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お見送りは盛大に

「ホノカさん・・・・・・!」


 ユウシさんは私がこの場で待っていた事を驚きつつも、私の顔を見てとても安堵したような表情を見せていた。


「無理なお誘いだったにも関わらず、我々の旅の同行を選択していただき、本当に、本当にありがとうございます。」


 お願いしに来たのは私なのに、いつの間にかユウシさんの方が頭を下げていた。 そのやり取りになんだか申し訳無さを感じてしまう。


「マウスレッド殿も、ご協力をしていただき感謝致しますぞ。」


 アイルドさんが左の方を見ると、隠れていた筈のマウスレッドさんが姿を現した。 マウスレッドさんは今回私を見送る為だけに来たわけでは無かったのだけれど、最初からいるのはおかしくなってしまうと言って、物陰に隠れていたのだ。


「僕自身はなにもしていませんよ。 彼女が率先して今回の決断をしたのです。 僕達はそのお手伝いをしたまでです。」


 そう、マウスレッドさん達は実際に私が出発するまでの2日間で色んなものを見繕ってくれていた。 魔導書は元々私の物になっているけれど、今来ているローブやアクセサリーなんかはマウスレッドさん達家族全員で惜しみ無く購入して渡してくれた。 この世界での金銭感覚がまだ疎い私でも、今身に付けている装備の価値は計り知れないのは分かっている。


「良かったなマノ! ホノカが着いてきてくれるって言ってくれてよ!」

「はい! ・・・ホノカさん。 これからどうぞ、よろしくお願いいたします!」


 サイカさんに背中を押されて、マノさんは私の目の前に来て頭を下げてくる。 勇者パーティーの一員から頭を下げられることになるとは本当に夢にも思わなかっただろう。 実際に夢みたいな事が起きてはいるのだけれど。


「さて、僕としてもただホノカさんをお見送りに来ただけではありませんよ。」


 そう言ってマウスレッドさんは自分の持っていた袋から様々な物を取り出した。 その中にあった私と同じ、だけど色違いのブローチが人数分あった。


「これは特殊な魔石で出来ていて、この魔石の色が褪せてくると皆さんの体力が減っていることを確認できます。 旅のお役に立ててください。 それと・・・」


 そう言って次にはそれぞれに別の装飾品を渡していた。 ユウシさんにはグローブ、アイルドさんにはバングル、マノさんにはチョーカー、サイカさんにはブレスレットを渡していた。


「それぞれ皆さんの武器や戦闘スタイルに合わせた身体強化の魔法がかけられています。 それで魔物を倒しやすくなる事でしょう。 ちなみにホノカさんにも既に装着させて貰っています。」


 そう言うと私は髪を少しだけかきあげて、耳に着けているマグネットイヤリングを見せる。 これによって私の魔法は大幅に強化されているとの事。


「ここまでの事をしていただけるなんて・・・」

「うおー! すっげぇ力が漲ってくるぜ! これならどんな魔物が来ても怖くねぇぜ!」

「油断は禁物です。 それに前にも言いましたが、ホノカさんはまだ魔物とはほとんど会っていません。 あなた達が旅立つまでに、知識や危険度の低い魔物には会わせましたが、それ以上の魔物とはまだなのです。」


 そう、この2日間で私もただ黙ってみていた訳ではない。 出来ることはとにかくやっており、具現化院で載っている魔物はとことん調べたし、強くない魔物には実際に会ったりもした。 とはいえ魔物と会ったとしても、私自身には戦闘力が無いので、そこはルビルタさんに同行をして貰ったりもした。

 載っていなかった魔物についてマルスティさんから話を聞いたら


「実際にはまだ数多くの魔物がいます。 ですがそれらを具現化院に無いのは情報が無いことに越した事はありません。 また載っている魔物の中にはその環境でしか出てこない魔物がいたりするのです。」


 とのことだった。 完全に把握出来ていないのならば、出来ていないなりにはなにか出来るだろうと私は少し思っていた。


「そんなわけですから旅としても足並みを揃えていただけると、僕としても安心は出来ます。」

「分かりました。 我々も魔王城までは一気に進むつもりはありません。 今回の旅は長くなりそうな予感がしますので。」

「そう言うと思い、これもあなた達に渡そうと思ったのですよ。」


 そうして見せてきたのは何かのお香のような壺だった。


「これは特殊な壺で「場所戻りの芳香」になります。 これを使えば一度立ちよった場所へと魔法で瞬時に飛ぶことが出来ます。 所有物も持てば一緒に飛んでいきますので、芳香自体も誰かが触れていれば一緒に付いてきます。 そしてこのアイテムに対となってあるのがこちらの「記録の雫」の入ったスポイトになります。」


 壺の上の部分を取り出して一滴の雫を落とした。


「この雫の落とした場所に「場所戻りの芳香」の香りを使えば、この場所に戻ってこられるというものです。 そして「場所戻りの芳香」は「記録の雫」の数だけ連動していきます。 ここに数が書かれているでしょう?」


 芳香の上の部分を見ると、確かにそこに数字が書かれていた。


「数に限りはありません。 行った先々でこの雫を落とすことをおすすめします。 ただし必ず「渇れることの無い水辺」で使用してください。」

「それはなぜ?」

「「記憶の雫」と言ってもこの雫そのものに魔力は帯びておらず、渇れてしまえばそこへ「場所戻りの芳香」は効かないからです。 街ならば噴水、村ならば井戸などがいいでしょう。 それと川や海などには使用しないで下さい。 流れで位置が変わってしまうので。 無くされても困りますが。」

「そんな大事な代物を我々に譲渡してくれるのですか?」

「旅のお供になればと。 ただ管理はホノカにさせてあげて下さい。 彼女の収納魔法で入れておけば無くなることは無いでしょう。」

「・・・本当に何から何まで・・・助力以上の力、感謝してもしきれません。」


 そのやり取りを見ながら私は収納魔法を使って場所戻りの芳香を入れる。


「「別空間への保管を ストレジ」。」

「ホノカさん。 街に入った時は、必ず「記憶の雫」を使ってくださいね。」


 マウスレッドさんから念を押されたので、私も忘れないようにしないと。


「あ! 良かった! まだ出発してなかった!」


 誰かの声がしたのでそちらの方を向くと、勢い良く走ってきたのか、息切れをしているルビルタさんがそこにはいた。


「姉さん? なにか渡し忘れた物あったっけ?」

「違うわよ。 今日が出発だって街の人達に声を掛けてたんだけど、準備がギリギリになったから、あんた達が旅立ってないか心配だったの。」

「オレたちの為に?」

「正確にはホノカの為にだけどね。」


 ルビルタさんはそう答える。 というかもう息切れが治ってる。 魔力の流れを利用した方法かな?


 そんなことを考えていたら後ろから色んな人が行進するかのように門の前に現れて、そして


『勇者様! 必ず魔王を倒して帰ってきて下さい!』


 そんな旗を大きく掲げたのだった。


「これは・・・」

「ホノカさん! 無理はしないようにね!」

「頑張ってきてね!」

「勇者様でも、ホノカさんに何かあったら許さないからな! しっかり守ってやってくれよ!」

「お姉ちゃん! 帰ってきたら冒険のお話聞かせてよ!」

「勇者様方もこちらの事は気にせずに、魔王を倒してきてください!」


 色んな声が私達に響いてくる。 これだけの街の人達から応援をしてくれて、私達はなにがなんでも帰ってこなければと思った。


「皆さん・・・」

「こりゃオレたちも、これ以上情けない姿を見せられねぇな。」

「ホノカ殿。 あなたはこの街で、我々の誰よりも信頼を得ている。 ワシは守るのが仕事。 必ず守ってみせよう。」


 みんなが感動をしているなかで、ユウシさんだけは、胸に拳を当てていた。


「みんなの想い、そしてホノカさんの暖かさ。 今までに無い程に力が漲ってくる。 俺は誓う。 必ず魔王を倒して、この世界に平和をもたらすと。」


 新たな決意が出来たようで、そんな声援を背にしてユウシさんは歩き出す。 私達もそれの後に続くことになった。


「行くぞ! 今度こそ! 魔王は俺達が倒してみせる!」


 こうして勇者パーティーの、私の新たな生き方が、始まるのだった。

ここから物語を本格的に動かしていきたいと思っております。

冒険物としては大分スローテンポになると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします

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