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新たなる気候

 それから更に1日を過ごした私達は次なる目的の街へと向かうためコーナルを後にした。


「色々と詰め込みすぎたんじゃないか?」


 サイカさんが言うように、旅の準備としてかなりの品を仕入れたと思う。 とは言っても私達の持っている金額に比べたら、ちょっと奮発しても余程でない限り困らない金額を持っているし、対策を練ることで一杯で、魔物がお金を落としているのを忘れていた。 まあそれは街の人達にあげたけど。


「仕方あるまい。 次の場所に向かう道中は気候が不安定で、雨雲を作りやすいと言っていた。 つまり当初の予定どおりに目的地に着くとは限らない。 ましてや足止めすら食らうことになるだろう。 前の世界にもあったであろう? 「備えあれば憂いなし」という言葉を。」

「それは知ってるし、あんたらがそれで良いなら良いけどよぉ・・・」


 そう言うとサイカさんは今度は私の方を見ながら話す。


「あんたはそれでいいのか? オレ達の仲間になることと、自分がパシリ扱いされるのは、訳が違うんだからな。 嫌なら嫌とハッキリ言ってくれた方が楽だぜ?」


 サイカさんは今の私の立場について言っているようだ。 だけどその事については、私の中で既に決めていることがある。


「大丈夫ですよサイカさん。 私がやりたくてやっていることです。 皆さんのお役に立てれるのならば、これぐらいなら問題ないです。 それに自分の限界も知る機会にもなりますし。 これだけ入れてもまだまだ入りそうですし、他の魔法も撃てます。」

「本当に凄いですホノカさん。 私よりもずっとずっと。」


 私の言い分にマノさんが尊敬するように声を出していた。 自分の魔法を無下にしていないし、むしろ誇りにすら思えるようにならなければと、この白の魔導書に申し訳が立たなくなる。


「あんたがそれでいいならいいが・・・もしなんか不満があったらオレじゃなくてもいいから誰かには言えよ? オレ達は仲間なんだからよ。」


 サイカさんは口は男勝りだけど、心配をしてくれているのは分かっている。 その想いにもちゃんと答えてあげなければと思った。


 コーナルの街を出てから半日歩いたところで今回はキャンプをすることになった。 夜でもある程度は進むけれど、魔物はもちろん、普通の野良の獣達も活発化しやすい。 見張りは常に変わるので、休息は大事なのだそう。


 それでも寝るには時間が早すぎるのもあるので、そう言った時間はみなそれぞれにやることを設けていた。 ユウシさんは剣の手入れ。 アイルドさんは精神統一として瞑想。 サイカさんは薪割りも兼ねて身体を動かしていた。


 武器としてはあまり手入れの必要の無いマノさんは、地図を見ながら現在地の把握と、どれだけの期間で街に着けるかの採寸を行っていた。 こういった作業は彼女の得意分野らしい。


 そんな中で私はなにをしているのかと言えば、自前のスケッチブックで絵を描いていた。 もちろんこれは趣味の延長ではなくれっきとした理由がある。 私が描いているのは道中で出会った魔物の絵だ。 この世界の魔物の資料は多くない。 理由は明白で、それを伝える手段が乏しいし、なにより魔物の資料を保管しているのは具現化院がほとんどで、その具現化院ですら未知なる魔物が存在するからである。


 それを聞いた私は、この旅の魔王討伐以外での自分のやるべきことの1つとして「魔物の資料制作」に一躍買おうと思ったのだ。 私は絵も描けるし、戦闘は出来ないが魔物の特徴を観察することが出来る。 だからこそ私は魔物の特徴を事細かに書き記し、攻撃の仕方や弱点などを付け加えている。


 そしてその書いた魔物の絵は、スケッチブックから切り離して、別のところにて「ストレジ」にしまう。 スケッチブックの絵を消すのに使っている魔法「イレイサー」は便利だけど、スケッチブック「全面」に効果が発生するため、折角書いたのに消えてしまう、という事態に陥りやすいので、別の場所に移して隔離すればそれは消えない。


「今日の敵はモグラみたいな敵とブルーベリーのような敵の2体。 モグラの方はサイカさんの爪攻撃と渡り合ってたから素早さはかなりあるかな。 爪攻撃は引っ掻きが多かったけど、水の攻撃は弱かったから、そういった攻撃や魔法を使えば楽に勝てる、と。 ブルーベリーは8体が集まったような集合体。 攻撃する度に分裂して最後の1体まで倒れない。 魔法でも1体1体が素材とかを落とすから、まとまって倒すよりもある程度分裂させて全体攻撃で倒すのが報酬を増やす上では望ましい。」


 そう書き記して私はページを破く。 そして「ストレジ」を使って、魔物の絵を保管している場所へと入れる。 これで私の夜の行動は終わりで、テントの中へと入る。 今回からは私も見張り番に加わったけれど、今は明朝からが私の番になっている。 理由としては見張り番に慣れて貰うこと、例え敵が出てきたとしても誰かを起こすことが出来るようにすれば、戦闘自体は出来るからなのだそうだ。 慣れてくれば深夜帯でも見張り番をすることになりそうだけど、今はその好意に甘えさせてもらって、眠りにつくことにした。


「なんだか急に寒くなったような気がします。」


 翌日もそのまま旅を続けるために歩いていたところ、何故か朝起きた時よりも気温が下がっているような気がした。 前のように鬱蒼とした森でも無ければ、風もそこまでは強く吹いていない。 それなのにローブ越しからでも分かるくらいに寒いのだ。


「そのためにコーナルで防寒着を買っておいたのだよ。 ホノカ殿。 出しては貰えぬか?」

「あ、は、はい。」


 確かに前の街でやたらと服を買っていくなぁとは思っていたけれど、この寒さに耐えるためだったんだ。 私は「ストレジ」の中で服が収納されている空間へ意識を集中させてから、「ストレジ」を唱えて、人数分よりも少し多めに買ってあった防寒着達を無造作に出した。 


 サイズはバラバラ、というよりも本当に無造作に買っていたので、サイズが合う合わないはお構い無しな感じだった。 デザインとかも統一感は無い。


「これで寒さは凌げますね。」

「ああ。 だがその分我々の動きが鈍くなりやすい。 敵との遭遇はなるべく避けたいところだが・・・道中はそうも言えない。 確実に進むほか無いから、気を改めて引き締めていこう。」


 みんなの想いは1つになり、私達は歩みを再開した。


 そうして歩いているうちに先頭で風避けにもなってくれているアイルドさんが何かを見つけたようだ。


「人がいるな。 しゃがみこんでいる。」


 後ろから覗き込むと確かに髪の長い人がしゃがみこんでいるのが確かに見えた。 すぐにでもかけよって行こうとしたけれどユウシさんが制止させた。 どういうことかと様子を見てから判断をするようだ。


「そこなお方。 このような場所でしゃがみこんで、どうかしたのでしょうか?」


 アイルドさんはしゃがみこんでいる人物に声をかける。 日本語としては不格好な気もするけれど、ここは異世界だし、喋り方なんて伝われば良い気がする。


「ああ、急に身体が冷たくなってきたのです。 身体を暖めるものが欲しいです。」

「ふむ。 それはこちらから提供しよう。 他に何か欲しいものはあるか?」

「そうですね。 ・・・ならば・・・あなたのあたタカイ血ヲ、イタダキ・・・タイデスネェェェェ!」


 しゃがみこんでいたはずのその人の顔は、人ではなかった。 狼のようなそれはアイルドさんに襲いかかろうとする。


「アイルドさん!」


 そう声をかけるけれど、アイルドさんはその襲いかかってくる狼顔に自慢の盾で思いっきりぶん殴った。


「グガァァァァ!!」

「ひゅぅ! アイルドのおっさんやるぅ!」

「その程度で我々の目を欺けると思うな。 魔物に知能が無いとは思ってはおらんが、相手を見定める程の力はこの辺りの魔物にはまだ無いようだな。」


 魔物に対して喋っているアイルドさんだけど、魔物の方は痛みで苦悩の表情を見せている。 でも諦めるような様子はなく、再度攻撃をし始めた。


「正体が魔物ならば気を配る必要はないな! 他の魔物が現れる前に倒してこの場を離れる!」

「支援を行います。」

「私も魔法で攻撃をします。」

「行くぜ!」


 アイルドさんの一撃から始まったこの攻撃。 元々敵は一匹だけだったらしく、数の暴力により魔物は鎮圧された。


「旅人に擬態する魔物か・・・こういったのはちゃんと後世に伝えられるようにしないと。」


 魔物はすぐには消えないけれど、それを描いて残すのには記憶だけで辿っては間違った情報になるかもしれない。 特に今回のように、構想が複雑な魔物だと尚更。 だから私は出来うる限りのスケッチをして、その後にみんなを追いかけることにした。


 魔物は消えるけど倒されれば何かしらの信号のようなもので近くに来るらしい。 魔物を倒すだけでも大変だなと、この旅で思ったことの1つだった。

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