ギルドに戻って魔物を出した
俺は街に戻った。
冒険者の街、ブラスシティ。ここが俺の活動拠点だ。そしてその街の中央部に位置する、冒険者協会ブラスシティ本部。そこに俺はいた。
「リュートさん・・・? どういう、ことです?」
「はい? さっきから何度も言ってますよね? 『凄くデカいゴブリンにこん棒振り下ろされて、そのまま右腕吹っ飛んで自滅した』って」
「だからそれはどういうことだって話です!」
「えぇ・・・?」
何故かさっきからこうなんだ。
さっきから声を荒げているのは、俺の専属受付係であるシアさんだ。先に言うが断じてうさみみは付いていないぞ。
話を戻そう。
「そのでっかいゴブリンとやらを見せてください!」
「別に構いませんよ」
そう言って俺はアイテムボックスからでっかいゴブリンを取り出した。その光景にシアさんは驚愕していた。
「な、何で貴方が、アイテムボックスを持っているんですか!?」
「あ・・・」
困った事になってしまった。実は、俺の今持つスキルは殆どがさっき手に入れたスキルなのだ。
結果としてレベルが上がらないはずの俺にスキルは持てないのでビックリさせているということだろう。
「すいません。まだそれについては何も言えません。もう少し、待っていてください。言いたくなったら真っ先に言いますから」
そう言って自然に笑うと、彼女は数秒固まると急に顔を真っ赤にさせて顔を手で覆ってしまった。
「は、はいぃ・・・」
そしてそのまま後ずさってその場から逃げてしまった。
彼女はどうしたのだろう?
◇◇◇side.シア◇◇◇
いったいどうしてしまったのでしょう?
彼を見ると胸がドキドキしてしまいます。
彼の笑顔を見ると見入ってしまい、そのまま顔が真っ赤になってしまいます。
彼とお話をすると無性に楽しくなってしまいます。
毎日のように彼のことを考えてしまいます。
いつまでたってもそれに慣れません。どうしてでしょう?
「全く分かりません・・・」
そうして建物の奥で百面相をしていると影から女性が現れました。
「王女殿下。いかがなされましたでしょうか?」
「・・・いたのね。まぁいいわ。
聞いてアリス。私、最近少しおかしいのよ」
「既に存じております」
「なっ!? 知ってたのなら何かしら行動を起こしなさいよ!」
「では、それでもし状態が悪化したらどうするのですか?」
「それは・・・」
彼女はアリス。私専属のメイドで、身の回りの世話と護衛を陰ながら行っている。
「では僭越ながら、殿下はどのように思っているのでしょうか?」
「私が、誰を?」
「・・・すっとぼけないでください」
「ふふ、冗談よ」
「ではお考えになられましたら?」
「それもそうね・・・」
私は、どう思っているのでしょう?
彼の初めて会ったときの印象は暗くて怖い人でした。
でも、向き合っていく内に抱えていたものを私に吐露してくれて、その時に初めて笑顔を見せてくれました。今でもその笑顔を覚えています。
そこから私は彼のことを毎日のように考えるようになって、一緒に街に遊びに行ったときが一番楽しくて。
そっか、私、彼のこと・・・
「ッ!?」
そう考えた瞬間、突然顔が真っ赤になった。理由はもう分かった。でもいざ実感すると・・・
でも、これで分かった。
私は彼のこと、好きなんだ。
「頑張ってください。殿下」
「ええ、頑張るわ」
彼を捕まえよう。離したくないし、取られたくない、私が独占していたい。そう思った。
◇◇◇side.リュート◇◇◇
「・・・誰か噂でもしてんのか?」
くしゃみがでた。なんかそんな感じ。
そんな下らない事を考えてると、嫌な予感が脳裏をよぎった。
「なんか、荒れそうだな」