魔導書を求めて
早速家に皆さんと戻って魔法の勉強に励もうと思ったのだけれど、いざ回復魔法や状態異常回復の本を書庫から探そうと思ったけれど、膨大な本の量とそもそも字体として読めないのでは? と思ったので、たまたま見つけただけに断念した。
「うーん、せめて文字だけでも読めれば良かったんだけどなぁ・・・」
根本的にこの世界の文字が読めない時点でダメだったのは表紙を見ただけで分かっていた。 魔法使いになったのならどんな言語もスラスラと~とはいかないらしい。 ちょっと残念。
「まずはこの世界の文字の読み書きからかしらね。 あとは計算とか。」
「なにか見つかりましたか?」
何処かに行っていた筈の私に笑顔で迎えてくれるマウスレッドさん。 勝手に家をうろうろしたのに、何一つ嫌な顔をされないと逆に申し訳無くなってくる。
「あの、マウスレッドさん。 私に言語を教えて貰えませんか?」
「おや? どうして? ・・・ああ、そういえばそうでした。 すみません、気が回らず。」
「いえ、そんなことは・・・あとは計算とか教えてほしいです。」
計算に関しては蛇足かもしれないとも思っている。 多分四則演算はどの世界だろうととりあえずあると思う。 差はあるかもだけど。
「計算も、ですか。 分かりました。 出来る限り教えましょう。」
「ありがとうございます。 あ、それと勝手に書庫を漁ってしまったのですが、私に向いた魔導書があれば、それも並行して勉強したいです。」
「なるほどそう言うことでしたか。 しかし・・・それは出来ない相談でありますね。」
とても残念そうに語るマウスレッドさん。 なにがどう出来ないのか、私には分からなかった。
「あの・・・出来ない、というのは?」
「あぁ、すみません。 これは我々の技量が足りないという意味ではなく、そもそも僕達の所有している魔導書の中に、白魔導師が使える魔法の載った魔導書が無いのですよ。」
あ、そっちなのね。 なにか良くないことなのかなと思ってしまったことを後悔した。
「でもそれはあくまでも「家」での話です。 この世界最大の図書館、通称「知識の具現書院」には敵いませんよ。」
「「知識の具現書院」?」
「娯楽などの書物は一般市民でも見れるのですが、魔導書等の一般の人間には貸し出すことすら許されない書物が存在するのはその場所だけなのです。 なのでもしかしたらそこに行けばなにか手掛かりやヒントが見つかるかと。」
当然の事ながら字は読めない。 だけど、ここで行くのを引いてしまったら、私の魔法に対する探究心はそこまでになってしまう。 だから私は食い気味に行くことにした。
「是非! 機会があればで良いので!」
そう言うとマウスレッドさんはクスリと笑ってくれた。 最初にあった時はかなり冷たい人なのかなと思ったのだけれど、そうでもないのかな? それとも私と会ったから? ・・・それは過剰だよね。
「分かりました。 では最低限の文字は読めるようにしておきましょう。 少々児童向けのような本ですが、構いませんね?」
「読み書きが出来るなら。」
児童向けってことは多分書き方も載ってるわよね? そんなことを思いつつ、今日のところは家の中に入ることになった。
「確かに機会があればとは言いましたが・・・」
次の日。 私はちょっと呆れた様子で、マウスレッドさんに声をかける。
「あの、そんなにポンポンと行っていいものなのでしょうか?」
「別に入場制限をかけているわけではありませんし、書院内で何かあればすぐに対処してくれます。 あそこにいる職員は、ほとんどが魔法使いですので。」
なんか本当に魔法図書館みたいなイメージになってくるなぁ。 いや、ここは異世界なんだから、それぐらいあっても当然かなとは思ったけれども。
「ではホノカさん。 準備は良いですか?」
「は、はい。」
これから何をするのかと言えば、私はマウスレッドさんから手を取られ、そしてマウスレッドさんはこう唱えた。
「『空よ、我ら地を進むものを受け入れたまえ。 フライト』。」
今マウスレッドさんが唱えたのは飛行魔法。 本当は1人しか飛べない魔法なんだけど、修行を積むことで、2人までなら触れているだけで一緒に飛ぶことが出来るようになるのだそう。
「マウスレッド。」
空を飛び始めた私たちに、ルビルタさんから中身がパンパンになった袋が投げ込まれて、危なげにそれを受け取った。
「どうせ夕方まで帰らないんでしょ? お弁当と向こうの友人への茶菓子を渡すわ。 私たちの分までよろしく伝えておきなさい。」
「ありがとうございます、姉さん。 では改めて。」
私の事を掴んだ後は目的地に向けて飛行を始めるのでした。
「見えてきましたよ。 あれが「知識の具現化院」になります。」
遠くから見えるそれは、まるで超有名な小説映画の魔法学校のような風貌をしていた。 まさにと言わんばかりだった。
「それにしても大きな建物ですね。 こんな距離からでも見えるなんて。」
「それでもあれは全貌ではないのですよ。 しかし驚いていただけたなら何よりです。」
そりゃ驚きますよ。 正しく漫画やアニメの世界観そのものなんだもん。
「もうすぐ入り口ですので高度を下げます。 気圧差に気を付けて。」
そう言いながらもマウスレッドさんは私の気分が害されないようにゆっくりと降下していってくれていた。 魔法使いも成り立てだからか、その辺りはちゃんとしてるみたい。
地上に降りてみるとこれまた下から屋根が見えない程に大きくそびえ立っていた。 壮快すぎて逆に緊張してきた。
「それにしても凄い人だかり・・・」
「魔法使いはもちろんのこと、この具現化院は様々な人が利用しますから。 怖がる必要はありませんよ。」
怖がっている訳じゃなかったんだけど、ちょっと人の多さにびっくりしただけなんだけど。
中に入ってとても大きなエントランスホールから受付に行って、この具現化院に入る手続きを行うのだそう。
「いらっしゃいませ。 本日も「知識の具現化院」をご利用頂き、誠にありがとうございます。」
受付にいたのはザ・受付嬢と言った風貌の人でした。
「どうも、ラフェルマさん。」
「あ、マウスレッド様で御座いましたか。 本日はどのような書物をお探しでしょうか?」
目の前の受付嬢さんの髪の長い方の人が反応をする。 こちらの人がラフェルマさんと呼ぶらしい。
「彼女に見合う魔導書を数冊身繕いたいのです。 僕らの家には無いので、ここならと思いまして。」
「・・・なるほど。 確かに彼女の特質にあった書物となると、一般的にはお目にかかる事は無いでしょう。 マルスティ。 よろしいかしら?」
「かしこまりました。 すぐに代わりを呼んできます。」
そう言って受付嬢の白髪の方、マルスティさんがフワフワと上へ上がっていった。 彼女達も魔法使いなのだろうか?
「本日はお二人で?」
「ええ、彼女にあう魔導書を見てみたくて。」
「なるほど。 しかし白魔導師の方の文献は多くはありませんので、特有のスキルはまだ解明されていないのです。 私どもでもどれだけ見合えるか分かりかねます。」
文献が少ないってことはやっぱり希少なのには間違いないみたい。 マウスレッドさんが私を買い取ってくれなかったらと思うと、本当に青ざめる。
「お待たせしましたラフェルマお姉様。 マルスティお姉様に代わり、このシュミッタが受付を承ります。 あら、マウスレッド様。」
今度は青いポニーテールの女性が降りてきた。 広いからこういった人は複
数人必要なのだろう。 そしてマウスレッドさんの顔って広いんだろうなぁとも思った。 利用しているから向こうが覚えたとも言えるけど。
「やぁシュミッタ。 仕事の方は慣れてきたかい?」
「うーん、まだまだ不慣れな部分が出てきてしまいます。 本の位置とか全然覚えきれなくって。」
「これだけ膨大な場所だからね。 仕方ないよ。」
「マウスレッド様の言う通りですよ。 だからこそジャンル別で担当がいるのではありませんか。」
「もっと頼られたいと思うのは普通だと思います。 私だってお姉様達みたいになりたいんですもん。」
「そう言うのはあと5年してから言うことですね。」
拗ねるシュミッタさんを宥めたりきつく言ったりしているラフェルマさん。 ・・・魔法使いってどれくらいの寿命があるのか聞かなかったのは理性が効いたからだと思っておこう。
「・・・マルスティから連絡がありました。 ある程度の書物が準備できたそうなので、そちらに向かいましょうか。」
そう言ってラフェルマさんは受付から離れると、すぐさま私達の前に来て、着いてきてという意思表示をしたので、ついていくことにした。




