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After Data.6 弓おじさん、火山の秘密

 問題はそのすごい物がどこに眠っているのかということだ。

 新たに発見した雪山も早く探索したいが、まずは火山から進めなければ……。


「あ! あれは……!」


 ここから数百メートル先。

 赤茶けた山肌の少しくぼんだ部分に大きな横穴があいている!

 パッと見た感じ、人工的に掘られたものに見えるが……。


「ジェットブラスト!」


 近づいてみればハッキリするだろう。

 これは大きな発見だ。

 今まで火山の景色は本当に代り映えしなくて、ふと『実は何もないんじゃないか?』と思ってしまうほどだった。

 だが、火山と雪山が並ぶ奇妙な環境が、その迷いを吹き飛ばしてくれた。


「やっぱり、自然に出来た横穴じゃないな……。これは人の手によって掘られたトンネルだ」


 天井や壁はゴツゴツした岩の質感が残っているが、地面は比較的綺麗にならされている。

 ところどころに燭台が設置されていて、俺がトンネルに近づくと、ひとりでにボウッと火が灯った。

 何かいる……何かある……。

 そう思わずにはいられない空気に満ちた洞窟に、俺は足を踏み入れた。


「……ガー坊を召喚しておくか」


 これまでの探索は素早く逃げることが基本だったので、ガー坊は引っ込めてあった。

 でも、ここからは狭所での戦いになる。

 機動力は大して生かせないし、ガー坊に前を歩いてもらった方が安全だ。

 なんてったって、今の状態だと俺よりも強いからな。


「頼んだぞ、ガー坊」


「ガァー! ガァー!」


 さて、洞窟はひたすら真っすぐに伸びている。

 前に進むたびに新たな燭台に火が灯り、周囲を照らしてくれるので自前の松明を使う必要はない。


「壁に絵が描かれている……」


 古代の壁画を思わせる絵の数々に若干ドキッとした。

 ああいうものに本能的恐怖を覚えるのは俺だけなのだろうか。

 決してリアルに残酷なものが描かれているわけでもないのに、体の芯が震える感じがする。


 壁画は想像も出来ない遥か昔にも人は存在し、生活を営んでいたという証拠だ。

 ゆえに普段は考えもしない『大きな時の流れ』を自覚させる。

 つまり、この恐怖感は『時間』に対するものなのか……?

 まあ、ここから先はアンヌの領域か。


 壁画に描かれているのはサラマンダーなど、この火山に生息するモンスターたちだ。

 身近なモンスターが描かれているだけと理解すると、途端に恐怖感は消える。

 やはり遥かなる時の流れに対する畏怖(いふ)が俺を本能的に(おび)えさせ……。


「ん? なんだこいつ?」


 急に見たことがないモンスターの壁画が現れた。

 1つは鳥っぽく、1つは竜っぽい。

 そして、大きな人っぽいものもある。

 どれも今までの壁画よりも非常に手の込んだタッチで描かれているので、今にも壁から飛び出してきそうな躍動感がある。


 でも、このモンスターたちが実際に躍動している姿は見たことがない。

 これまで描かれていたのが火山に棲むモンスターだったわけだから、こいつらも当然火山に出てくるモンスターなのだろう。

 おそらく、今は入れない発火現象が起こる領域に……。


「なんか、嫌な予感がしてきたな……」


 いや、強敵と出会うこと自体は悪いことではないか。

 いつだってレアなアイテムを手に入れるには、強敵を倒さなければならない。

 むしろ、これでこの山に何か隠されていることが確定的になったとも言える。

 さあ、テンションを上げて先に進もう!


 こうしてトンネルの奥へと進んだ俺を待ち受けていたのは、広い空間だった。

 天井の形状はドーム状、地面はまっ平ら。

 あー、これは戦いに適した空間ですなー。

 特に巨大な敵との戦いに……。


 キエエエエエエエエエーーーーーーッ!!


 真上から鳥の鳴き声。

 突如として空間がパッと明るくなる。

 天井を見上げると、そこには見事な不死鳥の天井画が描かれていた。


「天井画が……燃えている!」


 まるで本物の不死鳥……フェニックスのように!


 キエエエエエエエエエーーーーーーッ!!


 2度目の鳴き声と共に、天井画のフェニックスが天井から飛び出してきた!

 その名も『紅蓮壁画鳥(ぐれんへきがちょう)ヴォルケーノフェニックス』!

 トンネルに描かれていたまだ見ぬモンスターの1体に非常に似ている……!

 それにしても名前がめっちゃ長い!

 でも、このセンス……嫌いじゃない!


「ガー坊、速攻を仕掛けるぞ!」


「ガァー! ガァー!」


 こういう長射程を生かしきれない閉所での戦いは得意じゃない。

 さっさと決着をつけてしまうのが吉だ。

 それにこの燃え盛るフェニックスが現れてからは、トンネル内ということで比較的ひんやりしていた空間の温度が一気に上昇した気がする。

 ダラダラしてるとまた装備が燃えてしまうかも……!


三つ又天羽矢の(トライデントアロー)……!」


 おっと、【天羽矢の大嵐】は『機神弓(きしんきゅう)天風叢雲(アマカゼノムラクモ)』の武器奥義だから今は使えないんだった。

 ボス戦となると反射的に使いたくなってしまう。

 それだけこの奥義に頼ってきたということだな。


「ガー坊、黒子ガイル! そして、ホーリースプラッシュ! 俺は巨大三つ又の矢ビッグトライデントアロー!」


 5体の分身を生み出す奥義【黒子ガイル】からの水属性スキル【ホーリースプラッシュ】!

 そして俺も奥義【ビッグアロー】とスキル【トライデントアロー】を融合させ、強力な水属性の矢を放つ!

 相手は火の鳥! 火は水が弱点と相場が決まっている!


 キエエエエエエエエエーーーーーーッ!!


 フェニックスがその燃え盛る翼を羽ばたかせ、熱風を生み出す。

 俺たちが放った水属性スキルはその熱風を浴びて蒸発してしまった!

 さらにそのまま熱風が俺たちを襲う……!


「ぐぅぅぅ……! なるほど、この火山では属性の関係もめちゃくちゃということか……!」


 このフィールド特有の特殊ルールに、いつもの装備を欠いた状態でのバトル……。

 ものすごく熱々の逆風が吹いているが、これを乗り越えれば俺はさらにプレイヤーとして成長できるはずだ。


 相手は鳥。

 水属性で弱点を突けなくたって、こっちには矢の飛行特効がある。

 狩って見せるさ、速攻で!

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