冒険者にだって
今回も自警団のお話を書かせていただきます
「白魔導師!? 噂ばかりが飛び交う夢物語だと思っていたのに、実在したんだ・・・」
「目の前でこうしてお前を治してくれたんだ。 本物だよ絶対にな。」
モディさんとメディさんが私を見てそう称えてくれる。 因みにモディさんの方がお兄さんなのだそうだ。 名前からすると逆な気がするけれど。
「それにしても冒険者ですか。 なにかギルドハウスのようなものがあるのですか?」
「ああいや、俺達はそもそも旅で冒険者をやっているだけだ。 実際に依頼を受けたことはねぇよ。」
「商人の護衛とかが道中での依頼。 街についてからは草むしりや建築の手伝い、子供達のお守りとかでその場しのぎの生活みたいなものさ。」
旅をする上での便利屋ってことかな? 確かに2人ともそれなりに体つきは良いらしい。
「モディにメディと言ったな。 しばらくこの街に滞在するなら、自警団の仕事があるぞ。 最もホノカと同じ日雇いになるだろうが。」
「いいんですか!?」
「ああ。 早急に動ける人間は1人でも多くいる方が、自警団としてはありがたいからな。」
「それなら是非お願いします! 兄さん、それなら宿探しからしようよ!」
そう言って2人は街の中に入っていった。 ミシル団長もかなり太っ腹な部分があるから、自警団としても安定するんだろうなぁ。
「さてと、あんた達のお昼の時間が無くなる前に、昼食を食べてきな。 戻ったらそのままの面子で見張りをしてもらうからね。」
「その事は副団長にお伝えしますか?」
「・・・いや、あいつはどうせ夜の事しか頭に無い。 変に引き継ぎされるのも面倒だ。 分かる人間に話を通しておけばいいさ。」
「分かりました。 それでは我々は一度離れます。」
カナッツさん達のやり取りを見ながら、他の人が移動したので、私もその後ろを付いていく事になった。
「今日の事で色々な事を知りたいと思いました。」
お昼を終えて私達は門の上の見張り台のような場所から遠くを見渡している。 そんな時にふと私はそう言葉にした。
「知りたい、とは?」
「この街、いや、この世界のことも知らないことだらけですけれど、皇女様の事、冒険者のこと、魔法使いの事。 とにかく召喚された私には、覚えるべき事が沢山あるようだと、モディさんやメディさんを見て思ったのです。」
魔法使いだと知らされて、白魔導書を読んでから1ヶ月。 私が感じ始めたのはそんな想いだった。 とはいえ前の世界でも自分の知りたい事は山ほどあった。 だけどこの世界ではその比ではない。 知らないことが多すぎる。 ネット社会で調べられない情報は自ら聞いて回るしかない。
「ホノカさんはとても勤勉な方なのですね。 だから魔導書にも選ばれた。 納得です。」
ララストさんからそう感心されてしまった。 前の世界ではあんまり勉強は得意じゃなかったんだけどね。
「冒険者かぁ。 俺も目指そうとしていた時期があったもんだ。」
「ソトカさんならなれそうなものですが、何故農家、家業をお継ぎに?」
ソトカさんの呟きにカナッツさんは問い掛けた。 無論外の警備をしながらだが。
「さっきギルドハウスの話があったろ? この街にもあるにはあるのは自警団の巡回範囲内だから知ってるだろ?」
「ええ。 何度も見てきています。 ホノカさんとはまた別の機会で行くことになると思いますので。」
「そこでよう、最初こそ武器の手入れだったり、魔物討伐だったり楽しかったんだ。 だがある日に依頼から戻ってきたパーティーがギルドハウスを荒らしてな。 実力者だったから厳重注意と次回の依頼の減給で終ったが、正直あの光景を見て「自分はああはなりたくないな」って思えてな。 冒険者稼業で培った肉体改造を施して、農業に専念したって訳さ。」
「誰も彼もがモディさんメディさんのようにはならないということですね。」
「結局は実力が物を言うような場所だからな。 仕方ないと言えばお仕舞いだぜ。」
隣の芝は青く見える、というものだろうか? ソトカさんの背中は少し哀愁が漂っていた。
「・・・ん。 カナッツさん。 あの冒険者、少し挙動不審になっていますが。」
ソトカさんの話を終えて、私達はララストさんの声に見ている方向に目を向ける。 全員望遠鏡を覗き込み、辺りを見回した。
「どの方ですか?」
「あの白髪の細い男です。 かなり軽装である上、先程から他の人のなにかを見ているようです。」
「荷台を見てるんじゃないか?」
皆さんがあれこれと意見を言っている中でも私は望遠鏡と自分の持ってきていた紙と書きやすくするために加工した板を交互に見てその人物を書き写していた。
「こんな感じでしょうか?」
「・・・凄いですね。 望遠鏡越しとはいえここまでハッキリと特徴を捉えているなんて。」
「こう言った物は得意でしたから。」
絵を描く上で必要な技術だと思って、同じ目標物を色々な距離で描いてみたものである。 こんなところで役に立つのは複雑だけれど、宝の持ち腐れよりになる心配は無さそうだ。
「・・・ん。 動きがあったぜ? あいつ荷台に乗りやがった。」
「どの荷台か分かりますか?」
「・・・あの馬を2頭連れている馬車だ。 カーテンがされてるから中が見えない。」
「降りて報告しに行きましょう。」
私達は見張り台から階段を使って下にある事務所のような場所に行き、ミシル団長へと報告をした。 例の馬車はまだ来ていない。 私も自画像をミシル団長に渡して、人相を確認して貰った。
「了解だ。 見張り台には別の奴を向かわせる。 お前達は馬車が来るのを待っているんだ。 この顔は恐らく何らかの理由があるだろうね。 この街に入りたくても入れない理由が。」
「人相だけで分かるんですか?」
「これでも色んな人間を見てきたからね。 見た目だけで判断はしないさ。 あんたも行きな。 馬車を見逃すよ。」
事務所を出た私は既に引き留める態勢に入っていたカナッツさん達と合流する。 そして数分後、例の馬車が来たので、その馬車を停めるように促した。
「ん? なんだなんだ?」
「お忙しいところ申し訳ございません。 少々荷台の確認をしたいのですが。」
「え? 荷台? この街には結構世話になってるんだがねぇ。 それに通行料もちゃんと払ったよ? 割引はしてもらったけれど。」
「いえ、お客様を疑っているのではなくてですね。 知らぬ間になにか面倒なものが入ったのを、見張り台から確認したんですよ。」
そうカナッツさんとララストさんは会話をしている。 そんな中で私はある魔法をかけた。
「「見えざる箱を熱で示せ モグラーフ」」
そうすると荷馬車の中や外を色の変化で探す事が出来るようになる。 こう言った白魔法は自分にしか掛けられないのが難点だけど、使用後の効果は絶大だ。 今の魔法も簡単に言えば今の私の目はサーモグラフィのようになっていて、物と人とを温度で分かるようになっている。
そして中を覗いてみると、青い背景の中に動く赤い楕円があった。 それが何かから降りたような仕草をしていたので、近くで見ていたソトカさんの近くによる。
「さっきの人、恐らく向こう側に降りています。 先回りして確保できますか?」
「了解。 悟られないようにこっちも動く。」
私を影に上手いこと馬車よりも前に動くソトカさん。 そして赤い楕円が動きを激しくしたその瞬間をソトカさんは見逃さず、すぐに動いたけれど向こうの方が動きが素早かった。
「くそっ! 腐っても冒険者か!」
このままでは彼に逃げられるそう思い私はモグラーフを解いて、白魔導書を取り出して、すぐに別の呪文を唱える。
「「動力に加速を クイック」!」
前にマウスレッドさんに唱えた事のある「クイック」。 だけどあの時は呪文の事を重視していたせいで、前口上の存在を忘れていた。 今回はちゃんと前口上もあるので効力は上がっているはず。
「うお・・・らぁ!」
急激に速度が上がった事で制御が効かなくなりそうになりつつも、なんとか荷台から出てきた人物を伏せることが出来たソトカさん。 そして伏せた人物は案の定私達が見張り台から見ていた人物だった。
「わ、悪いことをしたのは分かっている! でもここに来る前に盗賊に金目の物と食料を奪われてしまって、ご飯も2日程食べてないんだ! 街に入ればギルドハウスがあるから、そこで改めて通行料を渡そうと思ったんだ! 頼む! 1日だけ猶予をくれないか!?」
そう話す男性。 冒険者なりのプライドが邪魔をしたのだろうか。 門の前で色々と不振な行動をしていたのはそう言った罪悪感が残っていたからだと思う。 そんな伏せられている男性の前に、いつの間にかミシル団長が前に立っていた。
「そんなことは許さないよ。 1日も猶予を与えたらそのままトンズラこくかもしれないだろ?」
ミシル団長の言う通りだ。 どんな理由であれ悪いことを人物というのは自分の罪から逃れる術を考えると私も思う。
「そんなことはしない! だから・・・」
男性が次の言葉を言う前に、ミシル団長は3本の指を左手で男性に見せる。
「3日間だ。 3日間ここで働けばその通行料をチャラにしてやる。 その間はこの事務所で寝泊まりはしてもらうが、あんたを逃がさない為の監視だと思いな。」
「おお・・・! お慈悲をありがとうございます・・・謹んで務めさせていただきます・・・!」
そんなやり取りを見ていると、中身を確認し終ったカナッツさんとララストさんが後ろからやってきた。 荷馬車は既に出ていった後だった。
「あの人が荷台を選別していた理由が分かりましたよ。 食品関係でなく、衣類関係の荷馬車に乗ることで、荷馬車の中身を見ないでも中に入れると思ったのですよ。」
モグラーフの時に見えたボヤの形はそういうことだったのね。 しかしミシル団長もただ追い返すのではなく、更生できそうな人には手を差しのべる、そんな心の広い人なんだとこの場で感心した。
「っと、そろそろいい時間だね。 ホノカ、あんたの今日の仕事は終了さね。 これが今日の給金さ。 持っていきな。」
そう言ってミシル団長から小袋を貰う。 そこそこ中には入っているようで、重みがあった。
「また機会があったら働きに来な。 人手はいくらあっても足りないからね。」
「ホノカさんお疲れ様でした。」
「また一緒の班で働きましょう。」
「気を付けて帰れよ!」
そうして皆さんに別れを告げながら私は沈む前の夕日と共にマウスレッドさん達の家へと帰ることにした。
他の作品はどうかは分かりませんが、基本的にこういった門番の仕事って顔パスになりやすい気がします。
そうでない作品を知っていたらごめんなさい




