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何も出来ないなら

 街を出てから数日間。 私達は森の中をひたすらに歩いていた。 とは言え当てもなく歩いているのではなく、しっかりと次の街へと向かって歩いてはいる。 話によればこの世界の地図を見る限りでは、街と街との間は大体7日から10日は歩けば着く距離にはあるそうで、この森もその道のひとつに過ぎないのだそう。


 旅をしているなかで、今のところは特に道中での心配も少なかった。 というのも森の中と言うこともあってか、食料はキノコや木の実を採取すればその日は過ごせるし、寝床もある程度の場所に入れば、焚き火をしているだけで魔物は寄ってこない。


 魔物との戦闘も手慣れたやり方で、着実に歩を進めている。


「はぁ!」


 そして今回遭遇したエリマキトカゲの魔物もユウシさんの一撃で難なく倒していく。 ブレスレットを見ても、体力の低下を感じない程に敵を蹂躙していっていた。 それだけに私の中で、ひとつの焦燥感が出てくるようになってきた。


「私、何も出来てないな・・・」


 その日の進行を止めて眠りにつこうかというタイミングで寝る前にそんなことを呟いてしまい、それを隣で寝ていたマノさんに聞こえたようで


「魔法使いというのは、あまり前面に出る、職業では、無いですから、仕方ないと、思いますよ?」


 そんな回答が返ってきた。


「あ、ごめんなさいマノさん。 起こしちゃったかしら?」

「いえ、大丈夫です。 ホノカさんの気持ちは、分かりますから。」


 気持ちは分かる、か。 確かにマノさんも、ここまで来るのに数回は敵とエンカウントしている筈なのに、ほとんどがユウシさんかサイカさんの攻撃で全部終わってしまっている。 まだ後方支援が必要な敵ではないのは分かるのだが、活躍の場はあってもおかしくはないと思う。


「みんななかなか手こずらないから、回復もしなくていいし、身体強化もいらないみたいなんだけど、こう・・・もどかしくなっちゃってさ。」

「皆さんお強い、ですから。」

「マノさんだって、魔術師だから攻撃魔法が出来るでしょ? 私は基本的にそっちは専門外なのよね。 攻撃に参加できないって、こんな想いなんだなって改めて思ったわ。」


 私は特に攻撃手段がある訳じゃないし、サポート役だとしても、今はお荷物に近い。 街の人達に「怪我をさせないように」と釘を刺されているとはいえ、過保護とまでは至っていない筈なのだ。


「って、ごめんね。 こんな落ち込むような話して。 明日も歩くからしっかりと体力は残しておかないとね。 お休みなさい。」

「あ・・・お、おやすみ、なさい。」


 マノさんはなにかを言いかけたようだったけれど、自分なりになにかをするのは明日からにしようと思ったので、早く微睡みに入ろうと眠りについたのだった。


「今の歩く速度で行けば、後2日程で森を抜けた街に到着する。 その間にも何が起こるか分からない。 気を引き締めていこう。」


 旅に出る前のミーティングを行いつつテントを畳んでアイルドさんの荷物に入れようとした時、


「あ、私の「ストレジ」に入れておきますよ。」

「それは構わないが・・・許容量は大丈夫であるか?」

「・・・許容量?」


 アイルドさんが不思議な質問をしてきた。 私が首を傾げていると、アイルドさんは説明に入った。


「いや、ホノカ殿の収納魔法なのだが、確かマウスレッド殿から貰った「場所戻りの芳香」と「記憶の雫」があったと思ってな。 それを常に入れているから魔力が減っているのではないか思ったのだが・・・その反応だとワシが思っているのとは違うようだ。」


 アイルドさんの説明で腑に落ちた。 確かに魔法を使えばその分魔力は減る。 その辺りはマノさんを見て思ったのだろう。 そして私にはそこそこ大きな物を魔法で入れている。 それだけに知らず知らずの内に消耗しているのではないかと思ったのだろう。 だから私はこう優しく答えた。


「大丈夫ですアイルドさん。 私の魔力は収納するものが1つや2つ増えたくらいではびくともしませんから。」

「そうか・・・あらぬ誤解といらぬ心配をさせてしまったな。」

「いえいえ、お互い分からないことだらけですから。」


 そう言いながら私はテント一式を「ストレジ」した。


 因みにこの「ストレジ」、出す時は私の持っている魔導書の「ストレジ」の項目から更に絞って、出したいものをなぞりながら同じ魔法を唱えれば出せるようになる。 なので魔導書の中にカタログがあるような感じだと思えば、使い慣れるのは簡単だった。 まああまり多くの物を入れるのは、私の方が忘れそうになるからやらないけどね。


 そして改めて出発して、数時間歩いたところで休憩を挟む。 サイカさんぎ水筒から水を飲もうとした時


「・・・ありゃ? 水が無くなっちまったぜ。」

「このところ喉の乾きが多かったから、摂取量が多くなっちゃったか。 近くに川があった筈だから汲みに行くといい。」

「そうさせてもらうわ。 あんたらの分もついでに入れてきてやるよ。 まだ先は長いんだろ?」

「お願いします、サイカさん。」


 みんなの分の水筒を渡されたサイカさんが川に向かって歩いた時に、私もついていくことにした。 少しでも早く終わればそれだけ楽になるだろうし。


「さてと川まで来たはいいが・・・この川の水、飲めるのか?」


 川を見てみると一見澄んでいるので飲み水として活用しても問題は無さそうに見える。 ()()は。


 綺麗に見えるだけで実際になにが入っているか分からない。 成分分析云々を除いても、綺麗だから飲める水だとは限らないのだ。


「前にここを通った時には利用しなかったのですか?」

「ああ。 あの時は飲み水は足りてたからな。 おっと誤解の無いように言っとくが、オレたちは別にあんたが入ったから食料の減りが多くなったなんて思ってないからな。 天気とかで状況が変わるんだ。 あんたに文句を言うのはお門違いなのはみんな知ってる。」


 サイカさんは私が心配したことを真っ向から否定した。 それなら私も安心出来るけど、目の前の問題は解決しなければならない。 簡単に口にすることは出来ない、だけどこの水を飲んで足止めを食らえば食料問題がもっと厳しくなる。 私とサイカさんが悩んでいた時


「・・・ん? これって水に直接魔法をかけなければ、濾過自体は出来る?」

「は? どういう事だ?」

「サイカさん、なにか網のような物はありますか? 網目があるものでも構いませんので。」

「・・・いや、生憎持ち合わせてねぇ。」

「分かりました。」


 持ち合わせていなくても問題はない。 あればいいな程度に考えていたので気にしない。 持ち合わせが無ければ作ればいいだけ。


「「作らんは目に見える捕縛の糸 アミット」。」


 そう唱えれば何もない空間から魔力で出来た網目のエネルギー体のようなものが現れる。 太さや網目の感覚は私が頭に浮かべた形になるので、具体的でなくてもある程度形にはなるのだ。


「それに川の水を通すのか?」

「いえ、これだけではすり抜けるだけで効力はありません。 だからこの網に更に魔法を重ねます。」

「そんなこと出来るのか?」

「別の魔法で実践済みですので、恐らくはいけると思います。」


 魔法の重ね掛けについては限定的ではあるけれど可能なのは知っている。 身体強化魔法は制限時間はあるけれど重ねることが出来る。 だけど魔法で作られた物質(?)に魔法を付けるのは骨が折れたのも覚えてる。

 因みにこの事を具現化院で相談したところ


「そのような魔法の使い方をするのはホノカさんが初めてだと思います。 ですがもしそれが可能になるのであれば、魔法学の発展に貢献することは間違いないでしょう。」


 とお墨付きすら貰った。 そんなこんなでやってみることにした。 これは自分が思い付いた魔法。 なので後でメモをしておかなければいけないけれど、成功するかはあまり分からない。


「「流るるは純粋なる素材のみとなれ フォート」。」


 その魔法を先程のアミットの魔法にかける。 そして汲んできて貰った水を通して貰う。 するとアミットを通り抜けた後には、アミットの上に細かな粒子が残っていた。 恐らくこれが川の水の中に入っていた物質で、ちゃんと濾過出来たようだ。


「飲み水になったのか?」

「・・・そこまでは流石に・・・ ・・・あっ!?」


 濾過されたであろう水が入った水筒を取って、サイカさんが一口飲む。 白魔法でも成分分析までは出来ないので、まだ身体に害をなす物質が入っているかも知れなかったのに、その事を伝える前に飲んでしまった。 だ、大丈夫なのかな?


「んぐっ、んぐっ。 ・・・ぷはぁー! うめぇ! 川の水がこんなにうまくなるなんて! あんたの魔法すげぇな! これからどんな水もこれで濾過できるってことだろ?」

「ま、まぁ魔法で作られたものなので、その都度唱えなければなりませんが・・・でもお役に立てて良かったです。 私、戦闘ではお荷物ですから。」

「良いことじゃないか? 適材適所って言葉、オレは好きだぜ?」


 サイカさん自身は気にしていない様子。 とにかく人数分濾過した水を水筒に入れて、皆のところに戻った。 これが今の私の出来る、メンバーとしての役目だと、私自身が分かってきた事だった。

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