魔法って
家族みんなが揃ったと言うことで、何気なく座っていたのですぐに席を譲ろうとしたらガネッシュさんはどこからともなく椅子を生成したので、やっぱり魔法の世界なんだなって改めて感心しつつ、カレトさんの料理を堪能した。
味覚に変化がないか心配はしたけれど、特に問題なく食べられたのでホッとした。
料理も食べ終わり、本当ならテレビとか見てる時間だけれど、この世界にはそんな便利なものは無いことに気が付いた私は、こう疑問を聞くことにした。
「あの、そもそも魔法ってどうやったら習得できるんですか?」
今この場にはガネッシュさんとマウスレッドさんがいる。 カレトさんはデザートようになにか作ってるみたいだし、ルビルタさんは後片付けをしているので、自然とこういう形で聞くことになった。
「基本的には「習得」という言い方はあまり正しくない。 魔法使いというのは「素質」によって魔法の有無を決める。 魔力と一括りで表されても、性質は異なる。 例えば水魔法が適性の魔法使いが火の魔法を使おうとするとどうなるか。 撃つことは出来るが、適性ではないので威力はガタリと落ち、魔力の消費量も凄まじい。 とはいえ最初のうちは自分がどんな魔法の適性なのかを見るために、色んな属性の魔法を撃つんだがね。」
ガネッシュさんが私の質問に対して丁寧に答えてくれた。 説明上手な人だなとなんなけなしに思った。
「じゃあ私もどんな魔法が使えるのか今は分からないって事ですね。」
「そういうことになる。 しかしちゃんとした知識と魔力の動力を操ることが出来れば、適性以外での魔法も撃てるようになる。 その為に杖などの媒体を利用したり、書物を読んだりすることもある。」
「あ、やっぱり魔導書みたいなものはあるのですね?」
「魔導書と言っても様々なものがあり、直接脳内に干渉して使えるようになるものから年月をかけなければ放つことすら出来ない魔法が記されている物もあります。 それは魔導書を書いた作者の意思にも反映し、「使う」のではなく「使われる」という事例もあります。 一概に魔導書が正しいとは言いきれないのです。」
魔導書で一気に放てるようになるよりも、地道に撃てるようになる方が肉体的にも精神的にも負担にはならないのだろうと、私なりに解釈をした。 多分もっと知らなきゃいけないことがあるから、こんなことで分からないという訳にもいかない。
「でも魔導書なんて、そんな本屋にポンと置かれてるものでもないしねぇ。 禁術系じゃ無ければ、基本は魔導書物庫に保管されてるし。」
洗い物から帰ってきたルビルタさんからそんな言葉もとんできた。 魔導書って言っても、そう簡単には覚えられなさそうだ。 ならば別の話題にしよう。
「あの、属性って、具体的にはなにがあるんですか?」
これも重要な事で、私の属性がなにに適しているのかが、気になってきたから。
「基本は6属性で、火、水、光、風、闇、土があるのだけれど、これはあくまでも基本属性によるものだから、魔法を深めれば、もっと様々な形を出せるようになるんだ。」
ふーむ。属性としてはよく見かけるあれかな? オタク知識として、基本的に属性ってどうやって決めてるんだろう? って気になったことがあって調べてみた「四大元素」から来てることが多いってことが分かったの。 そこに光と闇が入るのが王道パターンなんだとか。 この世界の魔法もそういうことらしい。
「私の魔法も闇属性の「召喚」から来たものだが、呼び出せるものが生物ではないので、私は「錬成」と呼んでいるよ。」
派生ってそういう形の派生なのね。 そう考えたら本当に魔法って奥が深そうな印象になる。
「じゃあ、その人のあった魔法を見つけるのも、また魔法使いにおいての人生とも言えるわけですね。」
「そういうことになりますね。」
「でも私は、ホノカさんの魔法適性はすぐに分かると思いますよ?」
そういってボールに入ったなにかを持ちながらリビングに戻ってきたカレトさんがそう答えた。
「適性って、感覚的に分かるものなのですか?」
「そう言ったのは天才型だけど、特徴や環境からある程度推測は出来るのよ。 あなたの魔法は「回復魔法」。 それに類似する魔法適性が一番になるのよ。」
「回復魔法に類似する魔法適性・・・」
「ピンとは来ていないようですね。 折角ですから明日から練習していきましょう。 色々と考えなければいけませんが、今はいいでしょうし。」
それでいいのかなと思いつつ、カレトさんが出したデザートを食べることにした。 あ、牛乳だけで作れるアレみたい。
「私・・・この世界で捨てられないように頑張らないと・・・」
余っていたらしい部屋に、ガネッシュさんが用意してくれた簡易的なベッド(改めて用意すると言われて流石に断った。)に横になってそう言った答えになった。
最初こそ異世界に飛ばされるまでは少なからず新たな人生を進めるものだと思っていた。 だけど性奴隷だと言われて心が打ち砕かれそうになった時に手を差し伸べてくれたマウスレッドさんに、本当に感謝をしてもしきれない想いになった。 私の本当の力も、家族の暖かさも、全部あの人がくれたから。
「って、これじゃあ私。 マウスレッドさんに恋してるみたいじゃない。」
そう自覚している時点で少なくとも事実に近いのかもしれないけれど、それはもっと時間をかけてからでもいいかな。 そう考えているうちに心の底から安心したのか、私は微睡みの中に落ちていっていた。
翌朝、早速と言わんばかりに私は魔法の練習をさせて貰うことにした。 朝は早かったのだが、皆さんもそれなりに早かったので、気にしすぎることもなかった。
「それではまずは初級魔法を使って、ホノカさんの力の強さを改めて見ていきましょう。」
カレトさんの朝ごはんが出来るまでの少しの間、マウスレッドさんに魔法を教えて貰うことにした。 というのも、起きていたのがマウスレッドさんとカレトさんの2人だったから、自然にそうなったのである。 ガネッシュさんは仕事の時以外はゆっくりとしているらしいし、ルビルタさんはそもそも朝は弱いらしい。 とはいえ朝ごはんが出来る頃には起きるのだそう。
「では杖を構えて、あの薪に向かって魔法を使ってください。 イメージなどをすればより良いでしょう。」
「特に詠唱とかはないのですか?」
「魔法適性には必要ありません。 それに詠唱によっては実力不足で制御できない可能性もありますので、まずはと言ったところです。」
強すぎる力は使い方を誤れば自分すら蝕む、的な話なのかな? 確かに体が壊れても仕方がないので、薪に向かって魔法を考える。
漠然としたイメージでいいとは思うんだけど・・・ええっと・・・薪を燃やして・・・反応がないから違う。 薪に根を生やして・・・これも違う。 後は、水浸し? うーん。 違う・・・ ええっと・・・薪を一刀両断
「フォン」
目を瞑っていたから分からなかったけれど、音がしたので目を開けると、そこには縦に綺麗に真っ二つに割れた薪の姿があった。
「ふむ。 やはり母さんの考え通り、適性魔法は「風」でしたか。」
どうやら今のは私が放ったものらしい。 これがどういう強さなのかまでは分からないけれど、適性はあったみたい。
「となればもう1つの方も恐らくは適性でしょう。」
「なんの話ですか?」
「ホノカさん。 今度はあの薪を光らせてみてください。 具体的には薪の周りに光があるようなイメージで。」
周りに光? ええっと、オーラみたいなものかな? そうイメージして薪に杖を向ける。 むむむっ。 オーラ・・・オーラ・・・
「おお、光属性の方が適性値が強い様ですね。」
そこにあったのは薪の周りを煌々と光放つ存在だった。 なんか、薪が神様みたいになってる。 そうだとするなら割ってごめんなさい。
「しかも潜在魔力もかなり高い。 これなら初級を覚えれば中級を覚えるのもすぐに出来そうですね。」
「あの、そもそもの強さが分からないので私は特に言わないのですけれど、ここまで凄いものなのですか?」
「ええ。 魔力の高さは魔術師にとっての強さの起因になりますから。 それにあなたの回復魔法の強さにも比例します。 やはりあなたを迎え入れて正解だった。」
そう言って貰えると私もなんだか嬉しくなってきてしまう。 そう思っていると玄関のドアが開かれる。
「おはよう2人とも。」
「おはようございます、父さん。」
「お、おはようございます。」
「早速魔法の使い方について学んでいるね。 ・・・なんという暖かい光だろうか。 これならば・・・」
「ええ。 彼女なら存分に使いこなせると思います。 「防衛魔法」を。」
また新たな魔法の種類が出てきた。 でも自然と納得も出来た。 魔法というのはなにも攻撃をするだけのものじゃない。 味方の援護が出来るのもまた魔法の力とも言える。 どうやら私は本当にサポーター寄りの魔法使いになっているみたい。
「みなさん。 朝ごはんが出来ましたよ。」
玄関からカレトさんが呼び掛けてきたので、魔法の練習は一旦お預け。 朝ごはんを食べ終えてから再度やることになったので、朝ごはんを食べに、玄関に向かったのだった。
しばらくはこんな感じでゆったりと時間を進めていきたいと思っております。