勇者達の願いと穂乃果の意思
主人公と勇者一行との会合になります
「む、帰ってきたようだぞ。」
「心配したぞ2人とも。 ・・・うん? そちらの方は・・・?」
マノさんに連れられて訪れたカフェテリアで別の2人の男性が座っている箇所に案内された。 マウスレッドさんの話が本当なら彼らも勇者パーティーの方々なのだろうか?
「成る程、皆さんご帰還成されていましたか。 その様子ですと・・・次へ向けての相談中と言う形でしょうか?」
「・・・! ご足労をお掛けしますマウスレッド殿! このような場面を見せてしまい申し訳ありません。」
そう言って男性2人は席を立ち頭を下げる。 マウスレッドさんと知り合いなのかな?
「いえ、父が召喚した勇者と守りの要の人物。 無下にはしませんよ。」
「もしかしてマノが連れてきたのがマウスレッド殿だったとは・・・ご無礼をお許ししていただきたい。 それでそちらの女性についてなのですが・・・」
「なにやら今回は事情が違うようですね。 席を用意して貰っても?」
そうマウスレッドさんは店員さんに新たに2つの席を用意して貰って、そこに座ることにした。
「まずは確認をしておきたいのですが・・・彼女はもしかして、召喚された方でしょうか?」
「お察しが良いですね。 そうです。 彼女が今回の召喚者です。」
「えっと、ホノカ ワキヅカと言います。」
自己紹介も兼ねて私は頭を下げる。 勇者パーティーの人達も、私に向かって一礼した後に、改めて口を開いた。
「やっぱりそうなのでしたか。 我々と雰囲気がなんとなく似ていたので、もしかしたらと思ったのです。」
言われてみると確かにマウスレッドさんと私達ではどこか雰囲気が違うように感じる。 似ている部分と似ていない部分は分からないけれど、それでも彼らと私は一緒の部類に入るだろう。
「自己紹介が遅れました。 俺はユウシ。 自前の剣で勇者をやっている。 普通の身なりなのは・・・まあ街に溶け込むためだと思ってくれ。」
「ワシはアイルド。 盾役だ。 皆の最前線に立ち、この身体で皆を守っている。」
「オレはサイカ。 舞踏家って言われているが、純粋なのは拳法だ。 ほら、いつまでも申し訳無さそうにしてないで、自己紹介しようぜ。」
「は、はい。 ええっと、マノと言います。 魔術師をやっています。 その、先ほどは急な呼び掛けで申し訳ありませんでした。」
「ああ、いえ。 私も急なことで驚いただけなので。」
マノさんは先程の行動をかなり気にしているようで、私を見ては何度も申し訳無さそうに見てくる。 そっちの方がむしろ心配になるんだけど・・・
「僕から本題に入らせて貰いますが、あなた達が戻ってきたと言うことは・・・」
「・・・今回も駄目でした。」
「・・・そうでしたか。」
マウスレッドさんの問いに、ユウシさんは目を伏せながら言った。 今回も駄目。 魔王は倒せなかったことを意味する言葉。 私もなんとなくは察することが出来た。
「それで次の旅には、我々に足りない部分を補ってくれる人物を探しながら旅をしようと思ったのです。」
「足りない部分、とは?」
再びマウスレッドさんの問いに対して、今度は真剣な眼差しを見せたユウシさん。
「魔王と闘って分かったのです。 今の奴に対抗するだけの持久力や攻撃力がないことを。 ただ魔物を倒して得られた経験値だけではない、根本的な補助が必要だったのです。」
ユウシさんはそう答えました。 RPGとかで味方に補助魔法をかけたり、相手に悪いステータスを与えたりするキャラがいるかいないかで、戦況を大きく変えることはこの世界でも同じ様だ。
「で、そんな相談をしてる時に、マノが立ち上がって、あんたらのところに向かったってのが今回の顛末だよ。 結局なにがしたかったんだ?」
「ええっと、ホノカさんから出てる魔力が凄くって、それに私とは違う形の魔力だったから・・・」
「ふむ、そちらの彼女は魔術師だと仰っていましたね。 ある程度経験を積んだ魔法使いや魔術師は、相手の魔力を見ることが出来ますので、それでホノカさんに反応したと言えるでしょう。」
そう言えばそうだった。 私達は普通の人にしか見えないけど、魔法使い同士とかなら魔力は分かるんだったっけ。
「折角ですしお教えしましょう。 彼女はこの世界でも最も少ない「白魔導師」の職業を所有しています。 そしてそんな彼女も目下勉強中と言うところです。」
「白魔導師・・・! 我々が求めていたものその物のような存在じゃないか・・・」
「・・・あん? でもそれならオレらの所にいても別に変じゃない筈なんだが? なんでオレらの所に来なかったたんだ?」
サイカさんの疑問の後に私に視線が移る。 言いたいことは分かっている。 すぐにでもパーティーに合流させるべきだと、彼らを援助するべきだったと。 しかしそれにはれっきとした理由がある。
「・・・私は召喚されてすぐにあの王子に「無能」扱いされました。 そして挙句の果てには、私の事を「性奴隷」として扱おうとしていたのです。」
「せ・・・性奴隷・・・!?」
最後の言葉でマノさんが青ざめていくのは見なくても明らかだった。
「その事実は私からも証言しましょう。 マノさんが召喚されてから、改めて4回ほど異世界召喚が行われたのですが、いずれも王子のお眼鏡に叶わなかった、いや王子が潜在能力を見過ごしたせいで、男性は労働奴隷、女性は王子の性奴隷として今でもこの世界で生きています。 その場で殺したり、なにも知識の無い人間を放り出すことをしないだけマシかと思いますが、生き地獄なのには変わり無い、というのが現状です。 そしてホノカさんが召喚され、その事実を無くされる前に僕が引き取ったのです。」
話を聞いて勇者パーティーの面々は青ざめたり、怒りを露にしたりしていた。 もしかしたら自分達もそうなっていたのでは? そう考えれば必然と感情は表に出てくる。
「・・・だが我々に取っても喉から手が出る程の人材が目の前にいるのです・・・お願いいたしますマウスレッド殿! 彼女をなんとかパーティーに入って貰えないか、説得して頂けませんか!?」
ユウシさんはマウスレッドさんに椅子をずらしてまで頭を下げた。
「わ、私からもお願いいたします! 私だけでは出来ないことがホノカさんには出来るのです!」
「ワシからもお願いをしたい。 これ以上無駄にも近い敗北は繰り返したくない。」
「こんなことは思いたくはなかったんだけど、オレたちの実力不足な事もあるから、仲間は多くいれておいて損はない。 頼みます。」
他の皆さんも頭を下げてくる。 異様な光景とも捉えられるけれど、それだけ私の力が欲しいのは分かる。 分かるけれど・・・
「私は・・・」
「あなた達が次へ向けて旅をするのは何時ですか?」
すぐに答えを出せなかった私の代わりに聞いたのはマウスレッドさん。
「あ、あぁ。 今回は少し長めに取ろうと思っているんだ。 3日程は滞在するよ。 色々と落ち着きを見せたいし。」
「そうですか。 ではその間は街にいる、ということになりますね。」
そうして出たマウスレッドさんの答えに、勇者パーティーの皆さんはハッとする。
「但し答えはホノカさん本人が決めることです。 個人的に言えば僕は彼女を勇者パーティーに入れるにはまだ早いとすら思っているのです。」
「どういう事かお伺いしても?」
「彼女はまだ実戦経験が無いのです。 そんな状態で魔王との闘いには向かわせられません。 それに本人も言い淀んだように、彼女自身も色々と心の整理が出来ていないのです。」
「確かに急な迫り方をした気がします。 ・・・分かりました。 では3日目の昼に我々はこの街の門から出ます。 その時間までに来なければ、交渉は決裂、という内容でよろしいですか?」
「ええ。 僕も話はしますが、彼女の意思を尊重は致しますので、滞在中も無理を迫ることの無いように。」
マウスレッドさんとユウシさん達の間での約束が決まった。
「それでは僕達は家に帰ります。 僕達のお代を置いておきます。 それでは。」
そう言ってマウスレッドさんは勇者パーティーと離れる。 私も頭を下げた後にそれを追いかける。 そして勇者パーティーが見えなくなったところで、再び話をする。
「さて、ここからはホノカさんの言うことに従います。 猶予は3日。 彼らに着いていくのかいかないのか。 忙しく病み上がりなホノカさんに酷な質問を与えるようですが、どうかしっかりと考えて下さい。」
マウスレッドさんの言葉はとても柔らかかった。 恐らく私がどんな答えを出そうと受け入れる器量があるからである。
私の意思・・・この意思による選択肢が今後を大きく変えるのは、私でも分かる。 だからこそ後悔の無い選択をしなければならないのだと、私は思ったのだった。
ホノカはどのような選択肢をとるのか。




