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自警団としての初任務

ホノカのこの世界に来てからの初仕事のお話し

「我々は反対しませんよ。 是非とも街のためにお役立て下さい。」

「就職先が見つかって良かったじゃない! これはお祝いしないと言えないかしら?」

「はしゃがないのルビルタ。 でもそうね。 少しだけなら奮発してもいいかもしれないわね。」

「ホノカさんの白魔法は確かにお役に立てると思う。 魔法の修行の延長線だと思って、やってみてはいかがかな?」


 マウスレッドさん達に私が今日の出来事を話すと、そんな答えが返ってきた。


「い、いいんでしょうか? 確かに私にとっても渡りに船ではありますが・・・」

「ホノカさん。 これは貴女の力を示す事でもあるのです。」

「私の?」


 街のためになるのは私にも理解できたが、自分のためとは流石に分からなかった。


「今回の事で魔法使いはどういう立ち位置なのかというのは分かったと思います。 特に貴女の「白魔導師」は認知度がかなり低い。 今回のような事が起こりえます。 しかし貴女が促進して白魔法を使えば、白魔導師として、そして魔法使い達として、見方が180度変わるかもしれないのです。」

「そ、そんな責任重大な話、なのですか?」

「ホノカさんは何時も通りにしていれば良いのですよ。 そしてその中で自警団としての任務を真っ当すればいいのです。」


 ガネットさんの言う通り、気を負いすぎるのは良くないらしい。 とりあえず許可は出たし、明日からでも顔を出してみようかな。



 そして翌日、朝早くに起きた私は、眠気覚ましの様に、自分に魔法をかける。


「「呼び覚ます信号伝達 フレシャス」」


 この魔法をかけることによって起きる前の気だるさを取り除いてくれる。 ただしこれを家族の皆さんにはかけることはない。 それだけ神経や精神に直接かける魔法は危険だと言うことを皆さんから聞いていたので、精神関係の白魔法は使う時は勿論、読む際にも最新の注意を払っている。 魔法の暴発程危険なものはないと、私でも知っているから。


 そしてベランダへ降りると、既に朝ごはんの準備を始めようとしていたカレトさんと目があった。


「あら、おはようございますホノカさん。 相も変わらずお早いお目覚めで。」

「おはようございますカレトさん。 早起きは日課なので。」


 そんな会話を繰り返しつつ、今日から自警団の事務所の方に行くので、私だけ軽めにご飯を用意して貰い、食べてから出発。 出勤場所はこの街の門だと言うことで、その足で向かうことにした。


「・・・おや? おはようございますホノカさん。 本日はどのようなご用件で?」


 そこにいたのは昨日私に声をかけてきてくれた衛兵さんがいた。 良かった、話が通じる人がいてくれて。


「おはようございます。 本日から自警団として働いてみようかと思いまして。」

「本当ですか!? それはありがたいことです。 我々の中で話し合いをした結果としては、ホノカさんの配置は、これからの朝8時から夕方の6時までの時間帯となります。 あ、勿論その間に休憩も御座いますし、ホノカさんの様に本所属をしていない方は、出勤は基本的に自由になります。」

「え? それだと給料面はどうなるのですか?」

「本所属をしていない方は日当となり、1日分出勤すればその分の給金を配布する形となります。 そうでなければ自警団に所属している我々の立場がありませんので。」


 ちゃんとその辺りはしっかりしているんだ。 街の治安の悪さを即座に対応できたのもその為なのかもしれない。


「お? あんたかい? 最近噂の「白魔導師」様ってのはさ。」


 その声に後ろの扉を見て、そこから現れたのはかなり引き締まった身体をしている女性だった。 服の上からでも分かる程に鍛え上げられている四肢とニカッと笑ったその顔つきは、その人の人柄を表すようだった。


「ミシル団長! お疲れ様です! ホノカさん。 この方がこの街の自警団の団長のミシル団長になります。」

「ミセレリア・バーチカルだよ。 あんたもミシル団長でいいからね。 来てくれたことを歓迎するよ。」

「ホノカ・ワキヅカです。 本日からよろしくお願いいたします。」


 自己紹介はこちらに合わせた上で握手を交わす。 ミシル団長のがっしりとした手は、これまでの歴戦を語るに相応しいほど逞しかった。


「うちら自警団の仕事は主は街の定期巡回と門番さ。 今は出払ってる部分もあるが、概ね3~4人の団体行動で街を回ってる。 あんたみたいな子達も自警団に参加してるよ。」

「団長。 コレモルートの巡回を交代願います。」

「了解。 ご苦労様だったね。 あんた達は夜から巡回してるって聞いてるから、着替えて給金を渡すからその後に帰りな。 あたしゃ少し説明をしないといけないからね。」


 そう言って数名の男女に説明をすると、また私達の方へと目を向ける。


「丁度いい。 お前さんともう2人を連れて、さっき言ったルートの巡回をお願いしようか。 なに、見回りがてら挨拶するくらいで構いやしないさ。 トラブルが起きたらこいつで報告しな。 対応は出来る限り自分達で行うこと。 いいね。」


 ミシル団長から渡されたのはトランシーバーの様なもの。 ボタンはあるものの電気や電波は通ってない場所なので、タイプライターのような使い方をするのだろう。


「じゃあホノカはこっちで着替えをして、あんたは残り2人を呼んでくるからそこで待っててな。 それじゃあ行くよ。」


 そうしてミシル団長と共に着替えをしに中に入った。


「それではコレモルートへの巡回を開始します。」

「よろしく頼むよ。」


 そうして門から歩き始める私達。 私は後ろの方からついていくように歩いていく。 とはいえ実際にはなにをするのか分からないので、他の人に聞くのが手っ取り早いと思った。


「あの・・・」

「そう言えば自己紹介が遅れましたね。 カナッツ・マセーラと言います。 昨日の唐突な申し出を承りありがとうございました。」


 昨日声をかけてきて衛兵さん、カナッツさんは歩きながら私の方を見て頭を下げた。


「い、いえいえ。 家からの許可も取れたので、問題には・・・」

「白魔導師というのは本当に顕著なのですね。 あ、僕はララスト・ミニフェ。 どうぞよろしくお願いいたします。」


 そう言って右を見ていた青髪の男性衛兵さんであるララストさんが頭を下げた。


「しかし白魔導師かぁ。 全然そんな風には見えないっぽいのにな。 俺はソトカ・アーモ。 普段は農家をやってるぜ。」


 今度は逆の茶髪の男性が帽子をあげる。 やっぱり時間のある時に衛兵をやったりするのね。


「それで衛兵としての仕事とは?」

「そうですね。 主な仕事は街の見回りと門を通る人の確認となります。 街の区画は大きく3つに分かれていまして、今回は地図として見るならば右側に行きます。」


 街の防衛とか監視とかそっちが主なのかな? でも見ているだけでもかなり平和なのは分かる。 だからこそこう言った少人数でも解決できるのかな。


「大体どのくらいで回れるのですか?」

「特にトラブルがなければ4時間くらいで一区画は回れるぜ。 トラブルの内容によっては時間がかかるけどな。」


 喋りながらも周りの警戒は怠らない。 そうしているとベンチに座っている、明らかに顔色が悪いおばあちゃんが座っていた。


「マティーチさんおはようございます。 お身体は大丈夫ですか?」

「んぅ? ああ、衛兵さん。 ごめんねぇ、何時もお手間を掛けて。」

「これが衛兵の仕事だから気にするなって。 にしても今日はどうした? 散歩の時は何時もこの時間はここは通り過ぎてるだろ?」

「あぁ・・・実はね、何時も通りに散歩をしていたんだよ? でもなんだか今日は朝から足が動かなくてねぇ・・・」


 そう説明を聞きながら私はおばあちゃんの足を見てみる。 すると靴の上からだけど、右足のふくらはぎ辺りに打撲傷があり、ぷっくりとなっていた。


「おばあちゃん、朝に机とかベッドに足をぶつけたりしなかったですか?」

「え? ・・・ああ、そう言えば朝なにかにぶつかったような気がするねぇ。」

「やっぱり。 おばあちゃん、足を見せてください。 治療しますので。」


 そう言って私はおばあちゃんの靴を脱がして、すぐに魔法をかける。


「「ヒルール」」


 ヒルールは単純な回復魔法。 前詠唱が無いのはこの1ヶ月間で数多くの怪我人を治してきたから、詠唱を必要としなくなったのだ。 怪我といっても擦り傷や打撲傷、火傷なんかを治していた。 ヒルールはそういった「傷治し」に適している魔法なのだ。 戦闘よる傷なんかはまた別の呪文なので、ここでは使用しない。


「・・・おやまぁ。 痛みも疲れも無くなったよぉ。」

「次からは無理をなさらずに。」

「気を付けるよ。 お嬢ちゃんの言う通り、今日は帰るかねぇ。」


 おばあちゃんはベンチを立って、スタスタと歩いていってしまった。


「それが白魔法かぁ。 初めて見るって言うか、実在してたんだな。」

「本当にものの数秒でしたね。 普通なら氷嚢や包帯を用意しなければいけないのに。」

「見事な手腕ですホノカさん。」


 他の皆さんも私の白魔法がどう言うものかを目の当たりにして、関心をしてくれていた。 ここまで見られるのはマウスレッドさん達以外では初めてだ。


「これなら街の自警団部隊は安泰だな。 とはいえ仕事がなくなるのは困るがな。」

「貴方は農業があるでしょ。 それに人手不足なのには変わりありませんよ。 まだまだ街の治安はそれなりに悪いままですよ。」


 まだまだ解決する案件はあるようだ。 だけど最初に比べれば自信は少しついてきたかも。 自警団の仕事は始めたばかり、これからもっと大変になりそうな予感と共に、道を進んでいくのだった。

自警団の話はもう少し続きます

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