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間幕 その頃勇者一行は

今回はホノカが色々と頑張っている同時刻でのお話

色んな所で会話に出ていた勇者一行の話です。

「いよいよ明日、再び魔王城の攻略を試みる。」


 ここは今魔王城に最も近くにある村の酒場。 その中でテーブルを囲う4人の男女の姿がある。 言葉を発した茶髪でハリネズミのように尖らせた髪の若き男。 彼はこの世界に召喚された「剣使いの勇者」である。 身なりは周りに合わせるために村で見繕った服を着ている。


「ここまで戻ってくるのにもそれなりに時間が掛かってしまったな、ユウシ。」


 その勇者、ユウシに声をかけたのは、白肌でありながらも強靭な肉体を持つ大柄な男。 金髪オールバック、そして一歩間違えればその表情だけで相手を戦意喪失まで持ち込めるような顔つきの妙齢な男も、その肉体を買われて、このメンバーの(タンク)役として担っていた。


「ああ。 だが以前に比べればまた早くなっている。 我々が成長している証拠だ。 ちゃんと成長した・・・」


 ユウシと呼ばれた青年は苦虫を噛み潰したような表情をする。 自身の成長に喜びを感じる事が出来ていないのだ。


「これだけ成長した私たちでも・・・また・・・魔王にいなされてしまうのでしょうか?」


 弱気に発言するのは黒髪を簪で纏め上げた少女。 性格としても弱々しさを感じる彼女は魔術師の職業を持っている。 自身が持っている杖もここまでの道中でお世話になっている代物で、彼女の魔法を最大限に出せる。


「大丈夫だってマノ! 次は絶対に勝てるからよ! 気を落とさず行こうぜ!」


 マノと呼ばれた魔術師に活気よく声をかける赤髪短髪の男勝りな女子は舞踏家。 華奢な身体とは思えない程の強さが滲み出ていた。


「サイカの言う通りだ。 我々が弱気になればそこに魔物は付け入ることになる。 ()()はあるが、大半は我々と敵と見ている。 心配するな。 皆の事は私が必ず守る。」

「ありがとうございます。 アイルドさん。」


 ここで同じ卓で共に食事をしているこの四人は、魔王討伐を目的として召喚された一行である。 最初はユウシ1人での旅であったが、後に今のパーティーへと成し遂げていった。 実力も既に折り紙付きで、そこらの冒険者よりも比べ物になら無いほど強くなっている。


 とはいえ魔王城への挑戦はこれが初めてではない。 ある時は入る前に強力な魔物にやられ、またある時は魔王の側近に当たってしまい、自分達の実力にそぐわないでやられてしまった。 幾度も挑戦はしているものの、魔王と相対したのはまだ二度しかない。 自分達が強くなったこと、そして側近に会わなかった等という幸運も重なって魔王と戦う機会も出来た。 だがその魔王との戦いも、今までの魔物とは比べ物にならない圧倒的な強さを前に敗戦を記したのも心に深く刻まれている事だろう。


「それでどうするんだ? 正面突破はほぼ確定で無理だとしてよ。 また前みたいに裏口でも使うか?」

「いや、それは出来ないだろうな。 前回の事で警備も厚くなっている事だろう。」


 サイカの質問にユウシは答える。 この世界はゲームではない。 コンピューターの配置プログラムと違い魔物も生きているし、知恵だってあるものが存在する、 毎回同じ事をさせてくれるとはユウシには思えなかった。


「二手に別れて敵を分断させますか?」

「それも止めた方がいいな。 戦力の分断は我々としては避けなくてはならない。 戦力に差が生まれてしまうし、なにより助けに行くことが困難になる。 得策とは言えないだろう。」


 マノの提案はアイルドの正論に潰される。 ただでさえ少ないパーティーを分断して、命の危機に晒されれば、それこそ勇者一行としては目も当てられ無くなるだろう。 彼らは失敗を避けたいのではない。 魔王との戦いに万全を期するためにどうすればいいのかを常に考えなければならないのだ。 どの世界でもそんなに甘くはないのだ。


「・・・いや、今回は相手を錯乱させるのも視野に入れていこう。」

「しかしあまり戦力を分断させるのは・・・」

「魔物全員を相手にする必要は無いと言うことだ。 知性が低い魔物を優先的に誘き寄せれば恐らくは・・・」

「それならオレに任せな! こん中ならオレが一番素早く動けるし、回避や()()()は得意だからな。」

「・・・機動力面には問題ないか。 それならば我々もなるべく接敵せずに魔王のお膝元に近付けるかもしれないな。」

「なるべく無理はしないで下さい。 サイカさん。」

「必ず合流してやるさ。 オレだって最初の頃に比べたら強くなってるんだ。 足手まといなんて御免だからな。」


 1つの作戦が決まったところで、英気を養うための料理が卓に並べられ、それぞれの料理を食べた後に、彼らが泊まっている宿へと戻り、男女別れて部屋へと戻っていった。


「・・・っ・・・」


 今は1人のユウシは苦悩した。 確かにこのパーティーの中ではサイカは一番素早いし、元々の拳法の腕により魔物の攻撃も避けることが出来る。 だが身体1つとはいえ魔物の攻撃を避け続けることなど不可能。 ユウシにとっても苦渋を強いられた選択だった。


「俺達は・・・この世界に召喚された勇者一行なんだろ・・・魔王を前に震えが止まらないとは、情けないにも程があるんじゃないのか・・・」


 ユウシだって最初こそ異世界召喚、しかも勇者の力を持っていると言われて、それはそれは大いに喜んだ。 仲間も増え、旅を楽しむ余裕だって出てきていた。 だがその余裕は魔王の圧倒的な強さの前では、ただの浮かれた旅人でしか無かったことを諭された。 自分の弱さを知り、皆の知らぬところで恥じたのだ。


 そんなことを思っていると、不意にドアが開けられる。 入ってきたのはアイルド。 2人一部屋なのでアイルドが鍛練で戻ってきたのだ。


「すまないユウシ。 もう寝るところだったか?」

「・・・アイルドさん。 俺は・・・俺の選択肢は間違っていると思いますか?」


 ユウシはアイルドにそう問い掛ける。 この世界に来たのはユウシが先だが、年齢的に見れば10歳近く差がある。 下が上に意見をするのは当たり前の事である。


「・・・人生の選択に正しいはない。 だが君の場合は命運を掛けている身として、責任を重たく感じていることだろうな。」


 アイルドもそんなリーダーに対して、優しさの言葉を重ねる。 背中を守れる存在として、自分の背中を守ってくれる存在として。


「だがな、君の意見には皆が賛同した。 失敗を恐れる気持ちは分かる。 だが恐れず進めとは私も言わない。 恐れを知らない愚か者など獣に過ぎん。 君は、違うだろ?」

「アイルドさん・・・ 分かっています。 自分には使命が与えられていることを。」

「勇気や自身を持てとは私も言えない。 だが己の選択を間違えたと思うのは、その選択で本当の失敗をした時だ。 始まる前から考えていれば気負いをし、本来の力を発揮できない。 今は明日に備えるとしよう。」

「ありがとうございますアイルドさん。 貴方が仲間になってくれて、本当に心強く思います。」


 ユウシはアイルドに感謝し、明日のために床につくのだった。


 翌日、村の皆に見守られながらユウシ達は魔王城へと歩みを進める。 眼前には見えているものの距離感は全く違うものになっている。 間近まで来なければその大きさなのではないかと思うくらいに。


「こうして魔王城に挑むのは何度目だ?」

「まだ数える程しか入っていません。 ですが何度来ても心を締め付けられるような思いです。」

「慣れてしまっても困るがな。 さて、昨日決めた作戦で行くわけだが・・・ ユウシ、大丈夫か?」

「・・・あぁ。 既に腹は据えてきた。 こんなところで立ち止まっているわけにも行かないだろう。 我々は魔王を倒す。 それだけを目的としてこの魔王城に挑むのだ。」


 魔王城の門の前に4人は立つ。 ここから開けばすぐに魔物達が襲ってくる事だろう。 だが引きはしない、彼らはその為に来たのだから。


「行こう。 戦いは既に始まっているのだから。」


 そうしてユウシは魔王城への扉を開くのだった。

この物語の主人公はホノカですので、第三者視点でお送りしました。

物語の布石としては十分では無いでしょうか?

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