Data.202 弓おじさん、真の切り札
「ネバネバ解除!」
もぎ取った勢いのままに【粘着する星】を解除するアンヌ。
こうすることで大盾は空中に投げ出され、勢いよくフィールドの端っこまで飛んでいった!
文字通り無敵の【無敵重装鎧兵】の弱点はやはり妨害効果!
ダメージを無効化できても、ギミックには弱い……古き良き無敵化だ!
そして、銀色のオーラが消滅したことにより、その無敵効果もやっと消えたようだ。
大盾はもはや回収不可能。
無敵化はミラクルエフェクトなのでもう使うことが出来ない。
ここから反撃開始だ!
「もう1つの盾もいただきます!」
アンヌは再び【粘着する星】を発動。
バックラーのもう1つの盾、実物の『小型の円盾』をもぎ取りにかかる!
対するバックラーは……鉄球に向かって盾を突き出した!
「ウルトラバウンド!」
ボヨンッと鉄球が弾き飛ばされる!
その勢いはすさまじく、握っていた鎖がアンヌの手をすり抜け、鉄球もろとも遥か彼方に飛んでいってしまった。
くっつく力と弾き飛ばす力がぶつかり合った結果、弾き飛ばす力の方が勝ったということか……!
だが、武器を失うだけの活躍をアンヌはしてくれた!
「ぬぅぅぅ! ぐおおおおおおっ!!」
俺の放った【獄炎天羽矢の大嵐】がバックラーに直撃する!
【パリィワープ】を使うには盾で攻撃をタイミングよく受け止める必要があるが、その盾は今アンヌに対応するために使ってしまった。
つまり、このタイミングでの攻撃は俺にとってノーリスク!
この要領で、アンヌが作り出してくれる隙に攻撃を合わせるんだ……!
そのためにはふわふわ空中に浮いてないで、地に足つけた射撃を行う必要がある。
「エナジーバリアⅤ!」
俺が地上に降り立ってすぐ、バックラーは濃紺のエネルギーバリアを展開した。
巨大な板状のバリアは、まるで俺とバックラーを分かつ壁のようだ。
しかし、こんなものでは俺の矢は防げない。
壁があるなら、山なりの軌道で矢を飛び越えさせるだけだ!
「ガトリング・インフェルノアロー!」
獄炎の矢がバリアを飛び越えバックラーに降り注ぐ!
「リアクティブ・ヘキサゴンシールド!」
バックラーの周囲に六角形の小型シールドがいくつも浮遊する。
シールドは攻撃に対して自動的に反応し、防衛行動をとるようだ。
矢はバックラーに届くことなくシールドに弾き飛ばされていく……!
しかも、このシールドには面白い効果がある。
攻撃を受ける際、自ら爆発することで攻撃を弾き飛ばしているのだ。
まさに『リアクティブアーマー』ってことか……!
弾き飛ばされた矢はその時点で消えることはなく、どんどん地面に突き刺さっていくが、もうこの時点で攻撃能力は残っていない。
どちらにせよ、時間が経てば消えていくのみ……ん? んんっ!?
バックラーの近くになんかカメレオンみたいな生物が転がってるぞ!?
白い肌に赤い十字の模様があるし、なんかナースみたいだな……。
どうやら流れ弾ならぬ流れ矢が刺さってダメージを受けているらしい。
フィールドに野良モンスターは存在しない……。
つまりあのモンスターが正道騎士団のユニゾンか。
すでになんか瀕死っぽいが、ここはしっかり倒しておかなければ……!
「フィクサー……! くっ、いつもは避けるのが上手い奴だというのに……! これも弓使いの命中能力がなせる業か……!」
バックラーの口ぶりでは、あのカメレオンはフィクサーという名前らしい。
要するに黒幕という意味か。
ずっと姿を見せなかったあたり、強力な隠密能力を持っているんだろうな。
偶然矢が当たって助かった。流石に俺も見えない敵を狙って当てることは出来ない。
「ガトリング・ドリルアロー!」
今度は貫通力に優れる【ドリルアロー改】を連射する。
バックラーを狙いつつ、フィクサーの方も仕留める!
「ヘキサゴンシールド連結! 上をカバーだ!」
六角形のシールドが次々とくっつき、1枚の巨大なバリアになった。
流石にこれでは矢はフィクサーに届かない……だが!
「いけいけ! 超速の転がる星!」
予備の星球を装備したアンヌがどんどん鉄球を転がす!
フィクサーは自分を回復していたのか元気を取り戻し、姿を消して回避を試みる。
しかし、でたらめに転がる大量の鉄球に巻き込まれてしまったのだろう。
キルを伝えるアナウンスがすぐに流れてきた。
「ぬぅぅぅ……! フィクサー、お前が命懸けで与えてくれたHP……無駄にはせんぞ!」
あの見た目だし、やはりフィクサーは回復役か。
厄介なところで来てくれたものだ……。
せっかく奥義を直撃させられたのに、その分のダメージを回復されてしまったかもしれない。
しかし、装備の傷は直せない。
いくらバックラーの防具が硬くとも、融合奥義の直撃を受ければ無傷では済まない。
バックラーは……確実に脆くなっている!
そして、アンヌが【超速の転がる星】で俺の前に立ちふさがる【エナジーバリアⅤ】を砕いてくれている!
まっすぐ射線が通った……。
あの奥義でトドメをさす時だ!
「獄炎風神裂空!」
【インフェルノアロー】と【風神裂空】の融合奥義。
この高速の矢で陣取りの時のようにトドメを……。
「ここだ……ッ!」
バックラーは超高速の【獄炎風神裂空】に対して【パリィワープ】を成功させた。
彼はすぐに俺の背後へとワープする。
「勝負を焦ったな弓使い! そして、地上に降りたのも失敗だった! ウルトラバウンドの応用、ウルトラバウンドドリブルで終わり……だ……!?」
「スターダストアロー!!」
バックラーほどの男を同じ戦法で倒せるわけがない。
俺は信じていた。
あの時、自分を撃破した【裂空】にだけは絶対に対抗できるようにしてくると。
意地でも【パリィワープ】を成功させ、あの時のリベンジを成功させると……!
ワープしてくるタイミングさえわかれば、いくらでも回避手段は存在する。
今回は『パリィ!』という成功の音と同時に【壱風の摺足】を発動させた。
【壱風の摺足】は脚部装備『風受の武者袴』の武器スキルで、超短距離かつ超高速の移動を実現する。
この効果でワープして来たバックラーの背後に回り込んだ俺は、その巨体を両腕でがっちりホールドした!
俺たちの体は天へと昇っていく!