第14話
よろしくお願いします!
「私が腕によりをかけて美味しい料理を作ってみせるわ。」
沙織、ものすごいドヤ顔だ...
これは余程の自信があるのだろう。
そんで、今は風呂に入ってるのだが、
よく考えれば沙織がここに住んでることが楓にバレるのって割と時間の問題なんじゃないか?
だって向かいだし。何かの拍子に窓の外見たら偶然沙織がウチから出てきました、とかシャレにならないし。
なら、誤解される前に楓には言っておいた方が
俺としても気が楽だし、沙織が危惧している勘違いをされる可能性だって前もって言ったほうが格段に低くなる。
後で沙織に言ってみるか。
風呂から出た俺はテーブルの上を見て唖然としていた。
「こ、これは......」
そこには、黒こげになった恐らく卵焼きだと思しき物体が置かれていた。
それ以外は、どう見ても母が作ったものだった。
「沙織さん、これは一体どういうことですかな?」
なぜ、このレベルであんなにドヤ顔が出来たのか聞いてみたいわ。
「そ、それは、怜人には普段からお世話になってるしお礼っていう意味も込めて、、」
「それは、ありがとう。」
やだもう照れるじゃん。
「ここに来る前にお母さんと練習したはずなんだけどな.....
おかしいわね。」
「つまり、その練習の間では、うまく出来てたってこと?」
「うん、卵焼きだってすごく練習して、ここに来る直前にようやく成功させていたのに...... 振り出しに戻ってしまったわ。」
てことは、数ヶ月ここに住んでいる内にせっかく鍛えた料理が全て振り出しに戻ったってことか。
何だそれ。そんなことあるのか。
本人は、うんうん唸りながらずっと困り顔をしている。
まあ、そんなこと基本的には無いよな。
でも、作って貰って悪いけど、これは正直食いたくない。
どんな火の調節したらこんな黒焦げになるんだよ。
とか思っていると母が
「でも、沙織ちゃん。すごく一生懸命に卵焼きを作ってくれてたのよ〜。あなたのためにね。」
ああ、そうだ。
確かにその通りだ。俺が連絡していなかったことであったり、母が勝手に勘違いしていたことはあったが、沙織は何も悪くないんだ。なのに、こうして苦手な料理に挑戦してまで作ってくれた。しっかりと感謝して食べないといけないんだ。
「そうだよな。せっかく作って貰ったんだ。残さずいただくよ。」
俺は微笑みながら沙織にそう言うと
「そ、そんな無理して食べなくてもいいのに......」
「でも、ありがとう、怜人。」
沙織は照れながら微笑み、そう答えた。
その日の晩、俺が1時間ほどトイレにこもったのは言うまでもないだろう。
黒焦げな上に、調味料の配分までおかしかったのだ。やたら、醤油の主張が強かった。
どこかの日曜で沙織と料理教室でも行ってみるか。俺も料理したいし。
さて、お腹の調子もスッキリしたことだし
風呂の時に考えたことを沙織に言ってみるか。
なぜあんなに人にこのことを知られるのが嫌なのかは俺にはわからない。もしかしたら、過去のトラウマが原因なのかもしれない。
だからこそ、
ちゃんと相談してお互いにとっての最善策を模索していかなければならない。
もう、喧嘩別れなんて懲り懲りなんだ。
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