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悩み悩んだその結果

 私は自室に戻った後に大いに悩んでいた。 理由は言わずもがな昼間の勇者パーティーへの加入の件だ。


 この世界に来てからすぐに勇者のメンバーになるために降臨したこと、既に勇者はいること、勿論魔王も存在していることも聞かされた為、帰ってきた勇者パーティーの姿を見た時は、眉唾物ではなくてホッとしたのはなんとなく分かる。


 そして今回は時期がずれたり、そもそも王子が私の力を見抜けなかった事もあって、勇者パーティーと合流出来ず、こう言ったスカウトのような形になったのだと思う。 理屈は分かっている。 分かっているけれど・・・


「私はどうすればいいんだろう?」


 そんな自問自答をずっと繰り返している。 唐突な提案だったこともあって非常に頭を抱えていた。


 この世界にはまだ3ヶ月程しか時間が経っていない。 まだまだこの世界の事を知らないし、なにより勇者パーティーのメンバーについても昼に初めて知ったばかりだ。


 そしてパーティーへの加入のお願い。


 整理しようとしても、シンプルな「はい/いいえ」のどちらかの答えに理由が付けられない。


 どちらを選んでも誰かの為に「白魔導師」として白魔法を使うことにはなるだろう。 だけどその相手が勇者パーティーか目の前困った人かの違いだ。


 そして魔王を倒すことを目的としている勇者パーティーと旅をすればその分の危険も伴う。 私は直接魔物を見たことがないだけに、おいそれと「行きます」とは言えなかったのは事実でもあった。


「・・・ここが私のこの世界での分かれ道、なんだよね。」


 私はそう悟っていた。 いずれの選択肢を選んでも、私の運命は大きく変わる。 この答えに正しい解答は無い。 だけどどちらの道を選んでも、それ相応の覚悟が必要。 期限は3日あるけれど、決断は早めにしないと。


「・・・うぅ・・・ん・・・」

「ホノカさん。 お夕飯が出来ましたよ。」


 カレトさんから報告を受ける。 気が付けば勇者パーティーの人達と別れてから、結構な時間自室に引きこもっていたようだ。 私は部屋を出てみんなのいるリビングへと向かった。


 温かい料理が目の前にある。 それを食べて少しは気でも晴れるのかと私自身思っていたのだけれど、現実はそう簡単ではなかった。 食事中なのに私はずっとあの質問の答えを探していた。


 それでもちゃんと食べ終えて、罪悪感からか皿洗いを手伝うことにした。


「ホノカさん。 お昼の事、マウスレッドから聞きましたよ。」


 カレトさんからお声がかかる。 お昼の事、つまり私とマウスレッドさんと勇者パーティーのことについてだ。


「・・・まだ・・・決めていないんです。 どうするべきなのか。」

「それだけあなたの中に葛藤がある、ということでしょう。 ちゃんと自分が選んだ道を進みたいけれど、別の何かが縛り付けている。 そんなところでは無いですか?」


 当たっている。 この街のことはこう言ってはなんだけれど、私がいなくても頑張れる人達でありふれている。 ならば私はこの世界の平和を取り戻すために旅に出るのが定石だろう。 だけどそれをすぐに見出だせないのは、心のどこかで不安があるからだ。 その不安がなんなのか、今の私には分からなかった。


「お皿はそれで最後ですよ。」

「・・・ぁ。」


 いつの間にか終わっていた食器洗い。 悩みすぎて時間の感覚すら分からなくなっていってしまっていた。


「・・・カレトさん。 他の皆さんはこの後ご予定は?」

「みんな特に無いわよ。 元々夜は活発的では無いですから。」

「それなら他の皆さんもリビングに読んで貰えませんか?」


 それだけ私の中で追い詰められているわけではない。 だけどこの問題を私の一存で決めるには、あまりにも大きすぎる問題だった。 ならば1人で悩むよりも、誰かの意見を聞きたかった。


「分かったわ。 ・・・と言ってもみんなすぐそこにいるから呼びに行く必要なんて無いんだけどね。」


 そう困ったようにカレトさんが振り返るのを確認して、私も振り返れば、確かにそこにみんなが既に座っている状態になっていた。 どうやら自室に戻るわけでも無かったようだ。


 とりあえず台所から戻り、そのまま自分の席に付く。 なんだか居心地が微妙に悪いのは、これから話すことの大きさを表しているからだろうか?


「ずっと塞ぎ込んでいたのは知ってるわ。 厄介な悩みを押し付けられたものね。」

「だからこそ即決をせずに、こうして悩み、我々に相談をしようと思った。 そうだろう?」


 ルビルタさんもガネッシュさんも、マウスレッドさんから話は聞いているようで、私の質問を待っているようだった。


「・・・私、は・・・今悩んでいる選択肢は、どちらも正しいと思っています。」

「ああ。」

「でも、今回はどちらかを必ず選ばなければいけません。」

「そうね。」

「どちらを選んでもそれは私にとって、大きな運命の歯車になるんです。」

「そうよね。」

「だからこそ、私は、どちらを選べばいいのか、ずっと、困惑しているんです。」

「・・・」


 言葉にしようとするだけでも精一杯な私は、こんな情けない自分をどう思うのか怖かったのかもしれない。 魔法使いとして、人として未熟な部分だと私は思った。


「・・・ホノカさん自身は、どちらの道を選ぶおつもりなのですか? 今の段階で、直感的に。」


 マウスレッドさんはそんな私にそう問いかける。 今の質問は答えを導きだすものではない。 自分自身を出させるための質問だ。


「私、は・・・」


 膝の上に置いた手を固く握る。 そして


「私は、勇者パーティーの勧誘を受けようと思っています。 元々私だって、この世界に平和を取り戻すために召喚された人間です。 なら、その使命は果たさなければならないと思うんです。」


 これが私の精一杯の答え。 そして最終的に導き出した答えだった。 この街の人と仲良くなり始めたけれど、自分に使命があるのならば、それを全うするのが人ではないか。 私は白魔導師として、1つの選択を、ここで選んだのだ。


「そうですか・・・」


 マウスレッドさんはそう返事をして、その後にニコリと笑った。


「それでは旅に出掛けられるように準備をしなければいけませんね。」

「うむ。 それならこちらで知人に魔力を回復させる薬などを調合して貰うこととしよう。」

「魔法を高めてくれる服ってどこで売ってたかしら? 後は魔力を貯めるためのアクセサリーも必要になるかな。」

「うふふ。 明日から忙しくなりそうね。」


 そんな皆さんの反応に、私はポカンとするしかなかった。


「あの・・・私、結構悩んだ末に出した答えだったんですけど・・・?」

「僕達はなにもホノカさんの行動を縛るために聞いたわけではありません。 ホノカさんが選んだ道なのですから。 僕達はそれを全力でサポートするだけです。 自分が選んだ道に決して後悔の無いように。」

「マウスレッドさん・・・皆さん・・・」


 私は涙が込み上がりそうになった。 これだけ私の事を見てくれているのは親でもあんまり無かった。 私の行動に賛同してくれている皆さんに、私も胸を踊らせていたのかもしれない。


「本当にありがとうございます。 私、頑張っていきたいと思います!」

「その意気よ! ホノカ!」

「それではまた明日改めましょう。 今日は疲れたでしょうから、ゆっくりおやすみなさい。」


 私は自室へと戻った。 その時の私は、心の中の靄が取れて少し爽やかな気分になっていた。


 ――――――――――――――――――――――


 勇者パーティー一行が戻ってきてから3日が経った。 彼らは宿から出るために準備を行い、そしてそのまま宿屋を去る。 ちゃんと料金だって置いていっている。 勇者パーティーだからと贔屓目をしてはいない、というよりも宿屋の店主が値引きをしようとしたが、ユウシがそれを止めた。 「今はただの客として扱って欲しい」とのことで。


「この街とも再びお別れか。」

「次に戻ってくる時には、魔王を、倒して、戻りたいですね。」


 ユウシとマノ、アイルドにサイカと勇者パーティーは列を成して歩いている。 今日が旅立ちと言うことで彼らもそれなりの装備はしているが、街の住人は気にしていない。


「あ、勇者様だ!」

「勇者様。 魔王討伐を願っておりますぞ。」

「勇者様、ファイト!」


 むしろ皆が皆、勇者の魔王討伐を応援してくれている。 その応援に応えるべく、ユウシ達は手を振り、自分達の士気を高めるのだ。 そんな中でユウシは右へ左へと視線を向けていた。


「・・・やはり見かけはしないか。」

「まあ急な話だったしな。 オレたちの仲間にならなくてもしょうがないって、ユウシが割り切った事だろ?」


 アイルドの察したような言葉にサイカも同意を重ねる。 ダメ元で頼み込んだお願いなので、例え拒否されても文句は言えない。 彼女には彼女の人生がある。 ひとえにそれを奪ってしまうのは勇者パーティーの一員としては申し訳が立たないのだ。


「ホノカさん・・・」


 マノはとても残念そうに声を出す。 彼女が一番同行を促していただけに、急に声をかけたことの罪悪感と、それでも来てくれると信じていた希望との狭間に立たされていた。


「マノ。 我々は前へ進むしかない。 彼女が来てくれないのならば、その分を我々が頑張ればいい。 無理を言ったことの罪悪感は、魔王を倒す意志に変えるんだ。」


 ユウシは落ち込んだマノへ励ましの言葉を送る。 魔術師はモチベーションによって魔法の効果が大きく変動する。 ユウシは仲間の調子も確認しながら旅をしている内に、その辺りのフォローも出来るようになっていた。 勿論そんな単純な話ではないが。


 街の住人から様々な励ましや貰い物を手に街の門へと歩いていく勇者パーティー。 この門を越えれば再び魔王の住む城への旅立ちとなる。 そして気持ちを新たにしようと思ったユウシの目に、門の前で誰かが立っているのが見えた。


「・・・ん? 見送りの人か?」


 フードを被っているため近くに行かないと見えない。 そしてその人物の前までやってくる。


「君は・・・? ・・・!」


 その人物はフードを取った。 するとそこから顔を出したのは・・・


「ホノカ ワキヅカ。 職業「白魔導師」。 本日から勇者パーティーの旅のご同行を願いに、この場でお待ちしておりました。」

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