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生地の都 コーナル

「見えてきた。 あれがコーナルの都さ。」


 森を抜けて数時間歩くと、遠目からでも見えるくらいに建物が建っていた。 形や色合い的にはインドのイメージがある。 タージ・マハルって言うんだっけ?


「うむ。 街に変化は無いようだ。 とりあえずは安心出来る。」

「ここの人達はなんだかんだ強いから大丈夫だろ。 ほら、さっさと行こうぜ。 今日は腹一杯飯が食えるからな!」

「あ、待っ、待ってください。 サイカさん。」


 皆さんは以前にも街を訪れているので、勝手も分かるのだろう。 だけど私は具現化院やルビルタさんに連れていって貰った場所以外ではまだ行ったことがない。 果たして自分は順応出来るのだろうか?


「ホノカ殿。 なにか心配事ですかな?」


 それを感じ取ってしまったのか、アイルドさんが私に声をかけてきた。


「アイルドさん。 私、ほとんどあの街から出たことが無いんです。 余所の土地で粗相を起こさないか心配で・・・」

「なるほど。 そう言うことならば逆に「ドン」と構えている方が、「自分には隠し立てするものはない」という表れになる。 最初は難しいかもしれないが徐々にならしていけばいい。 誰よりも年寄りなワシからのアドバイスだ。」


 誰よりも年寄り・・・か。 それでも聞いた話では三十路は越えたばかりだとの事。 ある意味では見た目相応と言った具合だったので驚きはしない。 因みにその流れということもあってか皆さんに年齢を聞いてみたところ、ユウシさんは25、サイカさんが21、マノさんは17と答えてくれた。 とは言えこれはあくまでも今の年齢であって、この世界に転移された時はみんな似たり寄ったりな年齢だったらしい。


 コーナルの街に入れば、私の最初の街と雰囲気は違えど盛り上がりはあるようだった。


「この辺りはまだ比較的安全だから、そこまで被害も出ていない。 魔物達もあまり強くはないしね。」

「でもオレたちとしてはもう少し魔物と戦えるやつを増やせば良いんだけどな。 屈強って言われてる連中もそろそろいい年なのが多いしな。」


 そればっかりは街全体の問題というか、そこばかりは他人行儀になるというか。 まあ私達が介入するような話ではないだろう。


「・・・おや、勇者様方。 我々の街においでなさったのでいたのですか?」


 街を歩いていると1人の老人の方が声をかけてきた。


「ああ。 済まないな、この街を訪れる機会があまり多くもない。 事前の連絡などもってのほかだ。」

「何を仰いますか。 勇者様方は旅をなさっておられる。 小規模な街に滞在されぬことなど、この街の者は皆知っておられますゆえ。 まだ宿のご用意をなされておられぬのでしたら、こちらで手配を致しましょう。 それくらいの手助けはさせて貰えませぬか。」

「そう言うことならば無下には出来ないな。 よろしく頼む。」


 そんなやり取りを蚊帳から見ていた私は特に口出しをすることは無かったけれど、立ち去るかと思われた時、私の方を見た。


「・・・おや? そちらの方は以前はお見かけしませんでしたが?」

「ああ、そうだ。 紹介が遅れた。 今回から同伴してもらう運びとなったホノカさんだ。 彼女の職業は「白魔導師」。 我々のメンバーが求めていた逸材だ。」

「おおっ・・・! 遂に勇者様方に新たなお仲間が・・・! しかしそれだけでは安心をしておられぬようにも見受けられますが?」

「・・・確かに求めていた逸材ではあるが、それだけで魔王討伐への礎にはならないと見ている。 経験が少ないのも然りだが、まだ魔王の力の全貌を見たわけではない。 だからこそ彼女の経験を増やすと共に、我々の中でも別の兆しを見つけなければ勝利は見えない。」


 私をパーティーとして入れたことは1つのピースが埋まったのには間違いない。 だがそれがゴールではなくむしろスタートだと言わんばかりのユウシさん。 表情は重々しい。 隣にいるアイルドさんも似たような表情になっている。


 だけどその件に関しては私が一番理解している。 何故なら私はまだ知らないことが多すぎるからだ。 勇者について、魔物や魔王について、3ヶ月住んだあの街以外での街や国の現状について。


「・・・なるほど。 老い先短い私めが余計なことを口走った事をお許し下さい。」

「事実を述べられたまでだ。 責めるつもりはない。」

「では改めて私めは宿の方へと話を付けておきます。 それでは。」


 そう言って老人の人は去っていってしまった。


「ああ言った方が亡くなる前に、この世界に平和を訪れさせなければな。」

「うむ。 その為にも今は英気を養おう。」

「わ、私も、皆さんの役に立てるように、頑張ります。」


 そう話している内にサイカさんとマノさんがなにか色々と買ってきたようで、それを持ちながら街を歩いていくことにするのだった。


「前の街でもそうでしたが色んなものが所狭しと並んでいますね。」


 道幅としてはかなり広い場所なのだろうが、路地裏が無いんじゃないかという位にお店がぎゅうぎゅうに詰められていた。 主なのは服と食べ物類で、それも大体半々くらいであった。


「ここは「生地の都」と言われるくらいに蚕や小麦がよく採れるんです。」


 マノさんがコッペパンを食べながらそう語る。 それだけ土壌が良いと言うことなんだろう。 お店や家の立ち並びも、よくよく見ればテントが多く見られる気がする。 でも火元とか大丈夫なのかな? そんなことを考えてきたら別のお店から料理の匂いがしてきた。 なんの料理だろうと見てみると、そこには中華まんのような料理が蒸籠で蒸されていた。 よく見ればあちこちの料理を出しているお店は、釜や鍋はあっても鉄板のようなものは無かった。 蒸したり茹でたりが主流なのね。


「そう言えばここにも魔法使いの方はいらっしゃるのでしょうか?」

「いるにはいるみたいです。 でも私達はお会いしたことはございませんが。」

「よっぽどの恥ずかしがり屋か魔法使いらしく研究に没頭して姿を見せないかだとオレは思うね。」


 魔法使いも十人十色。 本当にそう言う世界みたい。


 しばらく街並みを見ながら歩いていたら、先程の老人の人が歩み寄ってきた。


「勇者様方、お待たせ致しました。 宿屋の準備が整いました。」

「ん? あぁ、そういやぁオレたち、先に食い物とか行ってたから、宿屋の予約するの忘れてたな。 あんたがやってくれたのか?」

「我々に声をかけてくれたのでな、ご厚意に甘えたというわけだ。」

「では早速案内を・・・」

「あ、その前にいいですか?」


 そのまま移動をしようとした時、私がそれを制止した。


「どうかなされましたかな?」

「この街で「永久に渇れない水塊」ってどこかにありませんか?」

「永久に渇れない水塊?」

「湖とか噴水とか井戸の水とかとにかくなんでもいいんです。 簡単には渇れない水が溜まっているところを知りたいんです。」


 その私の言葉に、ユウシさん達はなにかに気か付いた様子を見せた、 老人の人はと言えば顎に手を当てている。 恐らく該当する場所を考えているのだろう。


「それならばここから少し離れた場所に湧き水の出る井戸があります。 宿屋からは少々離れますがよろしいですかな?」

「是非、お願いします。」


 そうして先程向かおうとしていた方向とは逆の方向に歩き始め、それに付いていくと確かにそこには井戸があった。


「あなた様の言うものならばこちらになりますが・・・飲み水ならこちらで手配をしますが?」

「いえ、水が飲みたかった訳ではないんです。」


 そう言いながら私は「場所戻りの芳香」を「ストレジ」から取り出す。 そしてその上についている「記憶の雫」のスポイトを吸い上げて、井戸の中に一滴落とした。 そして改めて芳香を見ると、芳香を囲う壺の端に「1」とこちらの世界で書かれた数字が1つ出てくる。 そしてそれはボタンのように押せるので、恐らくそれを押しながら芳香を嗅げばここに来れる仕組みなのだろう。


「ありがとうございます。 それでは日が暮れる前に宿屋に案内をして頂けますか?」

「そうですな。 では改めて参りましょう。」


 そうして今度こそ宿屋に私達は向かうのだった。


「これであの芳香を使えば、この街に戻ってこれるようになれるんですね。」


 案内された宿屋で私とサイカさん、マノさんは1つの部屋を借りていた。 因みにもう1つはユウシさんとアイルドさんが借りている。 男女間でのモラルは勇者パーティー間でもちゃんと存在している。


「正確にはあの井戸の前になるみたいだけど、これであの井戸から水が無くならない限りは、この街に戻ってこれるようになったわ。」

「そうかぁ。 これで街同士の移動が楽になるな。 なんだかんだで行ったり来たりは大変だったからなぁ。」


 そんな他愛ないはなしをしながら私達は夜を明かす。 そして翌日になってみんなが食堂に集まって朝御飯を食べていると、


「た、大変だ! 川の水が!」


 どうやら勇者パーティーというのは、ゲームでも現実でも休みは無いようだと、この時私は悟ったのだった。

初めてのワープアイテムの使用です。


そしてRPG定番のトラブル解決へと向かいます。

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