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After Data.43 弓おじさん、アルテミスの矢

 近づいてみると、その大きさがよくわかる。

 流石にサーペント・パレスほどではないが、船というにはあまりにも巨大で、パッと見た時に島と見間違えるのも仕方ないと言える代物だ。

 こんなものを短期間で組み上げられるマッドスライムの力は本物だし、だからこそ安易に関わりたくはなかったが、ここまで来たら覚悟を決める!


「アルテミスの船首像、起動!」


 アルテミス号という名前の由来でもある女神の像が、まるで人間のように動き弓を構える。

 彼女が矢を一発撃つのに消費する燃料は1000!

 その威力に至っては……5000!

 一発撃つごとに10分のクールタイムが必要だから、外せばこちらが雲海の藻屑にされること間違いなし!

 だが、当てさえすれば傷ついた空中要塞を完全に破壊することが出来るはず……!


 ありがたいことに狙うべき的は非常に大きい。

 これなら外さない……と思う。

 矢を撃つのはあくまでも女神像であり、俺ではない。

 彼女がどれほどの腕前かわからない以上、ハッキリしたことは言えないんだよなぁ……。


「……限界まで接近する!」


 出来る限り空中要塞に近づいて、命中率を上げるんだ!

 ただ、近づけば当然反撃が来る。

 今まさに要塞から無数のミサイルがこちらに向けて放たれた!


「ガー坊は上から来るミサイルの迎撃! 俺はそれ以外を迎撃する! エイティは回避行動をとりつつ船を要塞に近づけてくれ!」


「私も迎撃に出る! あ、この船の燃料少し分けてもらったから! ありがとう!」


 エッダの背中には……小型のロケットのようなものがくっついていた!

 まさか、あれが彼女のスカイシップなのか!?

 船というよりただのジェットパックじゃないか!

 確かにあれでは空中要塞にケンカを売ることは出来まい。

 そもそも、なぜあれでスカイマップに来ようと思ったのか……。


「とうっ!」


 エッダはアルテミス号から飛び降り、体1つで空を舞い始めた。

 まるで生まれた頃から飛び方を知っていたかのような流麗な飛行で誘導ミサイルのいくつかを自分の方に引き付け、スキルによって撃墜している。

 それだけではない。ミサイルの迎撃をこなしつつ、ミサイルの発射口も潰して回っている。

 やはり彼女はVRHARの一員だ。

 冗談のような戦闘スタイルでも、ちゃんと強い。

 だが、俺はそんな彼らに勝ったプレイヤーなんだ。

 感心してばかりでは、カッコよくないな!


「ミサイルをロック! (スーパー)マルチショット!」


 同時に20発のミサイルを狙撃、空中で爆発させる!

 ガー坊も頑張ってるし、ミサイル程度なら脅威にならないな。

 でも、これ以上接近すれば、ミサイル以外の砲撃が当たりやすくなる。

 そちらは弾速が速い分、撃ち落とすのも容易ではない。

 ここらで勝負に出るか……!


「アルテミス・アロー……構え! 目標は空中要塞!」


 女神像が矢をつがえ、弦を引き絞る。 

 その瞳は目の前の空中要塞を映している。

 よし、狙う方向は間違いない……!


(はな)て!」


 女神の放った矢は白銀の光を帯び、虹の尾を引いて空中要塞に迫る。

 軌道は申し分ない! 当たる……当たった!


 ドッシャアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーッ!!


 爆発音、金属が砕かれる音、悲鳴……。

 ごちゃ混ぜになったいろんな音と共に、空中要塞が雲海へと落ちていく……!

 やった……! 攻撃は大成功だ!


『ぐわああああああああああああっ!? なんだっ!? 何があった!? おいおいおいおいおい! もう少しですべての船を撃墜できそうだったのによぉ!? 誰がやりやがった!?』


 ……コアの声だ。

 拡声器でも使っているのか、相当響いている。

 でも、俺が空中要塞を落としたことには気づいていないようだ。

 面倒なことになる前に退散するとしようかな……。


「ハハハハハ! ざまぁないねっ! ヤンキーの負け! 負け! 負け!」


 エッダが墜落する要塞の周りを飛行し、コアを煽っている……。

 空の旅を邪魔されたことが、よほど気に入らなかったのだろう。


『ああっ!? てめぇは……VRHARのエッダか!? てめぇがやりやがったのか!?』


「違うよ! トドメを刺したのは弓のおじさんだよ!」


 ああ、バラしちゃった……。


『なにぃ!? あのおっさんが来てやがるのかっ!? くっ……見えねぇ! 武装を積み過ぎて顔を出せるところが少ないんだよなぁ!? この要塞はよぉ!』


「ハハハ! まぬけ~!」


『ちくしょう! 覚えてろよ、おっさん……ッ!』


 ドカーンと大爆発を起こし、空中要塞は完全に崩壊した。

 あれに乗っていたプレイヤーたちは当然助からない。

 また変な因縁が出来てしまったが、デスペナルティもあるし、あれだけ大きな船の修理には相当な時間がかかるはずだ。

 しばらくは誰かに追い回されることもなく、静かな空の旅が楽しめるだろう。


「流石はノルド先輩に勝った弓のおじさん! 邪魔なものがなくなって空がスッキリしたわ! ありがとう! あ、またこの船の燃料少し分けてもらったから! それもありがとう! じゃあね!」


 エッダは遠くに見える島に向かって飛んでいった。

 というか、燃料って他のスカイシップに分け与えることが出来るんだな……。

 まあ、彼女のスカイシップは非常に小型だから、持っていかれた燃料は微々たるものだ。

 消費量としては『アルテミスの船首像』の方が圧倒的に多い。

 それでもまだ約2500ほど燃料は残っているし、飛行を続けても問題はない。


「俺もエッダの目指している島に行ってみようかな。彼女のジェットパックでたどり着ける距離なら、俺のアルテミス号でも行けるだろうし」


 そうと決まれば、船を動かそう。

 その場に滞空しているだけでも燃料を消費するからな。


「エイティ、あの島に向けて出発だ」


「ヴルル……ッ!」


 俺が指差した島に向けて、アルテミス号は進み始めた。

 先を行くエッダの姿はもう見えない。

 ジェットパックだけあって、相当なスピードが出るようだ。

 まっ、俺たちはのんびり向かうとしよう。

 今のところ、この空に敵はいない……。


「……雲が増えて来たな」


 そもそもここは雲の上だから、今まではずっと青空だった。

 しかし、ここにきて形のハッキリした雲の塊が増えてきている。

 それも何だか見覚えがあるような雲だ……。


「ワープ、見張り台!」


 バルーン上部に設置されている見張り台へ移動し、空を見上げる。

 そこにあったのは……巨大な繭のような雲だった!

 似ている……! かつて見た風雲竜の棲む雲に似ている……!

 形はそのまま、スケールだけアップしたような……!


「行くしかないか……!」


 あそこなら風雲装備を直すための素材が手に入る……そんな気がしてならない!

 いや、もしかしたらそれ以上の……!


「エイティ、たびたび目的地を変えてすまないが、あの大きな雲に向かってくれ!」


「ヴルル……ッ!」


 アルテミス号は進路を変え、雲の繭へと接近していく。

 さあ、何が出てくるか……!

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― 新着の感想 ―
[一言] 脅迫して従わせた上に作らなくていい他プレイヤーと変な因縁をあえて、わざわざ作り、燃料をくすね、礼の一言だけで謝礼もなしにさっさとどっか行くとかごく普通に害悪すぎる… やっぱバルハラろくなのが…
[一言] いや、モンスタートレインみたいなノリで巻き添えにした挙げ句に燃料をくすね、オッサンの名前を出して勝手に巻き込むのってマナー違反なんじゃ……………
[一言] 風雲装備!よーみーがーえーれー!
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