出戻りのエピローグ
今回は勇者一行の話
そしてあとがきにお知らせがあります
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
ユウシはボロボロの姿になりながらも立ち続けていた。 他のメンバーもボロボロではあったが決して倒れない。
何故ならば魔王を目の前に倒れてしまっては、それは敗北を意味するからである。 最早気力の残る限りの大勝負であった。
「クックックッ。 以前よりは粘ることが出来たようだな。」
魔王は嘲笑うかのように勇者パーティーを見ている。 魔王は余裕綽々と言った具合だ。
(そうだ。 以前に比べれば遥かに魔王にダメージを与えられているはず。 なのにあれだけの余裕・・・こちらの攻撃は着実に当たっていたのに、奴の体力が見ても分からない。)
ユウシは焦燥を感じていた。 あれだけこちらが全力に近い攻撃を行っているのに、まるで効いていないかのように佇んでいる魔王に、自分達の無力さが重なるようで。
(全員が満身創痍状態・・・だが魔王はまだ奥の手があるような素振りがある。 ここでやられては、その真髄を見れぬまま終わる・・・)
「・・・っ! うおおおおおお!」
ユウシは既に動かなくなる寸前の体に無理矢理渇を入れ、魔王に自慢の剣を振りに飛び出した。 せめて一矢を報いる為に。
「その粋は認めるが・・・やはりお前達では力不足なのだよ。」
魔王の手のひらから魔力が溜まっているのが分かる。 勇者パーティーはそれが分かっていても、サイカはその隙に懐に飛び込む体力は無い。 マノは詠唱が出来ない程に魔力を使いきり、杖で支えながら立っている。 アイルドも踏ん張りながら盾を構えるが、ユウシよりも前に出ることは叶わないだろう。 ユウシも動いた体が攻撃を避けることを脳は命令しなかった。
(どうせやられるのなら・・・奴の攻撃を見てから・・・)
「ここまで頑張った褒美、そして満身創痍の状態でも尚我に攻撃を仕掛けた敬意として、終わりに良いことを教えてやろう。」
それがユウシ達に聞こえているのかいないのか、魔王の攻撃が開始され、そして光に包まれるように勇者パーティーを飲み込む。 そんな魔王が最後に言い残した言葉は
「こう言った言い方は不思議だと思うが、今の我の残った体力は・・・半分だ。」
勇者パーティーにとって、途方にも近い魔王の力の差の末端だった。
目を覚ませばそこは教会の祭壇の上だった。 前回の魔王戦、及び魔王城内部でパーティーのメンバーが全滅した時から、この場所に飛ばされるようになった。 しかもあれだけボロボロだったはずの体や服も全て元通りの状態で。
「お目覚めになられましたか勇者様。 お体の方は?」
「・・・王達には後で報告に行く。 今はそっとしておいてくれないか?」
「畏まりました。 準備が出来次第お声かけ下さい。」
神官が去っていき、ユウシは表情を曇らせる。 王に報告する準備などほとんど必要ない。 伝えたいことだけ伝えれば良いのだから。 しかし彼らには王の元に行く気力など今は残っていなかった。 心の準備が必要だった。
ユウシが隣を見るとマノとサイカはまだ眠っているが、その隣の一人分だけ空いていた。 振り返るとそこに哀愁を漂わせたアイルドが立っていた。 彼はユウシよりも歳上であり、副リーダーみたいな立ち位置であり、皆を守る盾役なのだ。
「アイルドさん・・・」
「また・・・皆を守れなかった・・・ワシは盾。 皆を守る盾なのに、だ・・・」
「あなた1人のせいじゃない。 結局魔王が、我々を未だに凌駕しているだけです。」
何の励ましにもならないのはユウシが一番分かっている。 しかしこうした傷の舐め合いでもしなければ、これから振りかけてくる塩には堪えられない。 ユウシもアイルドも、その事だけが嫌な気分を増幅させていた。
「王にはどう伝える?」
「当然ありのままの事を伝えますよ。 最も明らかに向こうも話し半分で聞いているだけだと思いますがね。」
魔王や魔王城からパーティー全滅で帰還した後にその後の報告を行ったが、見向きがあるだけマシ。 その後の事は一切考えてはくれていないのだ。 義務報告のようでユウシ達は正直嫌気が差し始めている。
「この様子では王妃はまだ帰ってきて無いのだろう・・・」
「・・・ここで考えてもしょうがないです。 行きましょう。 彼女達が起きて少し経ってから。」
聞く耳を持たない王の元へと足を運ぶことに決めたユウシ。 少しでも改善の手を見いだせれば、と叶わぬ望みを唱えながら。
「それは実のところ魔王が強いのか? お主らが弱いのか?」
勇者パーティーが事を全て話した上で、王から返ってきた質問がこれだった。 受け答えに困る質問を投げ掛けられて、ユウシは内心頭を抱えた。
「我々もあの魔王城へ向かう途中で、様々な経験や戦闘を積んでいきました。 しかし魔王はその力を軽くあしらうかのような力を持っていた、という話しでございます。」
「成る程、それでは魔王が強い、ということになるのだな。 して? お主達が敗北した原因は? お主達が強いのならば魔王に負けない。 そうではないか?」
「お言葉ですが我が王よ。 魔王は言わば人ではない。 いかに我々が強く、そして更なる強化を受けた今の我々でも太刀打ちするのがやっと、というのが現実でございます。」
アイルドがそう言うと王も隣で退屈そうに聞いていた王子も首をかしげる。 今の話を聞いて、これ以上理解していないとは思えないが、報告をした二人の目には、あまりにも滑稽で憐れにすら見えた。
「それはお主達が装備している武器のせいでは?」
王子から放たれた言葉に最早脱力すら感じたが、ユウシ達はそれでもなお膝をついているしか出来なかった。
「その武器が魔王に届かないほどの火力しか持ち合わせておらぬから相手にダメージを与えられないのでは? もしくは防御が薄いので、魔王の攻撃を通しやすいとか。」
王子の言っていることが最早戯れ言にしか聞こえなくなっていた。 後ろに控えているマノはため息を吐き、サイカは怒りを何とか殺して頭を垂れている。 彼女も本当なら喰ってかかりたい気持ちなのだろうが、自分がそんなことをしても不利益になること、勇者パーティーを除隊される可能性を考えれば、黙っていることしか出来なかった。
「それもそうだな。 では・・・」
そう言って王は側近に数口なにかを話すと、その側近はその場を離れたと思ったらすぐに戻ってきて、ユウシに膨らんだ布袋を渡して側近に戻っていった。
「その中には金貨1000枚入っている。 それを使えば大体の物は購入できるだろう? それで更に強力な武器と防具を購入して、改めて魔王に挑む事を、そしてこの世界に平和をもたらすのだ。」
「・・・っ! ・・・」
恐らくは王達もこれ以上話すことが無いのだと言いたいのだろう。 ユウシはその対応に怒りを覚えつつも、その感情を圧し殺し、皆をすぐに玉座を後にするように、言わずとも分かるように去っていった。
これが敗北を期した勇者パーティーの末路。 しかしこの事に対して王達以外には誰も咎めることはない。 王の城から出てきた彼らの姿はどう映っているだろうか?
しかし彼らの運命は、また新たなる歯車と共に動き始めることになるのを、まだ知らなかったのである。
今回で毎日投稿の方を終了致したいと思います。
元々はノベル大賞に出展するために投稿をしていたので、本来ならば来月から始めるものでした。
明日も投稿は致しますが、投稿日程ついては改めて考えさせて下さい




