アイツの道場で……驚いて、そして…
眉毛の道場の前には6歳か7歳くらいの少女が!
間違いない!この娘は!……
リンだ!俺は唖然としてしばらく言葉を失った!
「ダメじゃないか…もう11時だぞ…さあ、お部屋に戻っておやすみ…」
眉毛は幼いリンに優しく語りかけた……
「………」
無言のリン……だが目で何かを伝えようとしているようだ……
「もっと早く帰って来ると思って風呂を沸かしてたから、もう冷めてしまったか…すまないな…」
微笑む眉毛…幼いリンは頷き、眉毛にタオルを手渡し去っていく……
「なあ…リ…」
呼び止めようとしたが、無反応でそのまま去っていくリン……この時代には俺なんか知らないからな……ていうかガキの頃から足速ぇな……
「では俺達も行こうか…」
「ああ……」
眉毛も俺が初対面のはずのリンに話しかけようとした事は触れないようだ……
「なあ……さっきの女の子だけど……」
「ああ里奈か……」
幼い頃から……とは言ってたが、この頃はまだ“リン”という呼び名はなかったのかな……
「あの子の両親は一週間ほど前にバイクのひき逃げにあってな……あの子の目の前で……それ以来、言葉を失ってしまったらしい……そしてそれから叔父さん夫婦のもとに預けられたのだが、叔父さん夫婦も夜遅くまで大変みたいでな……」
「で、良くここに…遊びにでも来てたのか?…こんな……結構目立たない所に……」
「ああそうだ……何故この場所を選んだのかは……俺にも判らぬ……」
「だけど……心配はいらねぇよ…あの子はいずれ言葉を取り戻すし、あの子のご両親も意識を取り戻す…きっとな……」
「ああ、俺もそう信じている…そのお前の確信に満ちた表情は素晴らしい…」
何言ってやがんだコイツ……だが俺の知ってるリンはお喋りではないが、良く喋る方だし、両親も……いや、そういや、あの子の両親の事は判らない……
『頼むから無事でいてくれ!』
俺は心の中で強くそう願った……
「なあ、もしかして、単車でひき逃げ…で事は…」
「その可能性も……高いだろう……ヤツらは……道義という物がない!リーダーの男…栂野順一は俺とのさしでの闘いに敗れて以降、手段を選ばず俺を追って来る……それで俺は……何人もの友に災難に遭わせてしまったのだ……」
「そうか…それは…災難だな…で、あのおっかねぇ野郎、栂野、て言うんだ……なあ……一回しかヤツの事見ていない俺が言うのも……アレなんだけど……」
俺は少し声のトーンが小さくなり……
「アイツ、おっかねぇけど、そんなに悪いヤツ…ていうか根から腐った奴には……見えなかった……んだけどな……」
「む!?…」
やべえ、コイツ怒らしちまったかなぁ……
お読み下さりありがとうです♪実は全体像としてのビジョンはあるんですが、ここら辺はあまり考えてなかったので、少し苦労しました(笑)。ではまたよろしくです!