声のする方へ
ラフェルマさん達に連れられてやってきたのはなにやら魔方陣が書かれている場所に到着した。
「こちらにお乗りください。」
「これは?」
「乗ってみれば分かりますよ。」
そう言われて言われるままに乗ってみる。 するとその魔方陣ごと私達が浮いているのが見えた。
「うわ・・・凄い・・・!」
「ここは私達のように魔法を使える方だけが来る場所ではありません。 ですがこれだけ膨大になってしまえば移動がかなり大変です。 ですのでこの魔方陣は一般の方でも利用できるように作られているのです。」
そう説明されながら魔方陣はとてつもなく広い具現化院の中を縦横無尽に飛び回っていた。
「うっ・・・」
そして酔った。 あまりにも無抵抗かつそれなりの速度で飛ぶ上に顔や体を守るものがなにもないので、色々なものを受けてしまい、着いた頃に脳が事の顛末を処理しようとして頭がパンクしたようだ。
「大丈夫ですか? 無理をなさらなくても良いので、休んでから行きましょうか。」
「・・・すみません・・・」
「これは我々も失念していた部分かもしれません。 改良の余地がありそうです。」
そちらはそちらで盛り上がってるけれど、私はそんなことを悠長に聞いている場合ではなかった。 人間って情報のキャパシティを越えるとある意味での拒絶反応が生まれるのね。 気持ち悪さが拭えない。
「それではこちらになります。」
私の気分が少し良くなった位で今度はテーブルがいくつもある場所に案内された。 そこでは老若男女問わず、様々な本を読んで勉強をしている人が溢れかえっていた。 それだけこの部屋が広く使われていると言うことにもなる。
「あの・・・もしかしなくてもこの山積みになっているのが・・・」
「私達が可能な限り出せる「白魔導師」が使える可能性のある呪文のある書物です。」
デスヨネー。 私はただただ苦笑いをする他なかった。 だって昔の世界でだってこんな量は読んだことないし、なによりも使える魔法があるかどうかも手探りな訳だから、到底1日では読みきれる訳もない。 そこで私は1つ聞いてみることにした。
「魔法使いって、やっぱり魔導書が無いと駄目ですか?」
「無くても撃てますが、媒体がある方がイメージや目標を定めやすいのはあります。 それに魔法使いとしてはこうして本を読むことも、また人生とも言えるのです。」
そうですか。 まあもしもの話だったので、聞いてもそこまでショックは感じなかった。 別に私1人だけで見るわけでも無さそうだし。 少しでも役に立ちたいなら頑張るのよ私! 本を読むのだって嫌いじゃないんだし、こうして探して貰ったのに無下にする方が失礼でしょ。 顔を叩いて力を入れて、本を手に取ることにした。
「つ・・・疲れた・・・」
私は大量の本の中からスペースを作ってグッタリした。 本の内容に関しては、昨日マウスレッドさんから読み書きを教えて貰ったので、意味が理解できる部分と出来ない部分を除けば読めないことはない。 でも本の膨大な量とそもそもこの魔法って使い所あるの? という疑問だらけで、頭の中はいっぱいになってしまったのだった。
「お疲れ様ですホノカさん。 姉お手製のハーブティーです。」
「あ、ありがとうございます。 ここって飲食可能なのですね。」
「魔法の力で汚す事がないようにしてあるとのことで。」
そういうところは徹底してるんだ。 私はハーブティーを一口飲んだ。
「それでどうでしたか? なにか良い魔法はありましたか?」
マウスレッドさんからそんな風に質問が飛んでくる。 そして私は頭を悩ませた。 だけどただ考えるだけでも駄目だということで、私は体を動かすことにした。
「マルスティさん。 ここでは魔法の実験できる場所ってあるのですか?」
「はい。 魔導書で得た知識は、魔法使いなら、一度は使ってみなければ気が済まない性格ですので、試験室は用意されています。」
そうよね。 魔法使いたるものの宿命みたいなものだもんね。 そう思いながら私は試験室に向かうのだった。
「「大地に恵みを! レイコール」!」
借りている試験室の一部に雨雲が出来て、そこから雨が降り始める。 部屋の中で濡らすのって大丈夫なの? って思うけど、例え濡らそうが燃やそうが、草木でボーボーにしようが、使うのを終えてしまえば元に戻るのだそう。 でもそれって幻の類いじゃないのかな?
「どうでしょうか? 使える魔法で御座いますか?」
「使えるかも知れないけど・・・これって農業用なのよね。 完全に役に立たない訳じゃないけど。」
マルスティさんへ、愚痴になら無い程度に感想を告げる。 そもそも私が見ていたのは魔導書ではないから、ある意味魔法らしくないものを唱えても仕方がないとも思ってる。 いきなり使えないで暴発しても困るからという想いがあったから。
「でもしばらくはこういった地道な魔法から始めないといけないわね。 それに私の場合は、攻撃魔法はほとんど使えないって言われたし。」
あまり信じたくはないけれど、私の魔力の流れは攻撃魔法には全く適さない事。 「攻撃は最大の防御」理論は私の中では使えないと言う事だ。
「それよりも治癒魔法や防衛魔法を読んでみたかったけど・・・やっぱり数が少ないのかしら。」
はぁ、と溜め息をつきつつ、私は改めて魔法を放つのだった。
「うーん。 魔法を使っているって言う感覚にならないのは、何でなんだろう?」
休憩も予て私は具現化院の中を歩いていた。 迷子になりそうなこの場所だけれど、もし1人で移動するならとマルスティさんから「入館者位置確認魔力玉」を貰っているので、私がどの辺りにいるのか分かるようになっている。 ちなみに落としても数秒後には対象者に戻るし、この玉は破壊には強いとのことなので、本当に余程のことがない限りはこの玉が肩身を外すことは無いらしい。
「やっぱり対象がいないからなのかしら? でも相手を怪我させたり、不快にさせる魔法は抵抗あるのよねぇ。 どうしようかしら?」
そんなことをぶつくさと言っていてもしょうがないと思っていても、やはり零れるものは零れてしまう。 うんうんと唸っている間に、かなり遠くに来てしまったことに気が付いて、私は元来た場所に戻ろうとした時
『・・・・・・』
「・・・ん?」
私の耳になにかが聞こえてくる。 でも小さすぎて分からない・・・空耳?
『・・れ・・・いて・・・』
「いや、空耳じゃないわ。」
声が聞こえたのは・・・こっちよね。 私は具現化院の中をひたすらに歩いていく。 どうやってここに来たかも分からないまま声に導かれるが如く進んでいって、たどり着いたのは何の変哲の無い棚だった。
「この辺り? 声が大きくなっていったけれど・・・」
『誰か・・・私の声を聞いて・・・』
今度ははっきり聞こえた。 もう空耳ではない。 誰かに呼ばれている気がする。
そして私はある1つの本に手を取った。
「真っ白な本・・・」
タイトルも何もない本当に真っ白な本。 でも何故か私はこの本が気になってしまった。 どんな内容なのか分からない。 どんなことが書かれているのかも分からないけれど、その本を開いた。
するとどうだろう。 何気なく開いた1ページから強烈な光が発せられた。 強いけれど、どこか優しい光。 その光の中で私はまた声を聞いた。
『良かった・・・ちゃんと声が届いて・・・』
「あ、あなたは誰なの? なんで私に声が・・・」
質問をしかけたところで、その光は徐々に弱くなっていって、最終的には光らなくなってしまった。
「な、なんだったのよ・・・今のは・・・」
「ホノカさん! 大丈夫でしたか!?」
途方にくれている時に、マウスレッドさんから声がかかる。 どうやら心配して来てくれたようだ。
「マウスレッドさん・・・」
「あなたが遠くに行ったと思ったら、なにか魔力の流れを感じたのでこちらに来た訳ですが・・・その魔導書に覚えは?」
マウスレッドさんが指を指す先。 私が持っている本についてだ。
「そ、そう! この本はなんですか!? 真っ白な本だったのに、開いたらいきなり発光して・・・それで・・・あれ? 文字が浮かび上がってる。」
「少し触ってもよろしいですか?」
そう言って私はマウスレッドさんに本を渡そうとしたその時、マウスレッドさんになにか稲妻のようなものが走り、弾かれたようになってしまった。
「ご、ごめんなさい! だ、大丈夫ですか!?」
「ええ。 ・・・しかしこのような形で魔導書が見つかるとは・・・いえ、これはホノカさんに与えられた祝福とも言えるでしょう。」
「あの・・・?」
マウスレッドさんは私を置いてきぼりにして、1人でぶつくさと言っている。 どういう事なのだろうか?
「ここで立ち話もなんです。 一度戻りましょう。 この具現化院でも魔力の流れを察知しているので、すぐに分かるでしょう。 説明はその時に。」
そう言ったマウスレッドさんの後ろを、私はただ付いていくしか出来なかった。
ホノカは一体どんな本を手に取ったのでしょうか?




