新たな旅のプロローグ
「ふざけんな! あんの馬鹿国王ども!」
王への報告が終わった翌日の事 報告したのが夕方近くだったこと、そしてその後に作戦会議をする気力も無くなり、次の日にしようと一致したため、改めて作戦会議の場を設けたのだ。
近くのカフェで改めて今後の方針を話す前に、机の上に置いた布袋が飛び跳ねる位の勢いで机を叩いたサイカ。 布袋の口元は閉じていたが、もしも開いていたらあわや大惨事になっていたことだろう。
「サイカの言い分も分かるが、あの王達にはなにも響かぬことは分かっていたことであろう。」
「アイルドさんは良いのかよ!? オレ達の話を聞いてないのかって位の対応だったんだぞ! オレ達の頑張りを一蹴したような奴を、このまま好き勝手言われっぱなしってよぉ!」
「それを見返すために我々は旅をしているし、魔王の討伐の依頼を続けているんだ。 それにこの怒りはサイカだけでないのは分かるだろう?」
サイカの怒りの暴走を止める為に言ったユウシの言葉には、怒気を帯びていた。 勿論アイルドもこのまま頑張りを無駄にしたことを許すわけもない。 そんな空気の中で慌てふためいているのは魔術師であり最年少のマノである。
「あ、あ、あの、皆さん、落ち着いてください。」
その小さな声でも彼らを冷静にさせるには十分だった。 他の客もいると言うことも忘れてはいなかったものの、少々感情的になっていたのは、皆の反省点であった。
「・・・ふぅ。 済まなかったマノ。 我々が怒ったところでなにも変わらなかったな。」
「やっぱりマノがいなかったら、勇者パーティーなんてやってられなくなっていたかもな。」
ユウシとアイルドは自分の行動を恥じて、サイカはマノに何度も謝っていた。
「さて、落ち着きを取り戻したところで、反らそうとしていた本題に入ろう。」
ユウシがそう言えば表情が改まる。
「まずは魔王との決戦で気が付いたことを共有し合おう。 ・・・と言っても同じ場所で闘っていて、変化があれば我々も気が付いていることだろう。 それを踏まえた上で、我々には何が足りないと思う?」
ユウシの問いに対してすぐには答えは出ない、が手を上げたのはマノだった。
「ええっと・・・私達には回復役、というのか・・・その・・・補助を行う方が、必要なのではないかと・・・」
おずおずとマノは言うものの、その意見に反対するものはいない。 むしろそれが真理であるかのように皆が頷いていた。
「そうだ。 立ち回りからしても後方支援が必要だ。 攻撃支援してくれているマノだけでは心許ない訳ではないが、回復まで時間を回すことが出来ないのが現状だ。」
「回復薬を持ってるオレでも時間がかかるしな。 それだけで攻撃が止まるのは、ちょっとな。」
結論をまとめたユウシと、その事に関しては同じ意見を持っているサイカが意見を出しあった。
「しかし聞いた話ではこの世界での魔法は、知られているものはほとんどが攻撃魔法。 マノが知っている魔法は多いが、その中に支援魔法はない。 かなり厳しくなりそうだ。」
アイルドはその対応の確保の難しさを物語る。 いないものを探すのは容易ではない、という表れだ。
「分かってはいる。 だがそれでもパーティーとしてその人物の勧誘を優先しなければならないんだ。」
「でも本当にどうするんだ? そんな簡単に見つからないものを探してから行くのか? 時間がいくらあっても足りなくなるぜ?」
「うーん、勿論旅をしながら探すことにはなると思う。 最悪の場合は少し強引に勧誘することに・・・」
ガタッ
そんな風に話し合っていると、不意にマノが席を立った。
「マ、マノ? どうかしたのか?」
サイカがそう聞いたがマノはある一点を見るだけだった。 そしてそんな風に思っていたら、席を離れてそのまま走っていった。
「マノ!? 本当にどうしたんだよ!?」
反応が早かったサイカがそのまま追いかける。 ユウシとアイルドは唐突の事で驚きはしたが、この場から離れるのはお店側に失礼だと思い、2人に任せることにした。
「・・・あの人なら・・・」
マノは走りながら、ある人物に向かって行っていた。
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「身体の方はもう良さそうですね。」
「まだ魔法を使うにはもう少し時間は必要ですが、動く分には困りません。」
体調を崩してから3日ほど家で療養を行ったお陰で、今はこうして街を歩けるまでに回復した。 元々アウトドア派では無かったのに、この世界に来て結構な頻度で右往左往していた気がするので、体力のキャパシティオーバーというものなのだと思った。
「しかし療養している間も色んな方が来られましたね。」
「まさかあそこまで私の事を心配しに来てくれるとは思いもしなかったですよ。」
本当に色んな人がマウスレッドさんの家に訪れて、私の体調を心配をしてくれていた。 病院の人や同じ魔法使いの人ならばともかくとして、私が良く行く雑貨の店員さん、カレトさんがよく行く病院の子供達、足の悪かったお婆さんまで来てくれるとは思っても見なかった。
「それよりも良く私があのマウスレッドさんの家にいるって、知ってましたよね。 魔法使いの人達はともかくとして、私は他の皆さんには一切教えていないのに。」
「それに関しては僕達も少々驚きを隠せませんでしたよ。 魔法使いの家というのは、それなりの光学迷彩等による認識阻害を受けるはずなのですが・・・恐らくホノカさんが来てからその阻害に変化があったのでしょう。」
「え? それって私のせいで・・・」
「いえ、簡単に言えば「ここはホノカさんが住んでいる魔法使いの家だ」という認識に刷り変わったと言えるでしょう。 無害な魔法使いであることに変わりはないですが、そのような形に変化したということになりますね。」
それが良いことなのか悪いことなのか、私にとってはさっぱり分からなかった。
「とはいえこれもホノカさんが地道に街の人達と交流を行った賜物と言えるのではないでしょうか? このような交流の形は魔法使いの中でもなかなか異例と言えるでしょう。 勿論良い意味で、ですが。」
良い意味の異例って・・・褒め方がちょっと独特な気がするけれど、悪い気はしないので、特に指摘はしないようにしよう。
「さて、これからどちらに行きましょうか?」
「そうですね。 まだ少し早いですが、先にお昼を食べるのも・・・」
「あ、あの・・・」
そうマウスレッドさんとこの後の事を話し合っていると、1人の女の子に声をかけられた。 杖を持ってローブを被っているので、身なりは魔術師のようである。
「・・・あ、マウスレッドさんに用事でしょうか? それなら・・・」
「いえ・・・あなたに・・・です・・・はぁ・・・はぁ・・・」
息も絶え絶えにそう告げたその女の子。 もしかしたら病気の人とかぎいるのかもしれないと、彼女が落ち着いてから話を聞こうと思った。
「まずは深呼吸をして。 話は聞いてあげるから。」
「ありがとうございます。 ・・・ふぅ。 ・・・あの、あなたに、是非、協力をして貰いたいんです。 私達と一緒に、旅を、して貰えませんか?」
多分彼女の中で伝えたい文章を言葉にしたのだろう。 だけど私には理解するには時間がかかる案件だった。
「マノ! いきなり走り出したからびっくりしたぜ! ったく、なんだってんだよ。」
後ろからまた別の人物が現れる。 口調はかなり男勝りだが、その人も女性だった。 その2人を見てマウスレッドさんはなにかに気が付いたようだった。
「もしかして、今勇者パーティーの方々は帰還されているのですか?」
「あ? あぁそうだが・・・あんたなんでそれを知ってんだ?」
「申し遅れました。 僕はあなた達を召喚した魔導師の1人になります。」
そのマウスレッドさんの言葉に、今度は2人が驚く番になったのだった。
今回から新しい章扱いでこの物語をお送りしていきます。
やっぱり話に出たからには・・・と思いまして。
それと今回から少々不定期投稿になるかと思います。 一応ベースは週一で考えていますが、進捗率によっては・・・と言った具合です。
これからもどうぞお付き合いよろしくお願い致します




