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Data.138 弓おじさん、進むべき道

 サトミにユニゾンの第3進化のことを聞くにあたって、俺の中に1つの疑問が生まれた。

 そもそも、ガー坊って第2進化とかしてたっけ……?

 俺の知る限りではなかった気がする。

 だから、サトミにはユニゾンの進化そのものについて尋ねた。


「ユニゾンの進化というのは……まあパッと思いつくゲームのモンスターの進化と同じです。レベルを上げると姿が変わって強くなります。でも中にはレベルだけじゃなくてアイテムなどが必要とされることもあるらしいです」


「あるらしい……サトミのゴチュウは進化したことがないのかい?」


「はい、ゴチュウは出会った時すでに第3進化の『マジックモンキー』でしたから」


「なるほど……!」


 つまり、ガー坊は出会った時の姿である『レイヴンガー』がすでに第2進化だったということか。

 確かに野生で進化後のモンスターが出てくるなんて普通のことだ。

 出会った時のガー坊のレベルは30だし、まあ一般的なイメージだと1回は進化しているだろう。


 でも、今のガー坊は60レベルにまで成長している。

 レベル的には第3の姿に進化していてもおかしくない。

 これがドラゴンとか特別なモンスターならまだしも、ガー坊はお魚だ。

 お魚モンスターっていうのは、割と早い段階で進化するイメージがある。


「おそらくガー坊が進化するにはレベル以外の何かが必要なんでしょう。でも、それは僕にもわからないし、ネットで調べても情報がありません。がむしゃらに探すのも現実的ではないと思います」


「そうか……。でも、レベル以外の何かを使ってユニゾンを進化させたプレイヤーは確かに存在するんだよね?」


「ええ、進化させたという報告はいくつもあります。でも、それは他のユニゾンの話なので、ガー坊の進化に何が必要なのかという答えには……あっ!」


「ど、どうしたの……?」


「そういえば、いくつかの報告の中に『ユニゾン自身が進化に必要なアイテムがある場所に導いてくれた』という記述がありました……。そして、その場所というのは決まってユニゾンと初めて出会った場所に近いとも……」


 俺とガー坊が出会った場所……南の海か!

 そこにガー坊を連れていけば、進化に必要な物を自分で探し出してくれるというわけだ。


「でも、ガー坊を仲間にした後もしばらく同じ場所を冒険していたけど、特に変わった様子はなかったなぁ……」


「進化には一定のレベルとアイテムが必要ですから、レベルが足りていない段階ではアイテムにも反応しない仕組みになっているのかもしれません」


「それなら出会った段階で反応しないのも納得だ……!」


 重要な情報を教えてくれたサトミに礼を言い、先に旅立ったネココとアンヌと同じく初期街から離れた。

 俺が次に目指すべきは南の海だ。

 だがその前に、空上郷のウーさんの工房を訪ねよう。

 ゴーストフロート攻略中は他の街に行くことが出来なかったから、モンスターを倒して手に入れた素材アイテムが溜まっている。

 この中に風雲装備を進化させられるアイテムがあれば万々歳だが、風雲という言葉と幽霊やらゾンビやらはうまく結びつかないなぁ……。




 ◆ ◆ ◆




「おおっ、まさかまさかだ……!」


 ウーさんの工房の受付天女さんに見せてもらったウィンドウには驚くべき結果が表示されていた。

 風雲装備の中でも未進化の3つの装備、そのすべてが『進化』あるいは『強化』可能になっていたのだ。

 ゴーストフロートで倒した奇怪なモンスターたちが落とした素材が決め手になるとは、俺も運が良い男だ。


 ウーさんに進化と強化を依頼し、装備を預ける。

 預けた装備は頭部の『風流の襟巻』、脚部の『風受の袴』、両腕の『雲穿の弓懸』だ。

 頭部と両腕には武器スキルが存在しなかったので、ここにスキルを追加できれば戦法も広がる。

 脚部の袴も胴体の羽織がカッコよく進化した結果、ちょっとチグハグで釣り合わない感じになっていたのでデザイン面のアップグレードにも期待だな。


 作業完了には約3日を要する。

 その間はお休み……なんてことはなく、普通に冒険を続ける。

 対人戦やイベント戦に中途半端な装備は持ちだせないが、普段のフィールド探索ならば多少性能が低い装備でも問題ない。


 何よりギルド全員で最強を目指すと誓ったんだ。

 時間は無駄に出来ない。

 俺は基本的にマイペースに遊ぶのが好きだが、それを言い訳に若者たちの足を引っ張る情けないおじさんにはなりたくないからな。

 しばしの間はカッコイイおじさまを気取るとしよう。


 さて、ファストトラベルで港町トナミに飛んで、南の海を探索だ。

 薄暗いゴーストフロートにしばらくいたから、照り付けるような太陽が恋しいぜ……なんちゃって。


「あれ? 運営からお知らせが届いてる……なっ!?」


 お知らせのタイトルは『第1回NSO最強パーティ決定戦開催決定!』というド直球なものだった。

 おいおい、この情報はまだ廃人にしかわからないようになってるんじゃなかったのか?

 それとも、案外誰でも知ろうと思えば知ることが出来るようになっていたのか?


 どちらにせよこのタイミングでの公式発表というのは予定通りではないだろう。

 情報が広まりすぎた結果、憶測が憶測を呼んで混乱が生じ始めたから公式から声明を出したって感じだ。

 記されている大会のルールは……うん、やはりネココがVRHAR(ヴァルハラ)のメンバーから聞いた情報そのままだ。


 逆に言えば、新情報は何もない。

 そういったものは『黄道十二迷宮』のイベントが終了する一週間後に行われる生配信で発表するらしい。

 これで俺の心の片隅にあったVRHAR(ヴァルハラ)のリーク情報は本物なのかという疑問は完全に消え去った。

 パーティ合計賞金額1億円のビッグゲームは実在するのだ……!


 ルールはいまだ不明だが、1人のプレイヤーとして強いに越したことはない。

 おそらく、このイベントは対人戦だ。

 そうでなければ、わざわざVRHAR(ヴァルハラ)が俺たち幽霊組合(ゴーストギルド)全員の力を試そうとするはずがない。


「誰が相手でも勝てる自信がなければ、栄光は掴めない……か」


 かくして(さい)は投げられた。

 かつてない富と名声を求めて、『Next Stage Online』は熱を帯びていく。

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