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別の街へと

「ねぇホノカ。 明日はなにか予定はあるかしら?」


 ある日の昼下がり。 私はカレトさんのお手伝いをしていると、同じくお手伝いをしているルビルタさんから声がかけられる。


「ええっと・・・特にご予定はありませんよ。 警備の仕事は明日行こうと思っていますし、結界の当番もまだです。」

「そう。 それなら明日は私の付き添いをして貰えるかしら。」

「付き添い、ですか?」


 ルビルタさんからのお願いなので断ることはしないけれど、用件が少し異なるようだ。 付き添いなんて言い方をするのは意外かも。


「ここから離れた別の街に用事があるの。 別に荷物持ちとかそんなのじゃないから安心して。」


 なにを心配されたのかは分からないけれど、そんなことを指摘しようとは思ってはいなかった。 でもルビルタさんがそう言うってことは、買い物をするのだろうか?


「折角だし街の中も案内するわ! 私達だけで楽しみましょう?」

「ルビルタ。 あまりホノカさんを振り回してはいけませんよ?」

「分かってるって。 ちゃんとやることもやってくるし。」


 会話の流れからして仕事関係なのかな? 全貌は見えては来ないけれど、明日にならなければ分からないので、私はカレトさんのお手伝いを続けるのだった。


「ルビルタさんは飛行魔法を使わないのですね。」


 そして翌日になって私はルビルタさんが用意した馬車の中でそんなことを聞いた。


「私の魔法の使い方は知ってるでしょ? 詠唱するものじゃないし、魔力を攻撃に乗せているだけだから、こう言ったのには不向きなのよ。」

「では足に風魔法を乗せてみるとか? そうすれば浮くことは出来るかと・・・」

「実はそれ昔にやったんだけどね。 私の場合は魔力を放出するだけだから、滞留させるのが難しいのよね。 出来ない訳じゃないんだけど、持続させるための集中力とかって考えたら無理だった。 私は気が短いからね。 それに飛べないことが不利益になってるとはあたしは思ってないし。」


 特に気遣った訳でもないのにルビルタさんは訂正をするような言葉を紡いだ。 やっぱり顔とか雰囲気とかに出やすいのかな?私って。


「空を飛んでると近くに行かないでしょ? 間近で色々見れるのも楽しいのよ。 ほら、あそこに鹿がいたわ! 多分これから狩りに行くのね。」


 そんな風に楽しそうに笑うルビルタさん。 空を飛ぶ魔法を使えないのを決してデメリットとは思っておらず、むしろ自分にとってはメリットに変えている行動や楽しみ方をしている。 視点や考え方を変えれば見えてくる世界はもっと広がるということなのだと思う。


「それにね。 お出掛けっていうのは、行ってから帰るまでがお出掛けなのよ。 トラブルもお出掛けの醍醐味ってね。」


 そうウインクするルビルタさん。 とても今の私には出来ない余裕がそこにはあった。


「それじゃあまた夕方にね。」

「畏まりました。 またのご利用お待ちしております。」


 そうして街に入った後で馬車の人とはお別れをして、街を歩き始める。 私達が普段住んでいる街とは違った賑わいを見せていて、私達の街がヨーロピアンだったのに対して、今の街はアメリカンチックな雰囲気を見せていた。 どっちも行ったことが無いので、何となくのイメージにはなるけれど。


「そういえばこの街でなにをするのか聞いていなかったのですが・・・」

「ああ、そうね。 ここで買い物をするんだけど、その前にちょっと寄りたい場所があるの。」


 そう言ってルビルタさんはスタスタと歩いていってしまうので、私はただその後ろを付いていくことしか出来なかった。


「さ、着いたわよ。」

「ここって・・・」


 ルビルタさんが立ち止まって着いたのは、道場のような場所でした。 その中に入っていくルビルタさん。 私も連れて中に入る。 中を歩いていってある部屋の障子に似た扉を開くと、中で練習をしていた人達が私達に目を向けた。


「あ、ルビルタさん! ご無沙汰しております!」

「ルビルタさん! またご指導お願いしたいです!」

「馬鹿! そんな軽々と受け入れるわけないだろ!」


 そこに集まったのは全員女性でみんな柔道着のような服を着ていた。 ワイワイと騒がれている中、奥から別の女性が現れたのが見えた。


「どきなあんた達! ルビルタはあたしに用事があるんだよ!」


 その声でみんなが道を開けた。 風貌からしてもこの道場のお偉いさんなのかもしれない。


「ったく、何しに来たんだい? 呼んだわけでも無いのに。」

「弟子が師範に顔を見せに来るのに理由なんている?」

「・・・はっ。 昔っから変わらないねぇ。 ここから離れたからもっと可愛げになるかと思ったのに。」

「私はこういう性格でしたよ元々から。 ちょっと買い物をしに来たついでに寄っただけ。 道場も繁盛してるみたいだし。 心配はしてないけど。」

「そうかい。 また時間があったらこの子らに指南してあげな。 あんたの話を聞いて、手合わせだの指南だの耳にタコが出来る位言ってくるからね。」

「またその時にね。 それじゃあね。」


 そう言いながらすぐに道場を去ってしまう。 私は頭を下げてから、ルビルタさんの後を追いかけた。


「良かったのですか? もっとゆっくり話をしていっても私は構わなかったのですが。」

「そう言ってくれるのは嬉しいけどね、目的を忘れてまであそこにいる必要は無いのよ。 ま、雰囲気で分かったと思うけど、私はあそこの門下だったの。 2、3年くらいしかいなかったけどね。」

「それでもあれだけ慕われているのは素晴らしい事だと思います。」

「私、そんなに偉い人じゃないわ。」


 ルビルタさんはかなり謙遜しているようにしているけれど、彼女の格闘術の腕は素人の私でも分かるくらいに凄いもの。 2、3回ほど1人で影組手をやっている姿を見ていたことがあったけれど、一撃一撃が必中し、まるで近付いてくる敵は寄せ付けない程に型が綺麗だったのだ。 私はそれをこっそりと絵として描いて、魔力の流れや放出の仕方を、自己解釈しながら練習として使わせて貰った事もあった。 勿論バレてしまっては元も子もないのですぐにイレイサーで消したけど。


「さて、顔出しも終わったし、買い物買い物♪」


 そうしてご機嫌になるルビルタさん。 あれだけの人から慕われているのに、それに驕らずちゃんと前を向ける人なんだと思い、私はなんとなくルビルタさんは「お姉様気質」のある人なんだなって思った。


 そんなことを考えていたら、ふと後ろの方から視線を感じた。 誰かが私を見ている?


「ホノカは振り向かないで。 あの子はまだ無害な方だから。」


 前を歩いていたルビルタさんが私のところまで歩幅を合わせてそう声をかける。 それでも気になったので、こっそりと後ろへと「スコーピー」を発動させる。 この手の魔法は結構使っているので、呪文名を唱えるだけで使えるようになっていた。 そして使う時は片目を瞑るようにすれば、前方を見つつ、別の視野を見ることが出来ることが分かったので、今ではこのように活用している。


 そしてそのスコーピーで見えたのは1人の女子。 高校生くらいの女の子が物陰から見ていた。 ルビルタさんの言う「無害」とはどう言うことか分からないけれど、あの子は私ではなくルビルタさんを見ているのは、さっきのルビルタさんの反応で分かった。


「すみません。 視野魔法を使って確認してしまいました。 あの子は?」

「そっか。 あなたにはそれがあったわね。 なら話しても大丈夫か。 あの子はここのゴロツキに絡まれていた所を私が助けて以降から、この街に来ると私を影から見るようになったの。 ただ見ている「だけ」だから無害な訳。 問題なのは・・・」

「そこの女! ルビルタ様から離れなさい!」


 その怒号に前を向くと、ヒステリック状態になっている女性が、私に向かって指を指していた。 あぁ、もしかしてこの人みたいなのが「有害」判定されてる人? そう察しつつ横のルビルタさんを見ると、深いため息を付いていた。 つまりそういうことみたい。


「あんたみたいな女が高貴たるルビルタ様の隣にいるなんて言語道断! 穢らわしいその姿を見せないためにも今すぐに消えなさい!」


 この人昔何かあったのかな? ここまで来ればむしろ哀れみすら思えてくる。 それは恐らくルビルタさんも思っているようで、顔が天を向いていた。 だけどルビルタさんは一呼吸いれるとそのヒステリックな女性に目を向けた。


「もうハッキリと言っておかないとキリがないみたいだし、この際だから忠告と宣言をしておくわ。」


 そう言うと私の肩を掴んで、自分の元へと引き寄せた。


「なっ・・・!?」

「確かに私の近くに女性がいることに関して言えば、私自身も節操無しな部分があったかもしれない。 けどね、今私の隣にいるこの子は私達の家族になった子なの。 つまり他人の子じゃない、私達家族が認めた大事な一人娘よ! 付きまとうなとは言わない、遠くから見ている分なら文句は言わない。 だけど私の隣にいる子を侮辱するのはいい加減私も腹が立ってきた! 今後同じ様な事を行えば、例え男だろうが容赦しない! その覚悟が無いなら私の前に現れないことね!」


 大声で宣言している辺り、恐らく物陰から見ている子達にも言っているのだろう。 常に見られているということが、どれだけ本人にとって気が散る事か。 そして自分以外の大切な人を侮辱されたことにどれだけの怒りを覚えたのかを、今この場で高らかに言ったのだ。 それを聞いたヒステリックの女性はと言えば・・・


「か、家族・・・つ、つまり、ルビルタ様に、あれやこれやと、て、手ほどきされて・・・ひぃぃぃ!!!」


 謎の叫びをあげながら去っていってしまった。 手ほどきって・・・一体なにをどう想像すればそうなるのだろうか? そんな風にを眺めていると、ルビルタさんが腕を緩めて私を解放した。 そして深いため息をついた。


「こんなことをする必要も無かった筈なのになぁ・・・振り回してはないけど、巻き込んだのは事実だし・・・」


 何時ものような血気盛んなルビルタさんとは真逆かのような弱々しい反応を見せていた。 だけど自分自身を守る以外にも、私の尊厳を守ってくれた。 その事を私は知っている。 だから私は微笑んで、ルビルタさんに声をかける。


「いいではないですか。 ルビルタさんも私も無事なのでしたから。 お買い物、済ませて帰りましょう?」

「ホノカ・・・あなたって本当に、息をするように気を遣ってくれるわね。」


 そのため息は恐らくは安堵のため息だろうと、私は感じ取った。


「さてと、それなら気分転換と行きましょうか!」


 そうして私達2人は街での観光を堪能するのだった。

ちょっとだけルビルタの事を書きたくてこのような措置を取りました。

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