表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
253/281

After Data.21 弓おじさん、紅い井戸の底

 エイティも乗り気のようだし、本腰を入れて洞窟を探そう。

 最初のボスが洞窟にいたからといって、次のボスも洞窟にいるとは限らない……と、他のフィールドならば思うところだが、火山と雪山に潜むボスに関してはすべて壁画モンスターである可能性が高い。

 壁画といえば洞窟に描かれているものだし、やはり探すべきは洞窟なのだ。


 現在地からぐるりと火山を一周するように進み、移動中は山肌に目を凝らす。

 赤い大地にぽっかりと開いた黒い穴は目立つ。

 よほど適当に探していない限り、洞窟は必ず見つかるはずだ。


 問題は探索を邪魔するモンスターたちだが、当然山の低いところよりも強くなっている。

 何より大体のモンスターが体から炎を噴射させて加速するスキルを持っているため、振り切って逃げるのも難しい。

 ただ、耐久力だけはさほど上がっていないため、勢いよく迫ってくる敵に怯まず、正確な射撃を行うことが出来れば、怯える必要はない。

 つまり、俺とエイティにとっては恐るるに足りない存在ということだ。


「エイティ、氷柱恋々弾(つらられんれんだん)!」


「ヴルルルルルル…………ッ!」


 エイティの放った氷柱の弾丸が『フレアラプトル』の胸を貫く!

 このフレアラプトルは陣取りの時の仲間モンスター『エアロラプトル』の亜種で、スピードや火力に関してはエアロラプトルより優れているものの、その力をうまく制御できないという欠陥を抱えている。

 背中に乗せてもらうにしても、仲間にするにしても、じゃじゃ馬すぎて扱いづらいタイプだな。

 特に乗るとなると体から噴き出す炎が熱そうだし、やはりエアロラプトルが俺好みだ。


「よし、追ってくるモンスターはすべて狩ったし、これで背後を気にせず洞窟に入れるな」


「ヴルル……ッ!」


 発見した洞窟は最初の洞窟と形がよく似ていた。

 大きな違いといえば、壁がほんのり赤く発光していることぐらいか。

 あからさまに熱を帯びた色をしているが、触れてみてもダメージはない。

 これも『Aビッグフットブーツ』のおかげかな……みたいなことを考えつつ、洞窟の中へ足を踏み入れる。


 すると、奥の方から風が吹いてきた。

 まるで俺たちの侵入を拒むような風、それもおそらくかなりの熱風だ。

 今の状態でも少しだけ熱さを感じる……!


「ヴルル……ッ!」


 熱風を前に立ち止まった俺の前にエイティが立つ。

 そして、盾を構えて熱風を防ぎつつ、そのまま前に進み始めた。

 おお……っ! なんとありがたい気遣いだろう……!

 エイティは【雪崩の守護者(アヴァランチャー)】の効果で『灼熱』を完全に無効化しているから、まだ雪山の装備を1つしか持っていない俺よりも熱さには強い。

 ゆえに前に出て俺への影響を減らすという判断は、AIらしさあふれる合理的な行動とも言えるのだが……ここはあえて言わない!

 スッと前に出てかばってくれるという行動そのものが愛らしいんじゃないか!


 おかげで俺は洞窟の壁に描かれた壁画を観察することに集中できる。

 ここも最初の洞窟と同じようにまずは周辺に出る雑魚モンスターが描かれ、最奥手前になると非常に手の込んだタッチで描かれた3体の壁画が姿を現す。

 鳥っぽいものはすでに戦った『紅蓮壁画鳥(ぐれんへきがちょう)ヴォルケーノフェニックス』を表していると見て間違いない。

 そう考えると、次に戦うのは順番的に竜の壁画のモンスター……。

 んんっ、よく見るとこの壁画……竜というよりトカゲとかに近いか?

 でも、トカゲにしては少しフォルムが丸っこいような……。


「まあ、あと少し先に進めばわかることか」


 俺はボスが待ち構えているであろう洞窟の最奥へと足を踏み入れた。

 そこで待ち受けていたのは、いつものようなボス戦らしさ満載のドーム状の空間ではなかった!


「て、天井が高い……!」


 空間は円柱状のものだった。

 俺たちのいる場所はまるで深い深い井戸の底。

 壁全体が発光しているから暗くはないし、空間自体は広いのだが、なぜか妙な圧迫感がある。

 いま俺たちが入ってきた入口はすでに閉じられた。

 見上げる高い高い天井には、やはり巨大な壁画が描かれている……!


 マアアァァァァァァーーーーーーッ!!


 よくわからない鳴き声と共に壁から抜け出てきたのは、巨大な……なんだろう?

 見た感じ火山に出るサラマンダーに似ているし、名前も『紅蓮壁画魚(ぐれんへきがうお)ヴォルケーノサラマンダー』なのだが、見た目が少々丸っこい。

 あれ、『魚』……? 名前に『魚』が入っているということは……。


「こいつのモデルはサンショウウオか!」


 そういえばサンショウウオの英名はサラマンダーだ。

 そして、このサラマンダーという呼び方にはイモリの仲間も含まれている。

 イモリは井戸を守るからイモリ。

 だから、ボス部屋も井戸っぽい構造をしてるんだろうな。

 うーむ、運営も毎度毎度上手いことこじつけ……いや、関連付けてボスを作るものだ。


 それはそれとして、壁から出てきたサラマンダーはまったく地上に降りてこない!

 今もなお天井付近の壁に張り付いてジッとしている!

 でも、戦う意思がないわけじゃなさそうだ。

 その目がずっと俺たちを見下ろしている……!


 とはいえ、焦ることは何もない。

 普通なら地上から高い天井に張り付いているサラマンダーに攻撃を加えるのは至難の業だ。

 でも、俺の射程ならば余裕で届くし、何の不自由もない。

 この位置関係でも100%の実力を発揮できる自信がある。


 しかし、このボス戦が俺のためだけに作られたものではない以上、近接戦闘メインのプレイヤーでもあのサラマンダーに攻撃を加える手段がなければならない。

 本気で戦う前に、その手段が何なのかをぜひ知っておきたい。

 知っておけば、さらに有利に戦いを進められるかもしれないからな。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!


 なんだ? 地面が……揺れる!

 攻撃ではなさそうだが……?

 そう思った次の瞬間、俺は俺の乗った地面ごと空中へと打ち上げられていた。

 一瞬驚いて思考停止しそうになったが、自分の乗っている地面以外にも、まるでリフトのように地面がいくつも打ち上がっている様子を見て、俺は理解した。


 これは地下から噴き上がるマグマの力によって上昇する足場だ!

 それもしばらく時間が経つとマグマの力が弱まり、徐々に地上へと降りていくタイプ……!

 攻撃ではない完全なるお助けギミックなので、この足場に乗っていれば落ちる時も落下ダメージを受けることはないだろう。


 近接戦闘を得意とするタイプのプレイヤーは、この足場に乗っかってサラマンダーに接近し、攻撃を加えるのが正攻法というわけか。

 逆に遠距離攻撃を得意とするプレイヤーにとってこのギミックは罠に近いな。

 遠くから攻撃したいのに、無理やり敵の近くに送り込まれてしまうのだから。

 そう、今回の俺のように……!


 マアアァァァァァァーーーーーーッ!!


 サラマンダーが待っていましたと言わんばかりに大口を開ける。

 その口内には、赤々と煮えたぎるマグマがたっぷりと含まれていた。

 そしてそれは……今にも吐き出されそうだ!


「……あらら」


 危なすぎて逆に冷静になっているが、最初から大ピンチだぞ……これ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マンガBANG!様でコミカライズ版が連載中!
コミックシーモア様でも配信開始!

下の画像をクリックかタップでコミックシーモア様の販売ページにジャンプ!

89i7h5cv8q4tbuq1ilf5e4s31mr_1bla_go_np_c

オーバーラップノベルス様より書籍版『射程極振り弓おじさん』全3巻が発売中!

表紙の画像をクリックかタップしていただくと各巻の紹介ページにジャンプします!
WEB版と合わせて書籍版も応援よろしくお願いします!


89i7h5cv8q4tbuq1ilf5e4s31mr_1bla_go_np_ckr8eal78d7hhgjduiu2zgr7t2g0u_3ne_go_mu_a89i7h5cv8q4tbuq1ilf5e4s31mr_1bla_go_np_c

ツギクルバナーcont_access.php?citi_cont_id=845389662&s
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ