After Data.41 弓おじさん、夢の操舵手
「徐々に減速……着陸態勢……よし、停止だ!」
アルテミス号を無事に着陸させ、一度召喚を解除する。
船はすぐに光の粒子となって散り、空き地は元のように殺風景な場所になった。
「まずはスカイ・シャーク・ランチャーを装備するかな」
ステータスを開き、画面上のスカイシップに新たなる武装を付け加える。
船の周りを飛び回るわけだから、どこに設置するか悩む必要もない。うーん、簡単簡単!
次はプロペラの修理に向かおう。
プレイヤーの装備と同じく、職人に依頼することでパーツを直すことが出来る。
壊れた『ロイヤルビッグプロペラ』はデザインこそレアパーツっぽいけど、実際は店売りパーツだし、修理にはそう時間はかからないはずだ。
「確かこの空き地から工房へは……こっちだったかな?」
里の中を歩いていると、アイテムショップが目についた。
そういえば、回復アイテムのストックが減っていたような……。
スカイマップでの戦いは想像以上に激しかったし、俺自身のHPやMPが大きく削られる展開も当然あり得るだろう。
ここは先に回復アイテムを揃えてから工房に向かうとするか。
「……ん? なんだ、このアイテムは?」
販売されているアイテムのリストの中に、見知らぬアイテムが混ざっている。
ここのアイテムショップは以前にも利用したことがあるが、こんなアイテムはなかった。
というか、『ユニゾン用スカイシップ操縦免許証』なんて名前からして、今回のアップデート後に追加された新アイテムであることは間違いない!
そして、その効果は……ユニゾンにスカイシップを操縦する権利を与える!?
「これも買おう!」
権利を与えるという妙な言い回しは気になるが、ちょうど操舵手について悩んでいたところだし物は試しだ。
回復アイテムと免許証を購入した俺は、早速免許証を使ってみることにした。
……ってこれ、消費アイテムじゃなくて、装備アイテムだ!
確かに免許証は持ち歩いてこそ効果を発揮するものだから、装備アイテムというのは正しい扱いなのかもしれない。
ステータスでガー坊の装備欄を開き、『大地の一角獣の角』を外して空いた枠に免許証をセットする。
これでガー坊もスカイシップを操縦出来るように……なったのか?
実際の効果はスカイシップに乗ってからじゃないとわからない。
ここはさっさとプロペラを修理してアルテミス号を再召喚しよう。
職人の工房にダッシュで向かい、素早く修理を依頼!
完了後は駆け足で空き地に戻った!
「スカイシップ召喚!」
再び姿を現したアルテミス号に乗り込み、ガー坊を操舵輪の前に呼んでみる。
「ガー坊、アルテミス号を操縦するんだ」
「…………」
反応がない。これはダメなパターンだ……。
というか、ワニ型ユニゾンのガー坊には操舵輪の位置が高すぎる!
とてもじゃないが前足が届きそうにない!
いや、仮に何とか前足を操舵輪に乗せることが出来たとしても、ガー坊にこれだけ巨大な乗り物を操縦する知能はないと思う。
ガー坊の普段の行動と同じように、船で敵に突進されても困るからな……。
なるほど、だからあくまでも『権利を与える』なのか。
権利を与えられても、実行は出来るかどうかはユニゾン次第と……。
なら逆に、どんなユニゾンなら人間でも苦戦する船の操縦が出来るというのだろうか?
まずそれなりに身長があって、器用な手足があって、高い知能があって……なんて、そんなユニゾンいるのか?
「いるなぁ……それも身内に」
エイティならそれらの条件を十分満たしているように思える。
銃器が扱えるほど手先が器用で体も大きい。
性格も冷静沈着で、戦闘スタイルからは頭の良さがうかがえる。
うん、連れていくユニゾンをガー坊からエイティに切り替えてみよう。
幸いここは街の中だし、切り替えるのも簡単だ。
「ヴルルルルルル…………ッ!」
呼び出したエイティに免許証を装備させる。
免許証はカードホルダーに入れられ、ひもで首から下げる形になっている。
うーん、UMAと免許証……なんとも珍しい組み合わせだ。
「エイティ、アルテミス号を操縦するんだ」
「ヴルル……ッ!」
エイティは素直にうなずき、その手で操舵輪を握りしめた。
これは……いける反応だ!
ならばさっそくスカイマップへ……。
『ユニゾンを操舵手として登録しますか?』
突然のアナウンス……!
登録しますかというか、すでに免許を持たせて操舵輪を握らせているが……。
『操舵手として登録されたユニゾンは通常のユニゾンの枠を外れます。そのため、通常のユニゾンの枠に新たなユニゾンを登録することが可能です』
つまり、操舵手としてエイティを登録すれば、通常のパーティとしてのユニゾンの枠にガー坊を入れられるってことか?
それって、実質的にユニゾン2体編成が可能になるってことじゃ……!
「エイティを操舵手として登録する!」
「ヴルル……ッ!」
「そして、来い! ガー坊!」
「ガー! ガー!」
まさかユニゾンマスターでもないのに、この組み合わせが完成するとは……!
ガー坊とエイティの2体がいれば、恐れるものはさほどない!
たとえスカイマップといえども……だ!
「エイティ、上昇開始だ!」
「ヴルル……ッ!」
最初は緩やかに、徐々に加速をつけながらアルテミス号は上昇する。
この時点で俺よりも操縦が繊細だ……! これは期待できる!
アルテミス号は再び金の雲の輪をくぐり、スカイマップに乗り込んだ!
書籍版『射程極振り弓おじさん』第3巻は5月25日発売予定!
このあとがきの下の方に1~3巻の表紙をズラッと並べて掲載しておりますので、興味のある方はぜひチェックしていただけると幸いです!
また、いつも通り活動報告の方にも表紙を載せているので、そちらもぜひ!