表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/281

Data.49 弓おじさん、新たな一歩

「MMOってプレイヤーに長く続けさせる戦略として、人間関係の構築を迫ってくる」


 ネココは静かに話し始めた。


「それは会社とかと同じ。みんなに迷惑がかかるし、言い出すのが面倒だし、申し訳ないし、とかで辞められない状態を維持させたいの」


 ああ、わかるなぁ……頭では。しかし、実体験は違う。

 俺が辞める時は、あちら側からそういう空気出してくれたから意外とすんなり……。

 いや、いま過去を振り返るのはやめるんだ……!


「そのために運営はフレンドパーティ限定のコンテンツとか、ギルドに入ってるプレイヤーだけのコンテンツを出してくる。でも、中にはそういうコンテンツを他人に縛られず遊びたい人もいる。だから、今からそういうコンテンツが実装された時の対策をしてるの。普段はふらふら勝手に遊ぶけど、美味しい話がある時だけは顔を出す幽霊部員たちが集まるギルド……幽霊組合(ゴーストギルド)を作ってね」


「なんだか壮大な話だけど、要するにいざという時だけ協力する仲間を集めたギルドってことかい?」


「そういうこと。イベントの度に見ず知らずの仲間を募集して冒険って面倒でしょ? 普段のフィールド探索やクエストならまだしも、高難易度イベントとかじゃね。野良じゃなかなか実力者が集まらないわ。だから、先に同じ悩みを持つ頑固者たちをまとめておくの。面白いでしょ?」


 ふむ……言いたいことはよくわかる。

 しかし、俺は案外即興でパーティを作って遊ぶのも嫌いじゃない。

 ただ、すぐにみんな死んで一人になってしまうだけで……。


 でも、いつだったか『これからも一緒に遊びましょう!』とフレンド申請をされた時、俺は怖気づいてしまった。

 一期一会、その場限りのパーティなら気軽に組めるが、これからもとなると簡単に返事ができない。

 申し訳ないが、自分で遊ぶ時間を邪魔されたくないと思った。

 ソロだからこそ無茶苦茶な遊び方ができているのは間違いないからな。


 フレンドになると冒険のお誘いのメッセージを送れるようになる。

 嫌な時は断ればいいだけだが、何かを断るというのは、それがなんであれ気を遣う。

 だから俺はフレンド申請を避けてきた。

 一度避けると、他の人のも受け取りにくくなる。

 自分はダメだったのに、あの人とはフレンドになるんだ……とか思われるんじゃないかって勝手に気にしていた。


 しかし、彼女の場合は他の人と違う扱いでも問題ないと思える。

 誘いなんてそう簡単に送ってこないだろうし、もし来ても乗り気じゃない時はスッパリ断れる気がする。

 それは偶然とはいえ、お互いのことを知ることができたからだ。

 知らない人とは本音でやり取りは出来ない。反応がわからないからな。


 そういう意味ではすでにフレンドなのかもしれない。

 いや、腐れ縁か?


 本来フレンド登録というのは、リアルで繋がりがある気の知れた仲間か、ゲーム内で出会って親しくなった人とするものだと思う。

 ちょっと古臭い考えかも知れないけど、俺は誰でも彼でも登録して浅いつながりをたくさん作るより、少数でも気を使わなくていい関係を構築したい。

 関係が増えすぎたからといって、冷酷にフレンドを解除して整理できる性格でもないからな。


「まあ、まだ構想段階だから実際にゲーム内にギルドを作ってるわけじゃないのよね。まるでスカウトし慣れてるみたいにフレンド申請を送ったけど、構想を誰かに話したのもこれが初めてよ。そもそもNSOの運営方針は予想できないところがあるからねぇ。急に何かぶっこんで来る予感もするなぁ~」


「それは確かに。今の運営は静かだけど、だからこそ何かを仕込んでる気がしてならない。それでフレンドのことなんだけど……」


 彼女のプレイスタイルは俺と似ているし妙に縁もある。

 ゲームに対する考え方も共感できる部分がある。

 少し今までの自分を変えて、この誘いを受けてもいいと思えるプレイヤーだ。


「ありがたく受けさせてもらうよ。俺もフレンド申請を承認するのは初めてだ」


「そう、ありがと。じゃあ、私はもう行くね。あの無敵女がモチーフってことが気に入らないけど、この新しいグロウカードの効果も検証したいし」


「ああ、こちらこそありがとう。助かった」


「じゃ、またどこかの戦場で会った時は……よろしくっ!」


 ネココは走り出し……消えた。文字通りだ。

 あの口調だと敵同士になっても今まで通り本気で殺しに来るだろうな。

 まあ、そうじゃなきゃ困る。


 俺も次に戦場で会った時、瞬殺されないように鍛えないとな。

 彼女のことだ。いつまでも弱体化されたスキルにこだわっているわけでもあるまい。

 予想だにしない新戦法でも見つけてくるだろう。


「さて、俺も行くとするか」


 マップウィンドウを開く。

 すると『ぴろんっ!』という音とともに枠の端っこに『!』が浮かぶ。

 なにかメッセージが届いた時の通知だ。

 いきなりお誘いなんてことはないだろうし、運営からのメッセージか?

 すぐに『!』をタッチして確認する。


「なになに、新イベントの情報を3日後に公式サイトや各動画サイト、ゲーム内特設ステージで発表する……? しかも生配信で?」


 これは……昨今のゲーム業界にはびこる悪しき慣習『予告の予告』じゃないか……!

 まあ、3日後くらいなら特に問題ないけど、月単位で引っ張ることもあるからな……。

 それにしてもNSOでこういうのは珍しい。

 久しぶりのイベントだから、早めに告知を出して注目を集めたいのかも。


 そして、注目を集めたいってことはそれなりに自信があるということだろう。

 前回のイベントのせいで運営が縮こまってるなんてことはなかった。

 やはり、ぶっ込んできたな。

 発表当日は公式サイトを要チェックだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マンガBANG!様でコミカライズ版が連載中!
コミックシーモア様でも配信開始!

下の画像をクリックかタップでコミックシーモア様の販売ページにジャンプ!

89i7h5cv8q4tbuq1ilf5e4s31mr_1bla_go_np_c

オーバーラップノベルス様より書籍版『射程極振り弓おじさん』全3巻が発売中!

表紙の画像をクリックかタップしていただくと各巻の紹介ページにジャンプします!
WEB版と合わせて書籍版も応援よろしくお願いします!


89i7h5cv8q4tbuq1ilf5e4s31mr_1bla_go_np_ckr8eal78d7hhgjduiu2zgr7t2g0u_3ne_go_mu_a89i7h5cv8q4tbuq1ilf5e4s31mr_1bla_go_np_c

ツギクルバナーcont_access.php?citi_cont_id=845389662&s
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[良い点] うんうん、彼女はただ敵対するだけには惜しいと思ってた♪ 最強のライバルと共闘って熱い! 例の変人グループと絡みそうだなぁ [気になる点] 私はフレンドカンスト勢だったなぁ(・ω・)全体の1…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ