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After Data.42 弓おじさん、空中要塞

「さて、まずは一番近い島を目指すか」


 スカイマップの地図は持っていないので、目的地は目視で探すほかない。

 一応、前回の航海時にいくつか目星をつけているが、どれも結構遠そうで……。


「……ん?」


 なんだ? 前回の航海の時にはなかった島がある。

 しかも、他と比べて明らかに近い!

 色は濃い緑で、形は……六角柱?

 なんだか人工物っぽいな。

 側面から飛び出しているものは砲台か?

 底面には巨大なロケットエンジンがいくつも付いている……。


「まさか、あれもスカイシップなのか!?」


 船というより空中要塞じゃないか!

 それにこのマッドな感じのグリーン……見覚えがある。

 もしかすると、あれはプロゲーマー集団『マッドスライム』のスカイシップかもしれない。

 彼らは『ゲーム荒らし』の異名を持つだけあって行動が派手だし、チームの人数も非常に多い。

 数の力を生かしてパーツを集めまくり、短時間であれほどのスカイシップを組み上げたとしてもおかしくはない。

 特にリーダーであるコアの実力は飛びぬけているからな……。


「見なかったことにしよう……!」


 彼らとは面識があるし、関係も悪いわけではない。

 しかし、あの要塞には近寄りたくない……!

 なぜならスカイマップはプレイヤーキルが許可されているからだ!

 誰のスカイシップを撃ち落とそうと問題なし!

 ここは海賊の海なのだ……!


 ルール上問題ないとなれば、コアは確実に俺を狙ってくるだろう。

 でも、それは見つかったらの話だ。

 これだけ距離があればこちらのスカイシップはハッキリ見えないだろうし、そもそも彼らは俺がどんなスカイシップに乗っているのかを知らない。

 無視して航海を続けることに何の支障もないというわけだ。


「エイティ、それじゃあ……あの島を目指して出発進行だ!」


 空中要塞とは逆方向に浮かぶ島を指さし、エイティに命令を出す。

 船はゆっくりと加速し始めた。


「まった! まった! まったぁ~!」


 ダンッと音を立てて甲板に着地した人影。

 紫色の髪をゆるめの三つ編みにし、ナイトローブのようなゆったりとした服を着ている。

 頭にはポンポンのついたナイトキャップ被り、全体的に眠たげな雰囲気に見えるが、本人の目はぐっすり寝た後の朝のように見開かれている。


 ……俺は彼女をどこかで見たことがある。

 そう、『第1回NSO最強パーティ決定戦』の決勝戦だ。

 彼女はVRHAR(ヴァルハラ)のメンバーの1人で、名前は確か……。


「弓のおじさん、今すぐ船を止めて!」


「あっ、ああ……」


 勢いに気圧されて船を止める。

 彼女の名前……出かけているのに出てこない!


「私のこと忘れてそうな顔をしてるから3回名乗っておくね。私の名前はエッダ! VRHAR(ヴァルハラ)のエッダ! おしゃべりのエッダ!」


 あっ! そうそうエッダだ!

 『おしゃべり』の異名の通り、やたらよくしゃべる子だ。

 決勝戦では俺と離れた場所でネココと戦っていたから、ノルドほど印象に残っていなかったけど、確かに彼女もあの戦いに参加していた。


 でも、なぜ彼女がここに……?

 見たところスカイシップすら所持していないようだが……。


「そして、言いたいことはただ1つ……! あの邪魔な空中要塞を落としてほしいの!」


「ええっ!?」


「私の行きたい島はあっちの方向にあるの! 避けて通ろうにも私のスカイシップじゃ最短距離で向かわないと燃料が足りないし、落とすにしても火力不足でどうにもならない! だから、ノルド先輩に勝った強い弓のおじさんはあの空中要塞を落とさないといけないの!」


「お、落とさないといけないのかい?」


「うん! 落としてくれなかったら……先にこの船を落としちゃう!」


 エッダが武器である分厚い本をビシッと突きつける。

 これは……割と直球で脅されている!

 まずいな、彼女の武器は本だから遠距離魔法攻撃タイプに見えるが、実際はネココと正面から戦えるほどの近接格闘タイプだ。

 すでに船の上に乗り込まれ、目の前に陣取られている状況では勝ち目がないだろう。


 いや、この船には俺のユニゾンたちがいる。

 全員で取り囲めば勝てる可能性もあるか?

 まあ、どちらにせよ船上で戦えば船への被害は避けられないな……。


「別にこの船だけで戦えって言ってるわけじゃないよ? 今もあの空中要塞にはいくつかのスカイシップが攻撃を仕掛けてるし、それなりにダメージも与えているの。でも、このペースだと全滅しちゃう! あとちょっとで落とせそうなのに……。だから、弓のおじさんにはトドメの一撃をお願いしたいの。ほんともうあと一発って感じだから!」


 確かに空中要塞の周りでは爆発が起こっているし、誰かが今も戦っているのだろう。

 それもおそらく……巻き込まれたのではなく好きで戦っている。

 構造的に空中要塞の移動速度は相当遅いはずだし、並のスカイシップならば逃げることは簡単なはずだ。

 なのにその場に居座って戦うということは、自分の意思以外考えられない。

 もしかしたら、マッドスライムに何か恨みがあるのかもしれない。


 俺は別に恨みなんてないが……今はマッドスライム以上に敵に回したら怖そうな子に捕まってしまっている。

 ここはエッダの言う通りにした方が得策だな。

 それに俺としても『あのパーツ』を試したいと思っていたところだし、その相手が超巨大空中要塞なら……不足はない。


「アルテミス号、回頭! 目標はあのマッドグリーンの空中要塞だ!」


「ヴルル……ッ!」


 ぐるりと向きを変え、アルテミス号は空中要塞に向かって進み始めた。

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