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最初のエンカウント

 街から出て数キロ先の森。 歩きすぎたわけでは無いけれど、私達は一度所有物を確認することにした。 こういった準備や確認はとにかく大事だったりするのだ。


「まずは今回の旅で必要最低限のものを確認しておこう。」


 そう言ってユウシさんがリュックから取り出したのは液体の入った瓶だった。 因みにこのリュックはアイルドさんが背負っていたもので、長期滞在用と言うこともあってか、かなりパンパンに見えても収納スペースはそれなりにあるようだった。


「この緑色の液体は回復薬。 この白いのは塗り薬。 この黄色のは滋養強壮材。 前の世界での言い方なら、ビタミン剤って言えば分かるかな。」

「回復薬やビタミン剤は分かりますが、何故塗り薬を?」

「擦り傷や切り傷程度なら、こちらで充分だからね。 あ、そうそう。 ホノカさんは白魔導師だと聞いているから、回復魔法なんかも覚えていたりするのかな?」

「ええ。 この魔導書の中にあるので、使えますよ。」


 そう言って私は白の魔導書を出す。 まだ半分近くしか読みきれてないけれど、この旅の中で使える日が来ることを密かに願っている。


「使えるなら、使うタイミングは戦闘中とか、戦闘に挑む前にして欲しい。」

「それはどうしてでしょうか? ユウシさん。」

「白魔導師とは言え魔力は限られていると思うから、いざというときに残ってて欲しいんだ。 戦闘が続かない限りは小休止の間に回復薬は飲めるしね。」


 戦力の節約という旅の中では意外に重要な部分を語ってくれた。 共倒れで全滅では元も子も無いということからだろう。


「次は武器や装飾品だな。 自分の武器は自分で手入れするのがオレたちの鉄則だからよ。 って言ったってホノカとマノは杖とか魔導書だから、手入れって言う手入れは無いだろうけどな。」


 確かに魔導書はユウシさんの持っている剣やサイカさんの鉤爪のように研ぐ必要も無ければ、アイルドさんの盾のように、変形したら直せるような類いではない。 杖は買い替えればいいとしても、魔導書はここにいる人達では無理である。 特に私のは「白魔法」が書かれているので、修繕はほぼ不可能に近いだろう。


「ここから先には魔物が存在し始める。 これだけの森ならば物陰から出てくることが多いだろう。 皆警戒を怠らないように。」

「はい。 でもここの辺りの魔物なら、皆さんのレベルよりも低いのでは?」

「そうではあるのだが、それでも魔物が前に会った時と同じ攻撃をしてくる訳じゃない。 我々も一度通った道の筈なのに敵に襲われる、何て事もしばしばあったりもしたし。」


 ゲームで言うところのランダムエンカウントみたいな話なのかなと、ふと頭の中で浮かべた。


「・・・よし。 準備はある程度出来ているようだ。 それでは旅を再開しよう。」

「あ、私の「ストレジ」で収納しておきましょうか? そうすれば荷物も軽くなるし、かさ張る事もないと思うのですが。」

「ありがたい話ではあるが遠慮しておこう。 背負っているのはワシだが、すぐに使えるようにもしておきたいのでな。」


 私が荷物を軽くしようかと提案は、アイルドさんの正論によって却下された。 確かに毎回ストレジを唱えることが出来る状況でなくなった時等は、直接出せる方が強みになるだろう。 冒険をしている上では私は初心者も同然。 これ以上意見をする必要はないと思いながら、旅を続けることにした。


 しばらく歩いていると森に入って行った。 太陽は西に傾き始めている(昼と夜は地球と同じ)けれど、森の木漏れ日を感じている。 こういった景色ならば今すぐにでもスケッチをしたいところだけれど、今は旅の途中。 あまり連続で足を止めるわけにはいかない。 マウスレッドさんから貰ったブレスレットがあるので、体調がおかしくなった時はすぐに分かる。 安全に夜を過ごすことの出来る場所を知っている様なので、そこまでは止まることは無いだろう


 と思っていたら戦闘で歩いていたアイルドさんが立ち止まる。


「ユウシ。 前回はこの辺りだったか?」

「いや、もう少し先だった記憶がある。 後数メートルのところ・・・」


 後ろにいるユウシさんがアイルドさんに指示のような言葉を出す。 アイルドさんもゆっくりと歩を進める。 その間もユウシさんの横にいるサイカさんは辺りを見回している。 私とマノさんはその間に挟まってはいるものの、それぞれ左右を見ていた。


 アイルドさんの足を引きずる音が聞こえてくる。 それを5回ほど聞いたところで


「「ギャギー!!」」


 木の上から2つの小さい何かが飛び出してきた。 しかしその奇襲はアイルドさんの盾に止められた後に弾かれて、そのままユウシさんとサイカさんが間髪入れずに攻撃を繰り出してあっさりと終わってしまった。


 そして飛び出してきたものが何かと言えば


「ふむ、やはりゴブリンか。 魔物がどのように消滅と生成を繰り返しているか分からないが、ここのゴブリンはまだ知能が低い。」


 アイルドさんの大きな背中から覗き込めば、そこにいたのは胸に切り傷と引っ掻き傷のある、緑色の皮膚で耳長、小さな棍棒を持ち、皮で出来た服をした典型的たも言える程のゴブリンが2体倒れていた。


「さ、安息地はこの先だ。日が暮れる前に急ぐとしよう。」

「あーあ。 ゴブリンじゃ漲る力を試せないな。 やっぱこう、ガツンと強いやつじゃないと。」

「サイカさん。 この辺りではそう言った魔物はいないと思いますよ?」


 みんながスタスタと歩いていく。 あまりにも瞬殺に近い状態で終わって、呆気に取られている私の肩に、ユウシさんが軽く叩いてきた。


「まあ、あれだよ。 これがレベルの違いだと思ってくれてたら、それでいいんだ。」


 少しだけ気まずいのか、ユウシさんはあんまり穏やかではなかった。


「この辺りだと魔物はゴブリンだけなのですか?」


 安息地でテントを張り、焚き火をしながら私はふとそんな疑問を投げ掛けた。


「そうだね。 あとはエリマキトカゲに似た魔物やキノコの魔物とかかな。 俺達ならそんなに苦になら無い魔物ばかりだけど。」


 やっぱり最初の魔物はそう言った類いなんだ。 そしてその中で思った疑問もあった。


「もしかしてスライムの類いは強い魔物の部類に入るんですか?」


 そう、話の中に弱い魔物筆頭のスライムが入っていなかった。 それで口を開いたのはマノさんだった。


「スライムは、全域に生息していますが、強い魔物に、なっています。 しかも色によって強さが違いますから、弱いとは言い難い、です。」

「具体的にはどう言った強さを?」

「あいつらぐにゃぐにゃして物理的なダメージが無いんだよな。 ジュドウセイって言うんだっけ? あれのせいでオレとユウシの攻撃がほとんど効かないんだよな。」

「それに奴らは早いだけでなく、その柔軟性からどこからでも入ってくる。 盾の隙間などから現れる事もザラではあった。」


 聞けば聞くほど元の世界での認識から外れていく。 でも実際の身体能力ならあり得るのかな。


「あ、じゃあ魔法で倒せるってことですよね? それならマノさんが・・・」

「それが全部魔法で倒せる訳じゃないのが、スライムの厄介なところなんだ。 色によって魔法が効かないし、逆に強くなった時はかなり手こずったのも覚えているよ。」


 この世界では何かとスライムは強いらしい。 愛くるしい姿とは裏腹と言うことだろうか。


「とは言え最初にスライムに会うとしても、これから向かう街と次の街の2つを越えた辺りからだから、今はそこまで身構える必要はあんまり無いかな。 さてと、そろそろ眠るとしよう。 アイルドさん、最初はよろしくお願いいたします。」

「うむ。 皆は少しでも寝れるようにワシが見張りをする。 ホノカ殿も休息を取ると良いでしょう。 初めての旅ということで勝手も分からないだろうからな。」


 そう言われたので、私は立てられたテントの中でシラフを使い眠ることにした。 しかしそう簡単に眠ることが出来ないのが現実で、少しでも疲れを取るために目を瞑る事にした。 


 初めての事が今日だけでも色々とあった。 これに関しては少なくとも慣れていくしかない。 旅は徒然世は情け。 この旅の中で私は何を思うだろう。 そして再び街へ戻る頃、私の中でなにか変化があるだろうか。 そんなことを考えている内に、ゆっくりと微睡みの中に沈んでいったのだった。

RPGの敵のエンカウントタイプってこんなものかな? と思いながら書きました。


突然現れますもんね

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