四季があったから。 それが無ければ本当にどのくらいになっているのか分からなかっただろう。


 そしてその言葉を言った後にホノカさんは少し重苦しい表情をしていた。 この世界に来た時間がまだ浅い彼女にとっては、途方もない時だと感じるだろうか? しかし事実である以上包み隠す気は無い。 隠す気にならなかった。 ホノカさんがパーティーに入ったからでは無く、本当になんとなくだが。


「いい剣さばきをしていますね。」


 ホノカさんが空気が悪くなる前に話題を変えた。 自分の剣さばきを見て、そう思ったらしい。 実際何度も振っていたせいか、こうして誉められるのはあまり無かったように感じる。


「ありがとうございます。 でもこれだけじゃ駄目なんだ。 夕方のあの戦いで、ホノカさんから支援をもらわなければ、最悪足止めを食らっていたかもしれない。 ここの敵でそんなことでは、魔王の討伐なんて夢のまた夢になってしまう。 そうならないように常日頃から鍛練をしています。」


 道術を習っている以上、それに反する事はしない。 自分が少しでも強くなれれば、勇者としてもみんなに負担にならずにすむかもしれない。 そう思いながら一つ一つの振りに力を込める。


「・・・あの、差し出がましい事を言ってもいいですか?」

「なんです?」

「ユウシさんは上から剣を振り下ろす攻撃をよくしていますよね?」

「ああ。 それが俺の最も高い攻撃だからな。」

「でもユウシさん、横に構えて振る方が多分力が入りやすいと思いますよ?」

「・・・なんだって?」


 ホノカさんの一言に剣を振るのを止めて話を聞いてみることにした。


「ほら、上から下に振り下ろすのって、1回剣を上に挙げなければいけないじゃないですか。」

「上段の構えとして、剣道では面を打ちやすくなる。 その代わり相手にはバレやすいという弱点はあるがな。」

「それで素振りを見ていたんですけど、横に薙ぎ払ったり、下から上に斬り上げる攻撃の方が、重心がしっかりしているように見えたので・・・」


 ホノカさんは俺の素振りを数回見せただけで、こんなことを言ってきた。 確かに上に挙げてからでは行動が一回多いように感じる。 もしかしたらこれが俺の伸び悩んでいた原因・・・なのか?


「・・・ふあぁ。」

「あ、すみません付き合わせてしまって。」

「いえ、私もようやく眠気が来たのですが、そろそろ見張りをしないとなと思いまして。 今日はこのまま交代しますよ。」

「そうですか。 それならよろしくお願いいたします。」


 そうして俺はテントの中に入りシラフを使って眠る事にした。 ホノカさんが言ったことを忘れないように、明日は最初に実践で感じてみようと思った。


「ふっ!」


 顔がチューリップで根っこで歩いている魔物に対して、俺は薙ぐように剣を振るう。 魔物との戦闘は朝から数えて3回程だが、それても疲れがほとんど見られなかった。 昨日まではバテそうになっていたのに、だ。


 おそらくは重心が安定しているので、無駄な力を使うこと無く敵を倒せているのだと解釈した。


「ユウシ。 なんだか調子がいいようだな。」

「昨日アドバイスを貰いましたから。」


 これで俺は今しばらくはこの戦い方にして、魔王討伐までに、形を作りたいと思った。 


 第三者視点というのは、時に自分が分からなくかった部分まで見てくれる人の事を言う。 これで俺も、1つの成長を遂げたと思えば、ホノカさんから教えて貰ったことは、とても有意義になったと言えるだろう。


「これで少しは、旅が楽になるかな。」

今まで強いと思っていたもの達の新たなる進化を見ていただければなと思います。


今後他のメンバーも旅の中で話として出していこうと思っていますので、よろしくお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ